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第一章『大規模盗賊団討伐作戦』
*閑話3「コンナニスイーツ、タベキレナイ」②
しおりを挟む「はい!みんなグラスは持ったわね?そろそろ乾杯するわよ?コホン、急な誘いだったけど、多くの人が集まってくれて嬉しいわ。あと、今回お疲れ様会をすることになったきっかけはシュウだからね。並んでるスイーツはシュウがクリアに褒美として買ってもらったものを分けてくれるって話でもらったものだから、みんなシュウに感謝すること!じゃあみんな、討伐お疲れ様!乾杯!!」
「「かんぱーい!!」」
ギルド一階に併設されている酒場、「キラキラ星」の一角には十数名の冒険者達が集まっていた。
カーラは本当にギルドメンバーの誰とも仲が良いようで、受付に現在帝都にいる者の所在や連絡先を確認するとぱっぱと話を通していき、参加者を集めていった。
テーブルにはシュウがクリアにもらったスイーツ達が並び、別のテーブルには酒場自慢の美味い料理が並んでいる。
そして、冒険者達の手には酒が。
「シュウ君、今日はありがとう。スイーツも後でいただくね」
「あ、シーラさん」
シュウに声をかけたのは〈幸運を呼ぶ星〉副リーダーのシーラだ。後ろには仲間であるサミュやムゥラもいる。
「ジェーンさんの調子は、どうですか?」
「大丈夫、徐々に回復しているわ。今日も来たがってたんだけど、流石にまだ無理させる訳にはいかないから」
〈幸星〉リーダーのギルガメッシュ・ジェーンは討伐の際、盗賊団幹部の捕らえた後ボスとの戦闘に加勢していた。
だがその時、ボスのシュゼットが避けた冒険者の魔法がジェーンに直撃、衝撃で飛ばされ壁に打ち付けられたかと思えば天井から崩れてきた岩に潰され大怪我を負ったのだった。
幸いすぐに治療を受けたため命に別状はなかったものの、治癒魔法による回復はかなり体力を消耗するため、しばらくの間はベッドから動けない状態であった。
「あ、もし良かったらこの辺の、日持ちするやつ持っていってください。ジェーンさんにもすごくお世話になりましたし」
「ありがとう、ジェーンにも伝えておくね」
「お、討伐の立役者達がそろっとるじゃないか」
発泡酒片手に近づいて来たのは星三のソロ冒険者、バルダン・ルウィズである。後ろには〈朝露の微睡〉の三人もいる。
「お前たち、まだ若いのに強いな。幹部倒すなんてすごいじゃないか」
「ん、こいつらがそうなのかバルダン。すげぇなぁ、こんなおじさん達とは違って将来有望だな。うちのサイカちゃんと良い勝負だよ」
「なんですかししょー。サイカを呼びましたか?」
しみじみと頷くおじさん三人と、バクバクと料理を頬張っている少女一人。
〈朝露の微睡〉はベテラン冒険者二人と新人一人の元ソロだった冒険者達が組んでいる変わったパーティだ。
〈幸星〉やシュウは関わりが浅かったが、〈朝露〉も今回の討伐でかなり活躍していたらしいという話は聞いていた。特に星二冒険者であるサイカは、シュウとも年が近い新人でありながら今回の討伐でも何人もの盗賊を捕らえた実力者である。
「お前がシュウですか?おいしいケーキありがとうです。でも!だいししょーに認めてもらうのはこのサイカですから!」
「だ、だいししょー?」
「マスターのことだ。……おう、落ち着けサイカ。シュウ、今日はデザートを振る舞ってくれてありがとうな。俺らは向こうに行ってるわ」
「じゃ、またな」
むんと胸を張るサイカの背を押しながら、〈朝露〉とバルダンは去っていった。
「私達もちょっと向こうの人達と話してくるわ。シュウ君も来る?」
「あー、えっと……」
「おー!お前がシュウだな?」
「あ……俺はここにいますね」
〈幸星〉と別れたシュウにぞろぞろと近寄ってきたのはソロ冒険者四人組だ。
「いやー、お前まだ星一なんだって?しかもソロだろ?すげえな!あたしらもソロ歴長いからさ、なんかあったら相談乗るぜ?」
そう声をかけ、シュウの背中を叩くのは星三冒険者のニーナ。
「…………」
無言ながら、シュウを見つめて同意するように頷いているのは星二冒険者のライ。
「このスイーツも、とてもおいしいです。ありがとうございます。マスターが買ったものだそうですけど……星一でそこまで注目されているとは、すごいですね」
穏やかに微笑みながら感謝を述べるのは星三冒険者のメイナ。
「本当にねぇ。そうだ、私今パーティ組んでくれる人探してるんだけどね、シュウさんが良ければぜひ私も組んでもらいたいわ」
そう言ってふふふ、と笑うのは星二冒険者のコリン・ユーステス。
「えっと、今は誰かとパーティを組もうとは思っていないので……ソロ冒険者として、ぜひアドバイスなどをもらいたいです」
「おうよ、後輩の頼みなら大歓迎だぜ」
実は直接話したことが無かったため彼らの名前が微妙に一致していないシュウだったが、今日さりげなく名前を聞いておこう、と思った。
▷▷▷
「カーラさん」
「あら、シュウ。楽しめてる?」
料理やスイーツも少なくなり、そろそろお開きの雰囲気が漂い始めた頃。
冒険者達に構い倒されていたシュウは、ようやくカーラへと話しかけることができた。カーラもカーラで絶えず誰かと話しており、中々二人が話す機会が無かったのだ。
「こんなに、大勢の方を呼んでくれて、ありがとうございました」
「いいのよ、どうせやろうと思ってたことだもの。ま、肝心な隊長のキースさんは来なかったけどね」
元々来るとは思っていなかったが。
キースがこうした食事会の場に一人で参加することはなく、パーティメンバーに誘われ参加したとしても、大抵は隅っこで縮こまっているだけなのだ。
カーラも彼がこういった場が苦手なことは理解していたため、欠席に対しては特に何も思っていない。
「どう?多少は顔見知りも増えたかしら?」
「あ……はい、おかげさまで」
カーラは、今回のことを通してシュウがギルドにより馴染めるようになれればと考えていた。
今回の参加者を誘う際にもシュウの存在を強調し興味を持たせることで、この場で互いに交流してくれればという算段だったのだが……思った以上に上手くいったようで、皆真面目で向上心のあるシュウを気に入ったようであった。
カーラはこのような面倒見が良く交友関係の広い性質から、ランクの低い冒険者や新しくギルドに入ったばかりの冒険者達のまとめ役として幹部や事務員からも信頼が厚いのだ。
「ま、これからも私達を積極的に頼ってくれていいからね。マスターよりかは遠慮せずに気軽にできるだろうし。《新星》は、新たな仲間を歓迎するわ」
「……ありがとう、ございます」
帝都に来て、盗賊にわれて、〈新星〉に所属して、討伐に参加して。
あまりにも慌ただしく事が進んでしまったため未だに実感が湧いていなかったが、シュウはようやく、自分も《新星の精鋭》の一員なのだと、自覚できたような気になれた。
「……あ、ところでこの料理やお酒の支払いは……」
「大丈夫よ。全部ギルドの経費で落ちるから」
「ゆ、有名ギルドってすごい……」
桁が違うな、と驚いたシュウであった。
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