【完結】美醜逆転!? ぽっちゃり令嬢のビボー録

酒本 アズサ

文字の大きさ
50 / 59

49.俺の自信は愛しい人 side マクシミリアン

しおりを挟む
「俺みたいなのがアレクの隣に立って良いんだろうか……」


 今日も今日とて周りから聞こえよがしに「あんな醜男がなぜ」や「本当は脅して婚約させたんじゃないか」などの言葉が何度も聞こえて来た。
 俺自身もそう思ってるんだから余計に心に刺さる、だからついアレクの兄であるオーギュに愚痴を漏らしてしまった。


「マックス、私の大切な妹を修道院送りにするつもりか? あの時アレクが言ってたのは本気だぞ?」


「わかってる、明後日の卒業生達のパーティーの準備していたら……来年アレクシアと出席するんだと考えてしまって、絵面を想像したら死にたくなっただけだ」


「あぁ、そういえば女神と魔物の組み合わせだとか言ってるやつもいたな。だけど一緒に出席できなかったらアレクは泣き崩れるぞ? じゃあ食事を取ってくるから中庭でな」


「わかった、いつもありがとう」


 いつも昼食を摂っている四阿あずまやへ先に行く、周りを不快にさせない為とはいえ毎回オーギュに持って来て貰っている事も情けない。
 1人でぼんやり待つ間に無意識に何度もため息が漏れている事にも気付かず空を眺めていると、鈴を転がした様な愛らしい声が耳に届く。


「こんにちはマックス、何か悩み事でも?」


「あ、いや、何でも」「周りの妬む声にアレクの隣に居ていいのか自信が持てなくて悩んでるんだ」


 やはり姿見ると離れたくないし、その隣を誰にも譲りたく無いという思いが強くなる。
 心配そうに尋ねる姿に慌てて大丈夫だと言おうとしたらオーギュが暴露してしまった、こんな情け無い事で悩んでいるなんて知られたく無かった。
 ジロリとオーギュを睨んだが、シレッとした顔で座り食事を始めた。


 アレクはいつもの隣の席に座ると俺の手を両手で包んだ、相変わらずの優しい柔らかさに涙が出そうだ。


「マックス、私はあなた以外の方の隣で生きて行きたくないの、マックスが嫌だと言うのなら私は潔く修道院へ行くわ。でも……、マックスも私の隣が良いと思ってくれてるのに自信が持てないというのなら、私の言葉に自信を持ってちょうだい。そうすればマックスが自分に自信が無くても私の言葉を信じてくれている限り私の隣に居てくれるでしょう? それとも私の言葉すら疑うのかしら?」


「アレクの言葉を疑うなんて……ありえない」


 それだけは自信を持って言える、この美しい女神はいつも俺の欲しい言葉をくれて甘やかそうとしてくる。
 俺を見つめる美しい瞳に映る醜男のはにかむ姿に正気を取り戻すと同時に、オーギュの咳払いが聞こえた。


「ンンッ、愛情を確かめ合うのも良いが早く食べないと冷めてしまうぞ」


「ふふっ、そうね、いただきましょう」


「ああ……、ありがとう、アレク」


 心からの言葉を伝えると薔薇すらも色褪せて見える美しい笑顔を見せてくれた、食事しながらする会話は同じように学園と寮で生活しているはずなのに多岐にわたる。
 授業や先生の話の時もあれば政治の絡む噂話、趣味の可愛らしい話や俺達が退屈しないように剣術の話の時もあった。


「ちょっと失礼」


 不意にアレクが立ち上がり、ハンカチで俺の口の端を拭った。


「うふふ、口の端にソースが付いていたわ。マックスにも可愛らしいところがあるのね」


 状況を理解した俺の顔は一瞬で真っ赤になってしまった、ソースを拭われた事もそうなんだが、拭われる瞬間目の前にあった確実に成長している膨らみに目を奪われたからだ。
 こんなに純真で優しいアレクを邪な目で見てしまった自分が情け無くて恥ずかしくて、手の甲で顔を隠すように横を向いた。


「も、申し訳ない……」


「ふふ、いやだわ、そこは申し訳ないよりありがとうと言うべきよ?」


「あ、ああ、ありがとう……」


 すまないアレク、本当は申し訳ないで正解なんだ……!
 横から見ていたオーギュには俺の視線がどこを向いていたのかバレていたのだろう、痛い程に呆れた視線が突き刺さっている。
 くっ、2人きりは緊張するが、こういう時は2人きりの方がいいと思ってしまう。


 いや、しかしアレクの魅力を前に2人きりで手を出さずに我慢できるのかと言われたら、是とは答える自信は無い。
 正式に婚約者になったんだから口付けくらいは許されるだろうか、13歳であればそういう知識も学ぶ頃だよな。


 卒業パーティーならばアレクも14歳になっているし、雰囲気的に許されそうだが……問題はそれまでの1年間お預けという生殺しに俺が耐えられるかどうかだな。
 アレクに無体な事は絶対しない自信はあるが、口付けや抱き締める程度の事はしたい。


 そんな事を考えているなんてバレたら幻滅されてしまうだろうか、微笑むアレクを見ていたら肩の力が抜けて自然と俺も笑顔になる。


「ちょっと失礼するよ、すぐに戻る」


「ああ」


 オーギュが用を足しに席を立った、ごく稀だがこうやってアレクと2人きりになれる瞬間は至福のひと時だ。
 ぎこちなくならないように気をつけながら会話を続け、オーギュが居ない今しか無いと唾を飲み込んでから口を開く。


「アレク……、その、手を……繋いでも良いだろうか……」


 勇気を出して言った言葉に、アレクは嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。


「もちろん! だって……、婚約者ですもの……ね?」


 照れながら婚約者と言う姿は反則級に可愛い、アレクに近い左手ではなく、敢えて右手でアレクの右手をそっと握ると自然に身体が引き寄せられて距離が近づいた。
 アレクから良い香りがしてクラクラする、早くなる鼓動を宥めながら気付かれないようにそっと深呼吸していたら頬に柔らかいものが触れた。


「婚約者ですもの……これくらいはいいでしょ?」


 悪戯っぽく微笑みながら上目遣いで俺を見るアレク、何だこの可愛い生き物は!!
 空いている左手がアレクの肩を抱き寄せようと動いた瞬間ヒンヤリとした声が聞こえた。


「2人共、距離が近過ぎないかい?」


 簡単に俺の理性を吹き飛ばしてしまうアレクの可愛さに、やはり俺達にはオーギュの存在は必要だと改めて思い知らされた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

天使は女神を恋願う

紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか! 女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。 R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m 20話完結済み 毎日00:00に更新予定

異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子
恋愛
自分によく似た攻略対象がいるからと、親友に勧められて始めた乙女ゲームの世界に転移してしまった雫。 けれど実は、自分はそのゲームの世界の住人で攻略対象の妹「ロゼ」だったことを思い出した。 その世界でロゼは他の攻略対象、そしてヒロインと出会うが、そのヒロインは……。 ※小説家になろうにも投稿しています

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...