黄金と新星〜一般人系ギルドマスターのなるべく働きたくない日々〜

暮々多小鳥

文字の大きさ
55 / 64
第二章『冒険者新人研修会』

三十三話「帝都の案内」②

しおりを挟む



「ばーん!!冒険者協会です!!」

「シュウも、もう何度か来てるよな?」

「うん」

 我がギルドハウスは帝都の西方エリアを貫く大通りに面している。その大通りを帝都の中心に向かって歩いていけば、十分ほどで冒険者協会へと辿り着く。

 冒険者協会がある関係で帝都西区、特にこの大通り沿いは冒険者ギルドのギルドハウスが多く建ち並び、それに伴って冒険者が泊まるための宿や飲食店、酒場も多い。

「あっちの方には《新タナル者ノヴァ》とか、《遺物ハンター連合》とかのギルドハウスがあるぞ」

「あそこ、エリー達がよく行く酒場。オレンジジュースが美味しい」

「ま、私達冒険者はとりあえずこの辺うろついてれば大体用が済むよ!」

 そういうことである。

「シュウくんって出身はどこなんだっけ?冒険者協会って結構支部ごとに雰囲気違うらしいけど」

「俺は、帝国の北の方にある山脈付近の出身なんだ。そこまで栄えた地域じゃなかったから……冒険者協会も、帝都とかと比べたら小規模だったな。初めてここを見た時はびっくりした」

 シャルティエ支部は冒険者本部に次ぐほどの規模感と所属冒険者の多さだ、とよく言われるから、そこらの支部とは色々と大違いだ。

 広く設備の整った訓練場、遺跡の資料やジョブ別の専門的な内容の本、その他冒険者に必要な知識や情報を得られる資料室、総合相談所や協会が運営する宿屋まであり、そのどれもが冒険者であれば制限なく利用することができる。
 流石は帝都シャルティエ支部。我がギルドもその手厚さを見習って、設備や制度の充実は意識している部分なのだ。

「シャルティエ支部ではいろんなことができます!困ったらとりあえず窓口に相談すれば何とかしてくれるよ!以上!次!!」

 いや説明雑だな。




 ▷▷▷




「ここが中央区です!といっても地図で見るとほぼ南だけどね!」

 帝都は東西に長い長方形のような形をしており、それが大まかに外区、西区、東区、北区、南区、中央区と分かれている。
 西端の方に外区、その隣に西区、中央区、南区、東区と続き、全体の北の方に北区が長く伸びているようなかたちだ。それぞれの区には何となく特色があり、西区は冒険者関連の施設が多い。

「中央区は行政施設が集まってるよ。役所とか、騎士団本部とか……たまーに来ることもあるけど、ほとんど来ないね!」

 確かに、冒険者の場合身分証や戸籍の管理も冒険者協会の方でしてる場合が多いから、帝都のお役所に用があることってほぼないんだよね。

 道の関係で通り過ぎることは多いけど、ここに用があることはない……いや、そういえば帝都内でギルやアンナが問題起こした時、一般人や公共施設にも被害出して騎士団本部に呼び出し食らったことあったな……何度か。

「中央区はそんな感じで、さらに向こうの南区との境目あたりに皇帝のお住まいがあります!あのデカくて四角いやつだよ。で、南区は貴族街だから、こっちも私達は全然行かないね!」

 端折りまくりだけどその通りなんだよなぁ。

 居住区が完全に分かれている訳ではないんだけど、やっぱり貴族と平民、冒険者は何となく生活エリアが分かれて決まっている気がする。
 ちなみに、私は南区にある高級菓子店にたまーに行って、高級スイーツを堪能しに行くことがある。私がいくら金を持っているとはいえそう易々と払える金額のものじゃないから、二ヶ月に一度くらいの頻度だけどね。

 というわけで、我々は南区には向かわずに北区の方へと向かっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ
ファンタジー
「なんだ!あの農具は!槍のつもりか?」「あいつの頭見ろよ!鍋を被ってるやつもいるぞ!」ギャハハと指さして笑い転げる正規軍の面々。 魔王と魔獣討伐の為、軍をあげた帝国。 討伐の為に徴兵をかけたのだが、数合わせの事情で無経験かつ寄せ集め、どう見ても不要である部隊を作った。 魔獣を倒しながら敵の現れる発生地点を目指す本隊。 だが、なぜか、全く役に立たないと思われていた部隊が、背後に隠されていた陰謀を暴く一端となってしまう…! 〜以下、第二章の説明〜 魔道士の術式により、異世界への裂け目が大きくなってしまい、 ついに哨戒機などという謎の乗り物まで、この世界へあらわれてしまう…! 一方で主人公は、渦周辺の平野を、異世界との裂け目を閉じる呪物、巫女のネックレスを探して彷徨う羽目となる。 そしてあらわれ来る亡霊達と、戦うこととなるのだった… 以前こちらで途中まで公開していたものの、再アップとなります。 他サイトでも公開しております。旧タイトル「茫漠と彷徨えるなにか」。 「離れ小島の二人の巫女」の登場人物が出てきますが、読まれなくても大丈夫です。 ちなみに巫女のネックレスを持って登場した魔道士は、離れ小島に出てくる男とは別人です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...