【完結】俺様フェンリルの飼い主になりました。異世界の命運は私次第!?

酒本 アズサ

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83.本日のMVPは誰だ

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 ナトリ王国とマジョイル国の国境である川にまで来た私達。
 橋が落ちたという話は聞いていたが、もしかしたら到着までに修理されているかもしれないという望みを持って来てみたのだが……。


「あんた達も橋を渡りたかったのかい。もう橋が落ちてひと月は経ってるからそろそろ直ってると思ったんだけどなぁ……。やっぱりマジョイルが王国じゃないから、国としてはあまり交易して欲しくないから後回しにしているのかも」


 川の手前でそう言ったのは、商人らしき口ひげが生えているぽっちゃりしたおじさん。
 馬車一台と、護衛らしき五人の冒険者と立ち往生していた。


 川幅は大体五メートル、水面から地面までの高さは十メートル、水深は植物プランクトンで深緑に見えるから最低三メートルはあるだろう。
 ここの橋が使えないとなると、北のノーウェ国経由で行くしかない。


 オーギュストの説明だと、マジョイル国とナトリ王国の間に鳥のくちばしを差し込んだみたいな部分があるから、一度ノーウェ国に入ってマジョイル国というルートになるらしい。
 そこ以外はもっと川幅が広くて橋がかけられないとか。


「ここが使えないとなると、この川の向こうに到着するのに一週間はかかるな。特に彼らのような商人にとって、時間はお金と変わらない価値があるというから大変だろう」


 オーギュストが頭に手を置いて途方に暮れたように息を吐いた。


『ならばその辺の木を切って橋にしてしまえばよいではないか。立派な橋を造らずとも、我らは渡れればよいのだから』


「え!? アーサーは橋を作れるの!?」


 リアムが興味津々に聞いた。
 そしてその声を聞いた商人の瞳も輝いた。


「あの、アーサーさんという方は……? もし簡易でも明日までに橋を作っていただけるなら、謝礼をお渡ししますよ!」


「アーサー、そんな事本当にできるの?」


 私が足元にいる赤ちゃん姿のアーサーに話しかけると、途端に商人の顔が暗くなる。
 しかしアーサーは自信満々に胸を張った、可愛い。


『ふふん。我にかかれば造作もない。材料はその辺にあるのだからな。どれ、確かあの木は材質的にも橋にむいていたはず』


 アーサーは川沿いの木が生い茂っている方へテチテチと歩いて行き、直後にふわりと風が流れた。
 そして数秒後、大木が三本、枝葉が落とされた状態で縦半分に割れて倒れる。


 しかも倒れる途中に側面が斬り落とされたかのように分離して、厚さ三十センチ以上の分厚い板が六枚出来上がった。
 完成した板の長さは六、七メートルはありそうだから橋の代わりにはなるだろう。


「「「「「おおおおぉぉぉ!!」」」」」


 すごい魔法の威力と精度に、ギャラリーと化した周囲から歓声が上がる。


「誰がそれ向こう岸に架けるんだ?」


 シリルが冷静なひと言を放った。
 確かに重機もないんだから、向こうに渡すのは大変だと思う。


『なに、向こうに行って調整する者が必要なのはわかっている。オーギュスト、アルフォンスを向こう岸へ投げろ。アルフォンスなら問題なかろう』


「え?」


 まさかの言葉に、アルフォンスから声が漏れた。
 でも確かにアルフォンスが冒険者を十メートルくらい投げられたんだから、オーギュストも投げられるのかもしれない。


「いやいや、オーギュストがアルフォンスを投げられたとしても、怪我するんじゃない!? それに失敗したら川の中だよ!? アルフォンスは泳げるの!?」


 焦る私の言葉に、アルフォンスは余裕気にファサッと前髪を掻き上げて私に流し目をした。可愛い。


「俺は泳いだ事がない。だからきっと泳げないな」


 態度とセリフが合ってない!!
 そして気付けばアルフォンスの背後にオーギュストが立っていた。


「大丈夫だ。この程度の距離なら問題ないだろう、なぁアルフォンス? 行ってこい」


 オーギュストの行ってこいの言葉と共に、アルフォンスは華麗に宙を舞った。


   ◇   ◇   ◇

もしこの作品が書籍化したら、太陽と重なって逆光で宙を舞うアルフォンスを挿絵にしてもらいたいw
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