103 / 109
103.取引成立
しおりを挟む
「えーと、どうしたらいいかな?」
『ドワーフなのだから酒の匂いでも嗅がせてやればよかろう』
「え~? そんなので目を覚ますかなぁ? 今空間収納に入ってるお酒は野営の時の料理用が少しだけしかないよ」
空間収納からハーフボトルサイズの瓶を取り出して言うと、マティスがスンスンと鼻を鳴らした。
「サキ、こっちの方が効果があると思うぞ」
立ち上がってジョセフの執務机の裏に回ってしゃがんだかと思うと、明らかに酒瓶とわかる物を手にしていた。
「仕事中にお酒飲んでるの……? 誰も注意しないのかな。まぁいいや、それを嗅がせてみよう」
マティスが酒瓶のコルクを抜くと、キュポンと軽快な音が鳴る。
瓶の口をジョセフの鼻の下へ持っていき、ユラユラと中身を揺らすように動かた途端、ジョセフの白目がギュルンと戻った。
「ハッ! なんだ……!? あっ、これはワシの秘蔵の酒じゃないか!」
ジョセフはマティスの手から酒瓶を奪い取ると、そのままゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。
「今仕事中でしょ? お酒なんか飲んでいいの?」
「んぐっ! いつもは仕事が終わったご褒美として飲んでるだけだ! 今は……そう! あまりにショックを受けたから気つけ代わりに飲んだんだ! こんな……母国ですら国宝になりそうなモンがワシ個人所有になるなんて……」
今度は涙ぐみ始めてしまった、情緒不安定か。
「代金は全財産って言ってたけど、そんなに」「もちろん払うとも!! いや、むしろこの作品に対してはワシの全財産などはした金にすぎんが……。不足分は冒険者に復帰してでも必ず払うから譲ってくれ!!」
「いや、だからそんなにはいらないってば! もらい過ぎだから!」
「バカ野郎!! 全然もらい過ぎなんかじゃないぞ!! むしろ受け取ってもらわんとこの装備に対して申し訳が立たん! お前さんのギルドの口座に白金貨五百枚入れておくからな!」
「えぇ~……、大金過ぎて怖いんだけど……」
『あの倉庫にあった物をドワーフどもに売れば、国のひとつくらい興せそうではないか? 色々面倒になったらマティスを王にして主はのんびりその国で過ごせばよい』
「やだ、それ名案かも……!」
「やめてくれ……。本気でやりそうシャレにならない」
アーサーの素晴らしい提案に賞賛を送っていたら、マティスは頬を引き攣らせた。
「あはは、さすがに冗談だよぅ…………今のところ」
「サキ?」
最後にひと言足したせいで、ジトリとした視線が突き刺さる。
「いや、本当に冗談だよ。ちょっとそうなったら獣人を見下す人のいない国ができるんじゃないかな~って思っただけで」
「何の話をしてるんだ? まぁいい、とにかくワシはもう帰って防具を眺めながら一杯やるぜ……へへへ」
ジョセフは一杯どころか一本以上飲みそうな顔で、空間収納を利用して作られた魔法鞄にいそいそと防具をしまい込んだ。
魔法鞄もかなり高級品のはずだけど、ギルドマスターってもうかるんだろうか。
用は済んだとばかりに私達は応接室を追い出されたが、翌日にはしっかり代金が私の口座に振り込まれていた。
『ドワーフなのだから酒の匂いでも嗅がせてやればよかろう』
「え~? そんなので目を覚ますかなぁ? 今空間収納に入ってるお酒は野営の時の料理用が少しだけしかないよ」
空間収納からハーフボトルサイズの瓶を取り出して言うと、マティスがスンスンと鼻を鳴らした。
「サキ、こっちの方が効果があると思うぞ」
立ち上がってジョセフの執務机の裏に回ってしゃがんだかと思うと、明らかに酒瓶とわかる物を手にしていた。
「仕事中にお酒飲んでるの……? 誰も注意しないのかな。まぁいいや、それを嗅がせてみよう」
マティスが酒瓶のコルクを抜くと、キュポンと軽快な音が鳴る。
瓶の口をジョセフの鼻の下へ持っていき、ユラユラと中身を揺らすように動かた途端、ジョセフの白目がギュルンと戻った。
「ハッ! なんだ……!? あっ、これはワシの秘蔵の酒じゃないか!」
ジョセフはマティスの手から酒瓶を奪い取ると、そのままゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。
「今仕事中でしょ? お酒なんか飲んでいいの?」
「んぐっ! いつもは仕事が終わったご褒美として飲んでるだけだ! 今は……そう! あまりにショックを受けたから気つけ代わりに飲んだんだ! こんな……母国ですら国宝になりそうなモンがワシ個人所有になるなんて……」
今度は涙ぐみ始めてしまった、情緒不安定か。
「代金は全財産って言ってたけど、そんなに」「もちろん払うとも!! いや、むしろこの作品に対してはワシの全財産などはした金にすぎんが……。不足分は冒険者に復帰してでも必ず払うから譲ってくれ!!」
「いや、だからそんなにはいらないってば! もらい過ぎだから!」
「バカ野郎!! 全然もらい過ぎなんかじゃないぞ!! むしろ受け取ってもらわんとこの装備に対して申し訳が立たん! お前さんのギルドの口座に白金貨五百枚入れておくからな!」
「えぇ~……、大金過ぎて怖いんだけど……」
『あの倉庫にあった物をドワーフどもに売れば、国のひとつくらい興せそうではないか? 色々面倒になったらマティスを王にして主はのんびりその国で過ごせばよい』
「やだ、それ名案かも……!」
「やめてくれ……。本気でやりそうシャレにならない」
アーサーの素晴らしい提案に賞賛を送っていたら、マティスは頬を引き攣らせた。
「あはは、さすがに冗談だよぅ…………今のところ」
「サキ?」
最後にひと言足したせいで、ジトリとした視線が突き刺さる。
「いや、本当に冗談だよ。ちょっとそうなったら獣人を見下す人のいない国ができるんじゃないかな~って思っただけで」
「何の話をしてるんだ? まぁいい、とにかくワシはもう帰って防具を眺めながら一杯やるぜ……へへへ」
ジョセフは一杯どころか一本以上飲みそうな顔で、空間収納を利用して作られた魔法鞄にいそいそと防具をしまい込んだ。
魔法鞄もかなり高級品のはずだけど、ギルドマスターってもうかるんだろうか。
用は済んだとばかりに私達は応接室を追い出されたが、翌日にはしっかり代金が私の口座に振り込まれていた。
30
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる