罪人

桜坂ヒロ

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出会い

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僕は、愛する人を殺した。

雨が降る中、彼女の葬儀は行われた。彼女を見送りに来る人々の足取りは、一様にひどく重かったことを覚えている。それは彼女の持っていた人徳なのか、愛嬌なのか、生前の彼女の明るさを忘れられないと嘆く声が、空気を伝って響き渡る。誰も、こんな形で突然の別れが来るなんて思いもしなかっただろう。そして、僕は本来ここにいるべき人間ではない。なぜなら、皆の視線の先にいる彼女を殺したのは、誰でもない僕自身だから。

彼女と出会ったのは、きっとこの日と同じように雨が降っていた、少し蒸し暑い梅雨明け間近の日だったはずだ。僕は、用事を終えて駅近くのカフェに入った。蒸し暑さというものはかなり厄介なもので、店の中に入っても身体に付き纏うものだった。それを少しでも振り払おうと、アイスコーヒーを注文した。苦く冷たいアイスコーヒーは、僕の身体に纏う不快感を一蹴するに足りる力を持っていた。その後スイーツなどの甘味を幾分か楽しみ、帰路につこうと領収書を持ってレジへと向かった。その時だった。僕の身体に衝撃が走った。目の前を通り過ぎる艶やかな容姿端麗の美女と呼ぶに相応しい女性に、僕の心はいとも簡単に撃ち抜かれた。僕は今まで、一目惚れという考え方に否定的だった。いや、そもそもで過去の経験から女性との関わり自体億劫になっていた。しかし、そんな僕の考えはいとも簡単に砕け散った。その彼女はもう会計を済ませていたようで、店の外に出た。僕は、追うように急いで会計を済ませて外に出た。店に出ると、そこには雨降る空を見上げる彼女の姿があった。見た限り、傘を持っていなかったのだろう。このときの僕の行動力は今考えても、さすがと言われる部類に入るだろう。今行動しなければ二度と彼女には会えない、そんな気がした。僕は、店の前の屋根で雨宿りする彼女の元へ歩いた。
「こんにちは、雨凄いですね」
残念なことに女性経験の無さが裏目に出て、何を話そうか考えずに咄嗟に話しかけてしまった。彼女は私に話しかけてるの?と言わんばかりの戸惑った顔をしていた。しかし、すぐにスッと微笑んで
「そうですね、傘忘れちゃったんで困りました。」
と僕に言った。
少し世間話程度の会話をして、雨が止んだので彼女は去ってしまった。話せて満足していたが、ふと我に返った。連絡先を何も聞いていない。地の底に一気に落とされた気分になり彼女を追いかけたが、その姿は見当たらなかった。

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