4 / 109
4.双子の狼獣人リアムとユーゴ
しおりを挟む
「ユーゴはオイラ達兄弟の中なら一番料理が上手いじゃないか! 野菜スープだって生煮えだった事はないし、野菜が繋がったりもしてないじゃないだろ!? 落ち込む必要なんかないよ!」
どうしようかと焦っていたら、もう一人の小さい狼獣人がユーゴを励ました。
「リアム……、ありがと」
と、尊い。
「えっと、ユーゴとリアム? 二人は同じくらいに見えるけど、双子とか?」
「うん、そうだよ。オイラとユーゴは双子で十一歳なんだ。兄ちゃんは二十三歳だけど」
「あ、同い年だ」
「「「「『は!?』」」」」
大きい狼獣人に視線を向けて言うと、先ほどと同じく……むしろアルフォンスの声も加わって皆が声を上げた。
そりゃ十一歳の双子と同じくらいの身長なのに、二メートル超えの兄獣人と同い年って言ったからだろうけど。
「コホン。私はユーゴとリアムの兄で、この家の家長でもあるマティスです。我らがフェンリル様の主殿であれば、眷属である我々の主も同然です。狭い家ですが自分の家だと思ってお寛ぎください」
私がムッツリとした表情だったせいか、マティスが咳払いをして自己紹介をした。
倒れる前も思ったけど、話し方のせいかキリッとしててカッコいい。
あれ? でも……。
「家長?」
思わず声に出してしまった。
だって、この三人は兄弟だって、マティスは私と同じ二十三歳だって言ったよね?
「サキ、この兄弟は数年前に両親を流行り病で亡くしてね。フェンリル様の眷属の長の家系だからマティスは若くしてこの家の家長であり、眷属達の長でもあるんだ。ちなみに俺は十六歳だ」
弄っている前髪の毛先を見つめながら教えてくれるアルフォンス、最後にこちらを見てパチンとウィンクをした。
やだ、可愛すぎる!!
キュンキュンしていたら狼獣人兄弟と子フェンリルのドン引きしている視線が刺さった。
そんな視線のお陰で我に返って気付いたけど、この残った食事問題が解決していない。
さっきのションボリした姿を見たら、不味いなんて言えないんだけど!
その時、アルフォンスが小瓶をポケットから取り出してスープに垂らした。
「少し掻き混ぜて飲んでみるといい。この家で食事する時の必需品で、呼び出された時は持ち歩いているんだ。パンも硬いだろう? スープに浸して柔らかくなってからスプーンで崩せば食べられるぞ」
言われた通りにスープを掻き混ぜ、ひと口飲んでみる。
あ、今入れたのってコンソメ!?
劇的に味が変わって美味しくなってる!!
バッと顔を上げてアルフォンスを見ると、ニカッと笑って親指を立てた。
あ、異世界もそのジェスチャーするんだ。
言われた通りパンも少し温くなったスープに浸す。
『うむ、今度は口に合ったようだな。やはり喜びの感情は美味である』
子フェンリルはそんな事を言いながら口の周りをペロリペロリと舐めている。
どうやら感情が甘露だとか言っていたのは本当のようだ。
「ふぅ、ごちそうさまでした。ありがとう、ユーゴ、アルフォンス」
「おおおぉ! 伝承通りだ! 食事が終わると手を合わせるんだな!」
私が食べ終わるまで、皆はお茶を飲みながら待っていてくれたが、食べ終わった瞬間アルフォンスが興奮し始めた。
なにやらマティスに押さえつけられているようだけど。
「申し訳ない、アルフォンスは伝承や歴史を研究する家系なのです。約一万九千年前に異世界から転生した審判者が主殿と同じ世界から来たと」『ウォッホン、ゴホン、ゴホン』
すごく興味深い事をマティスが話してくれてたのに、子フェンリルがものすごくわざとらしい咳払いをした。
「どうしたの?」
『どうしたの? ではない! 先ほど主達は自己紹介をしていただろう! 食事が済むまで待ったのだから、そろそろ我にも名を付けるべきではないか!?』
テチテチと肉球を床に叩きつけながら主張する子フェンリル。
え~……、きっとシロとか付けたら子フェンリルからどころか、狼獣人兄弟からもブーイングだよねぇ?
どうしようかと焦っていたら、もう一人の小さい狼獣人がユーゴを励ました。
「リアム……、ありがと」
と、尊い。
「えっと、ユーゴとリアム? 二人は同じくらいに見えるけど、双子とか?」
「うん、そうだよ。オイラとユーゴは双子で十一歳なんだ。兄ちゃんは二十三歳だけど」
「あ、同い年だ」
「「「「『は!?』」」」」
大きい狼獣人に視線を向けて言うと、先ほどと同じく……むしろアルフォンスの声も加わって皆が声を上げた。
そりゃ十一歳の双子と同じくらいの身長なのに、二メートル超えの兄獣人と同い年って言ったからだろうけど。
「コホン。私はユーゴとリアムの兄で、この家の家長でもあるマティスです。我らがフェンリル様の主殿であれば、眷属である我々の主も同然です。狭い家ですが自分の家だと思ってお寛ぎください」
私がムッツリとした表情だったせいか、マティスが咳払いをして自己紹介をした。
倒れる前も思ったけど、話し方のせいかキリッとしててカッコいい。
あれ? でも……。
「家長?」
思わず声に出してしまった。
だって、この三人は兄弟だって、マティスは私と同じ二十三歳だって言ったよね?
「サキ、この兄弟は数年前に両親を流行り病で亡くしてね。フェンリル様の眷属の長の家系だからマティスは若くしてこの家の家長であり、眷属達の長でもあるんだ。ちなみに俺は十六歳だ」
弄っている前髪の毛先を見つめながら教えてくれるアルフォンス、最後にこちらを見てパチンとウィンクをした。
やだ、可愛すぎる!!
キュンキュンしていたら狼獣人兄弟と子フェンリルのドン引きしている視線が刺さった。
そんな視線のお陰で我に返って気付いたけど、この残った食事問題が解決していない。
さっきのションボリした姿を見たら、不味いなんて言えないんだけど!
その時、アルフォンスが小瓶をポケットから取り出してスープに垂らした。
「少し掻き混ぜて飲んでみるといい。この家で食事する時の必需品で、呼び出された時は持ち歩いているんだ。パンも硬いだろう? スープに浸して柔らかくなってからスプーンで崩せば食べられるぞ」
言われた通りにスープを掻き混ぜ、ひと口飲んでみる。
あ、今入れたのってコンソメ!?
劇的に味が変わって美味しくなってる!!
バッと顔を上げてアルフォンスを見ると、ニカッと笑って親指を立てた。
あ、異世界もそのジェスチャーするんだ。
言われた通りパンも少し温くなったスープに浸す。
『うむ、今度は口に合ったようだな。やはり喜びの感情は美味である』
子フェンリルはそんな事を言いながら口の周りをペロリペロリと舐めている。
どうやら感情が甘露だとか言っていたのは本当のようだ。
「ふぅ、ごちそうさまでした。ありがとう、ユーゴ、アルフォンス」
「おおおぉ! 伝承通りだ! 食事が終わると手を合わせるんだな!」
私が食べ終わるまで、皆はお茶を飲みながら待っていてくれたが、食べ終わった瞬間アルフォンスが興奮し始めた。
なにやらマティスに押さえつけられているようだけど。
「申し訳ない、アルフォンスは伝承や歴史を研究する家系なのです。約一万九千年前に異世界から転生した審判者が主殿と同じ世界から来たと」『ウォッホン、ゴホン、ゴホン』
すごく興味深い事をマティスが話してくれてたのに、子フェンリルがものすごくわざとらしい咳払いをした。
「どうしたの?」
『どうしたの? ではない! 先ほど主達は自己紹介をしていただろう! 食事が済むまで待ったのだから、そろそろ我にも名を付けるべきではないか!?』
テチテチと肉球を床に叩きつけながら主張する子フェンリル。
え~……、きっとシロとか付けたら子フェンリルからどころか、狼獣人兄弟からもブーイングだよねぇ?
62
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる