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44.先手を打つ
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待機室でパスカルと一緒に待ち、侯爵家の馬車に乗り込んだ瞬間座席に突っ伏した。
(やばいやばいやばいやばい! ヘタしたらテオドール王子が陛下とか王妃様に婚約したいとか言うかもしれん! 正式な打診とか申し入れがウチに来る前に玉砕覚悟でマックスに告白せんと詰む!)
貴族令嬢としての体面を保つ為に何事も無かったかのように振る舞っていたアレクシアだが、人目がなくなった今は真っ青な顔で震えている。
あの時は色々な感情が振り切れた状態だったお陰で反撃に出られたが、冷静さが残っていたら不敬罪や家への処罰を考えて抵抗できなかったかもしれないと思うと今更ながら震えが止まらないのだ。
(それに……、もしかしてさっき居った部屋ってテオドール王子の自室やったんちゃうやろか、左右にあった部屋が執務室と寝室やったんかもしれん。さすがに既成事実を作ろうとしとったなんて事は……無いと思いたい。こんなブラジャーもまだ必要無いつるペタやし、……でもそういう事に思い切り興味のある年齢やんな)
アレクシアは前世の母に頼まれて部屋にジュースを届けに行った時、兄とその友人達がAVの貸し借りしている現場に遭遇してしまい、そのラインナップにドン引きした事があった。
数人集まっていたせいで熟女モノからロリモノ(成人してるだろ、とツッコみたくなる童顔貧乳女性が子供服っぽいの着てた)まで幅広かった。
その時だけは虫けらを見る目で蔑んでしまったが、翌日からは何も無かったかのように対応してあげたという思い出がある。
(年齢自体はそれ程離れて無いし、異世界文化で下の年齢の守備範囲広めやから気をつけるに越した事はないな。手ぇ触られただけでもキツいのに、それ以上らぁ絶対無理!! むしろマックスやったら歓迎するかも……、せやけどそれでロリに目覚められても困るしな)
馬車とはいえ個室に1人きりというリラックスできる空間のお陰で、深刻な精神状態から段々といつものようにくだらない事を考える余裕が出てきた。
家に到着した時には完全に落ち着いていたので、すぐに母親に会いに行った。
「おかえり、アレクシア。あら珍しい、エミールは一緒じゃないの?」
「ただいま帰りました。お母様、私……婚約を打診して頂きたい殿方がおります」
「え? 待ってちょうだい、さっきまで王宮に行っていたのよね? もしかして王子様方との結婚話でも持ち上がったの?」
ぱちくりと瞬きしながら頬に手を当て首を傾げる可愛らしい仕草はアレクシアととても似ており、側に控えるメイド達はついほんわかとした気持ちになるが、アレクシアだけはそれどころでは無い硬い表情をしている。
「そこまで話が進んでしまったらお断りするのが大変になるじゃありませんか。テオドール王子が行動を起こしそうなのでその前に手を打たなければ!」
アレクシアは立ったまま拳をグッと握って力説した。
クリステルも侯爵夫人として社交会を渡って来た強者である。
ここまでアレクシアが警戒し憤慨する何かがあったと察すると手を上げて合図し、控えるメイドとアレクシアについて来たエマも退室させた。
万が一にでも不都合な事があって外に漏れるのを警戒しているのだ、いくら信用している家人でも過去にそのせいで没落の切っ掛けを作った貴族達を見ている為、人の口というもの自体を信用していない。
「さぁ、これで大丈夫よ。こっちへ来て話してちょうだい、何があったの?」
包み込んでくれる様な母の微笑みに、アレクシアの瞳は再び涙を溢した。
幼い時のように抱き締めて頭を撫でて貰いながら、テオドール王子に騙される形で呼び出された事、怖くて抵抗した事、リリアンに何も言わずに帰って来てしまった事、好きな人が居るからその人以外とは結婚したくない事をポツリポツリと話した。
「そう、その好きな人はアレクシアの事を知っているの?」
「はい、オーギュ兄様の友人です」
「それなら人格は問題無いわね、爵位はわかる?」
「……伯爵家です、家格が落ちる事はわかっています。貴族である以上政略結婚も必要であるという事も……、ですが王家に嫁がなければならないというのなら修道院に駆け込む覚悟です! ちゃんと……お父様とお母様のように愛し愛される方と結婚するのが幼い頃からの夢なんです」
クリステルを見上げる瞳からまた雫が落ちると、ハンカチでそっと拭ってくれた。
「泣かないで、愛しい子。私はアレクシアの味方よ? お父様も説得してみせるわ、お相手の名前を教えてちょうだい?」
「マクシミリアン・ド・リオンヌ様です。まだ気持ちはお伝えしてませんが、頑張って振り向かせてみせますから!」
「………リオンヌ伯爵家? あの剣の腕とその……、個性的な容姿で有名な……。そういえばエミールがお友達になったからと招待していたわね」
クリステルは内心、しっかり外堀を埋めているアレクシアを感心しつつ頷いた。
容姿に関しては夫であるラビュタン侯爵自身が努力してふくよかな身体をキープしているだけで、元々容姿に自身が無いタイプだった事も知っている。
次男であるオーギュストも唇以外は父親似だが愛する息子に変わりは無い、そんなクリステルだからこそアレクシアの気持ちはしっかり伝わった。
もしも容姿至上主義であったならばアレクシアの意志を無視してセザールと結婚させようとしただろう。
「安心なさい、アレクシアが幸せになれる様にお母様頑張っちゃう!」
そんな言葉を聞きながらアレクシアは安心して気が抜けた事と、久々の母の温もりにそのまま眠りに落ちた。
(やばいやばいやばいやばい! ヘタしたらテオドール王子が陛下とか王妃様に婚約したいとか言うかもしれん! 正式な打診とか申し入れがウチに来る前に玉砕覚悟でマックスに告白せんと詰む!)
貴族令嬢としての体面を保つ為に何事も無かったかのように振る舞っていたアレクシアだが、人目がなくなった今は真っ青な顔で震えている。
あの時は色々な感情が振り切れた状態だったお陰で反撃に出られたが、冷静さが残っていたら不敬罪や家への処罰を考えて抵抗できなかったかもしれないと思うと今更ながら震えが止まらないのだ。
(それに……、もしかしてさっき居った部屋ってテオドール王子の自室やったんちゃうやろか、左右にあった部屋が執務室と寝室やったんかもしれん。さすがに既成事実を作ろうとしとったなんて事は……無いと思いたい。こんなブラジャーもまだ必要無いつるペタやし、……でもそういう事に思い切り興味のある年齢やんな)
アレクシアは前世の母に頼まれて部屋にジュースを届けに行った時、兄とその友人達がAVの貸し借りしている現場に遭遇してしまい、そのラインナップにドン引きした事があった。
数人集まっていたせいで熟女モノからロリモノ(成人してるだろ、とツッコみたくなる童顔貧乳女性が子供服っぽいの着てた)まで幅広かった。
その時だけは虫けらを見る目で蔑んでしまったが、翌日からは何も無かったかのように対応してあげたという思い出がある。
(年齢自体はそれ程離れて無いし、異世界文化で下の年齢の守備範囲広めやから気をつけるに越した事はないな。手ぇ触られただけでもキツいのに、それ以上らぁ絶対無理!! むしろマックスやったら歓迎するかも……、せやけどそれでロリに目覚められても困るしな)
馬車とはいえ個室に1人きりというリラックスできる空間のお陰で、深刻な精神状態から段々といつものようにくだらない事を考える余裕が出てきた。
家に到着した時には完全に落ち着いていたので、すぐに母親に会いに行った。
「おかえり、アレクシア。あら珍しい、エミールは一緒じゃないの?」
「ただいま帰りました。お母様、私……婚約を打診して頂きたい殿方がおります」
「え? 待ってちょうだい、さっきまで王宮に行っていたのよね? もしかして王子様方との結婚話でも持ち上がったの?」
ぱちくりと瞬きしながら頬に手を当て首を傾げる可愛らしい仕草はアレクシアととても似ており、側に控えるメイド達はついほんわかとした気持ちになるが、アレクシアだけはそれどころでは無い硬い表情をしている。
「そこまで話が進んでしまったらお断りするのが大変になるじゃありませんか。テオドール王子が行動を起こしそうなのでその前に手を打たなければ!」
アレクシアは立ったまま拳をグッと握って力説した。
クリステルも侯爵夫人として社交会を渡って来た強者である。
ここまでアレクシアが警戒し憤慨する何かがあったと察すると手を上げて合図し、控えるメイドとアレクシアについて来たエマも退室させた。
万が一にでも不都合な事があって外に漏れるのを警戒しているのだ、いくら信用している家人でも過去にそのせいで没落の切っ掛けを作った貴族達を見ている為、人の口というもの自体を信用していない。
「さぁ、これで大丈夫よ。こっちへ来て話してちょうだい、何があったの?」
包み込んでくれる様な母の微笑みに、アレクシアの瞳は再び涙を溢した。
幼い時のように抱き締めて頭を撫でて貰いながら、テオドール王子に騙される形で呼び出された事、怖くて抵抗した事、リリアンに何も言わずに帰って来てしまった事、好きな人が居るからその人以外とは結婚したくない事をポツリポツリと話した。
「そう、その好きな人はアレクシアの事を知っているの?」
「はい、オーギュ兄様の友人です」
「それなら人格は問題無いわね、爵位はわかる?」
「……伯爵家です、家格が落ちる事はわかっています。貴族である以上政略結婚も必要であるという事も……、ですが王家に嫁がなければならないというのなら修道院に駆け込む覚悟です! ちゃんと……お父様とお母様のように愛し愛される方と結婚するのが幼い頃からの夢なんです」
クリステルを見上げる瞳からまた雫が落ちると、ハンカチでそっと拭ってくれた。
「泣かないで、愛しい子。私はアレクシアの味方よ? お父様も説得してみせるわ、お相手の名前を教えてちょうだい?」
「マクシミリアン・ド・リオンヌ様です。まだ気持ちはお伝えしてませんが、頑張って振り向かせてみせますから!」
「………リオンヌ伯爵家? あの剣の腕とその……、個性的な容姿で有名な……。そういえばエミールがお友達になったからと招待していたわね」
クリステルは内心、しっかり外堀を埋めているアレクシアを感心しつつ頷いた。
容姿に関しては夫であるラビュタン侯爵自身が努力してふくよかな身体をキープしているだけで、元々容姿に自身が無いタイプだった事も知っている。
次男であるオーギュストも唇以外は父親似だが愛する息子に変わりは無い、そんなクリステルだからこそアレクシアの気持ちはしっかり伝わった。
もしも容姿至上主義であったならばアレクシアの意志を無視してセザールと結婚させようとしただろう。
「安心なさい、アレクシアが幸せになれる様にお母様頑張っちゃう!」
そんな言葉を聞きながらアレクシアは安心して気が抜けた事と、久々の母の温もりにそのまま眠りに落ちた。
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