下っ端神様のお仕事は悪役令嬢一択です

樹林

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第1章

校長先生は何歳ですか?

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目の前で優雅にコーラを飲む、柔らかい光を放つバターブロンドの髪、最高級のアメジストを持つ勝気そうな瞳、優しく弧を描く赤い唇を持つフェロモンの塊としか言い表せない女性。

それがこの学園の創始者でもあるリースベット・ビルバリ校長。

経歴も何もかもが謎、伝わるのは《救世の魔女》である事のみ。

フェリシアは、机の下で指を絡めながらリースベットの話を待っていた。


「さて、話をしようかの。まほガクの悪役令嬢、フェリシア・オーストレースよ」


思いもよらない言葉にフェリシアは声が出なかった。


「ふふ、なぜ知っておるのか?という顔じゃの」

「どうして・・・」

「それはの、我が最初の乙女ゲームの悪役令嬢だからじゃよ」


思いもよらない言葉だった。もちろん、自分以外にも転生者はいるだろう、小説や漫画に出てくるように悪役令嬢やヒロインに転生した者はいるだろうと思っていたが、同じ世界にいるとは想像した事もなかった。


「フェリシアよ、何から話す?」

「最初から・・・でお願いします」


フェリシアは掠れる声でそう言って姿勢を正した。


「最初からか、そうじゃのう・・・」


─── 星が数えきれない程あるように、宇宙も数えきれない程にある。これをマルチバースと呼ぶ。
それと同じく人の想像も星の数以上にあるが、その想像の中には前世で見聞きしたり体験したりした事を魂が覚えていて物語にしたものもあり、それも数えきれないのだとリースベットは話す。


「なぁ、フェリシアよ。おぬしのいた世界にはゲームや物語はどれ位あった覚えておるかの?ジャンルはどれ位あったかの?」

「数えた事ありません・・・ジャンルはある程度は特定できますが」

「そうだろうな、我にも分からんよ」

「じゃあどうして聞いたんですか?」

「そのジャンルが大切だからじゃよ」


フェリシアはリースベットの言葉の意味を考えた。


── 乙女ゲー、ギャルゲー、アクション、ファンタジー、SF、ホラー、スプラッターとか?あ・・・まさか、ホラーやスプラッターの世界に生きた人もいるって事?


そう思い至ったフェリシアは、真っ青な顔でリースベットを見た。


「恐ろしいじゃろ?だが、それが事実なのじゃ」


リースベットは、この世界で最初の悪役令嬢であり転生者だった。そして、彼女はある使命があり悪役令嬢に転生したのだという。
その使命が、転生した汚れを持つ魂=闇魂の管理と、闇魂が正しく生きるよう修正する事だった。


「最初の成功した転生者になった者はな、そのままその世界の管理者になるのじゃ。だからこの宇宙には星の数だけ管理者がおるのじゃ。我はホラーの星の管理者でなくて良かったよ」

「あ・・・あのう、校長先生は一体おいくつなんですか・・・?」

「2000万年は軽く超えておるの」

「2000万!?」


衝撃が大きすぎて逆に冷静になったフェリシアは更に問う。


「2000万歳の管理者という事は、もしかしてこの世界は何度もゲームの舞台になったという事ですか?」

「そうなのじゃ、バッドエンドを迎えると天変地異や世界大戦が起こり、世界が滅びるのじゃ。そこに無意識に前世を思い出し物語やゲームにした者の世界ができるのじゃよ。我が救世の魔女と呼ばれる前の歴史をおぬしは知っておるかの?」

「いえ、大規模な天変地異によって全てが失われた暗黒の時代としか習っていません」

「そうじゃろう、ちょうどその時に失敗した者がいての、それで天変地異が起こったのじゃよ」

「あの、星には寿命がありますよね?人類には進化がありますよね?そういうのはどうなってるんですか?」

「それは我やおぬしの《前世》の宇宙での話じゃよ。だがここにはそんなものはないのじゃ、記憶が作る世界じゃからの」

「だから、進化論がないんですね・・・」

「新たに生まれる種族はおってもそれがどう生まれたかは追及されんのじゃ。それがこの宇宙であり世界じゃ」

「なんだか色々納得しました!で、なんですが、もしかして校長先生はサポートキャラなんですか?」


その問いにリースベットがニヤリと笑った・・・アーベル以上の黒い笑みだとフェリシアは思ったが『口には出さない、それが最善』と自分に言い聞かせている。


「管理者というのはのう、世界を管理し、ヒロインや悪役令嬢を監視するだけなのじゃよ。だからの!我は初めてサポートキャラができるのじゃ!!」

「ええっ?どうして今回だけなんですか?わたしが頼りないからですか!?」

「それは違うのじゃ。問題なのはヒロイン、つまりヨンナじゃ」
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