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第一章
5 裸の男とアルファの俺
しおりを挟むそれは突然の出会いだった。
弟リューシュの死により激化したヒグマ族との衝突は、この日大事な局面を迎えていた。リューシュの番、ザハトの領地であったレイノアを取り戻す為、かの地で相見えることとなったのだ。
そんな戦乱の最中、何処からともなく現れた、裸の男……
どう考えても不審な男だが、俺は声を掛けずにいられなかった。
染み一つない白い肌に、漆黒の髪と、黒曜石の瞳が印象的で、高すぎない小さめの鼻と、桃色の唇がなんとも言えず可愛らしい……
戦闘に巻き込まれぬよう、自分の馬に乗せると、嗅いだことのない甘い芳香が漂った。
俺は、今まで、オメガのフェロモンに呼応したことが無かった。
最強のアルファである俺の番に成りたがる者は多い。発情期に近づいてくる者は数え切れないほど居るが、フェロモンに反応して性行為に及んだとしても、俺のフェロモンが漏れる事は無かった。
普通は運命の番でなくても、多少相性が良ければ漏れるものらしい。
しかし俺の本能は、誰にも反応しなかった。この時までは……
俺のフェロモンが漏れ出すと、裸の男の匂いがぐっと濃くなった。相乗効果でお互いに、どんどん高まっていく……
ミゲルに後を任せ、林に連れ込み
本能に従った……
中に入れた途端イったのか、裸の男の内壁は、最初から俺に絡みつき、搾り取るようにぜん動した。
『狼が怖い』と言っていたのに、最後まで人型を保つことが出来ず、余程恐ろしかったのか、最後は震えながら放尿していた……
恐ろしい思いをさせたのは自分だというのに、どうにも庇護欲をそそられ『番』にすると決めた……
気を失った番を連れ帰ると、群れの皆の反対にあった。狼族が他の種族を番にすることは珍しい。しかも数少ない『人間』だ。
この世界で一番の大国『ルーシア』以外では、ほとんど確認されていないが、稀に『はぐれ』が居ると聞く。
たとえ、狼族から追い出されたとしても、番を解消するつもりは無い。
首筋に牙を立てた瞬間に『運命の番』であると確信した。
いや、初めて姿を確認した瞬間から本能で分かっていたのだろう。あの場に居たのが他の人間なら、迷わず切り捨てた筈だ。
番は五日も目を覚まさなかった。
男のオメガの場合、最初の性交後に出産可能な体に作り変わる。昏睡するのは良くある事だと聞き安心するが、目を覚まして、再び黒曜石の瞳で見つめてくれることを待ちわびて、食事や清拭、下の世話まで、身の回りの世話のほとんどを自ら行った。
全てを自分に預けて眠る番の姿に、番が自分を恐れていたことなど忘れてしまっていた。
世話係に任命したノイは、することがないと拗ねていたが、長年待ち望み、諦めかけていた番だ。できる限りのことをしたかった……
ノイから目が覚めたと聞き、テラスで待っていると、あらかじめ準備しておいた白のブラウスに身を包んだ番が現れた。
思った通り、よく似合っている……
白いブラウスのおかげで、黒い瞳がいっそう際立ち、愛らしい顔が更に可愛く見える……
しかしノイの『奥様』という一言で顔色が変わった。
番は『異世界人』で、番の居た世界では、男が子供を産むことは無いらしい。自分が妊娠可能な体になったことにショックを受けているようだった……
しかしどういう訳か、サミアンを視界に捉えた途端、ニパッと表情を輝かせ、サミアンを胸に抱き上げてしまった。
サミアンは、ヒグマ族に領地に攻め入られた際、夫のザハトと共に命を落としたリューシュの子供だ。
リューシュの遺体の下から助け出してからと云うもの、獣化を解こうとせず、慣れた人間にも一定の距離を保ち、誰にも心を開かなかった。
番の胸に抱かれ、気持ち良さそうに眠りに就いた時には、ノイと共に驚きを隠せなかった。
それにしてもサミアンを抱く番が、可愛らしい……
俺には見せない緩みきった優しい顔で、慈しむようにサミアンを見つめている……
母性を擽られたのだろうか?
早く俺の子供も抱かせたいものだ……
しかし、番は、俺にあり得ない一言をぶつけた。
「ガインの伴侶は遠慮するけど、サミアンの父ちゃんになら、なってもいいよ」
何故だ!?
運命の番は、惹かれ合うのではないのか!?
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