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第一章

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「お前ら、よく来た!俺は担任のピエール・シトリンだ。黒板に書いてある通りの席にちゃんと座ってるな?今から支給品を配るが、適当な場所に座っていたらサイズが合わなくて困るぞ」

40過ぎかな?という感じの快活な先生は、魔法で支給品をどんどん配って行き、机の上には山ができたの。

「魔法科は基本的にそのローブを着る。その下は白いシャツとズボンだ。女子生徒も例外はないから、明日からはそこにある服を着てくるように。ローブは一生物だから1着、他は3着ずつあるから、破れたり汚れたりは何とかしてくれ」

シトリン先生はガハハと笑うけれど、この山をどうやって寮に持って帰るのかしら?

「おっと、忘れる所だった。荷物はその鞄に入れて持って帰るように。その鞄はアイテムバッグといって、物が99個入る優れものだ。卒業後も使えるから、魔法省に勤める奴らはずっとそれを使ってるぞ」

光沢のある黒い鞄は横がけにするタイプで、盗難防止の魔法もかけてある。

これはかなりの優れものだから、いつも書類を抱えているお父様が欲しがるでしょうね。
そういえば、お兄様達も色を変えて使っているわね。
アーネスト兄様以外は、別に部屋を借りているから中々会えないけれど、帰ってきた時は持っているし、お父様の誕生日に作ってプレゼントしようかしら。
ダイアクロスで魔法を使えるのは10%未満なのに、それに我がコーラルバイン家の5人兄妹全てが入っているのは不思議よね。


その後も先生の話と教科書類の支給品は増えて行き、説明が終わると鞄に仕舞うを繰り返して今日は終了。

そういえば、どうして私の両隣は当たり前のようにこの2人なのかしら?

「アリス、カフェで昼飯を食べて行かないか?」

「アリスティア嬢、私も一緒に行ってもいいかな」

「それはいいですわね。ショーン殿下もどうぞご一緒に」

この世界では魔力を発現するのは男性が多く、スピネルとセレスタイトでも80%以上が男性だから、このクラスに女子生徒は4人しかいないというのに既に睨まれているわ・・・。

考えても仕方ないと、私達は魔法科棟のカフェに向かったのだけど、何故ここにニーナがいるのかしら?
この2人のイベントは1週間後と3週間後よね?

「あっ、あの、私は普通科の生徒なんですが間違えて転移陣に乗ってしまって・・・」

その言葉に、リオンとショーン殿下が眉をひそめたけれど、それも当然。魔法科棟に転移できるのは設定された魔法科の生徒のみで、普通科の生徒には反応しないのだから。

そして、素性の知れない生徒にこの2人が声をかける筈もなく、私が対応する事になったの。

「不具合でもあったのかしら?転移陣は設定された魔法科の生徒にしか反応しない筈ですの」

入学式から不穏な空気が流れるのは勘弁してほしいわ。
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