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第一章
15 愛し合う運命
しおりを挟む「クリス様はアホなのですか?」
お世話係に「アホ」と言われる、この俺……
全く否定できない……
「ガインを、ここまで手玉に取るとは、恐ろしい奴だな……」
ライヒアは「ピュウ」と口笛を鳴らした……
全然手玉に取れてないけどね……?
「おかあたま?」
胸の中のサミアンも、不安そうに見上げている。気持ちよくお昼寝していたのに、急にコロコロ転がっちゃってビックリしたよな。可哀想に……
「ごめんねサミアン。ガインはサミアンのこと怒ったんじゃないから、大丈夫だよ」
「クゥン」と頼りない返事が返ってきた。
大丈夫と言われても安心出来ないよなぁ。折角ガインにも心を開き始めたのに、俺のせいで怖い思いをさせてしまった。
それに、みんなに嫌な思いをさせた。
反省して落ち込む俺に、ライヒアはポツリと呟いた。
「召喚術は、名立たる魔術師十人で行うそうだ…… 万が一にも失敗は許されない。間違って変なモン召還したら国の一大事だからな……」
「失敗したから、俺はこんなところに居るんじゃないの?」
「名立たる魔術師十人の力を以てしても及ばない程の、強い力に引き寄せられたって事じゃないのか……?」
強い力って……
―――――『運命の番』?
「俺の居た世界には、そんな繋がりなかったからなぁー。出逢って恋して愛し合うだけだよ」
「ベータには発情期が無いので、恋愛は普通です。でも番というのは恋愛以上の結び付きなんですよ……」
ノイはそう言うが、やっぱりその価値は分からない……
でも『愛』以上に価値があるものなら、それを否定した俺はガインを酷く傷つけたのだろう……
――――それだけは理解できた。
「俺……『大嫌い』って言っちゃった……」
やっぱり俺はどうしようもないアホだ……
~~~~~~~~
ライヒアは暫く館に滞在することになった。
レパーダに食糧を運ばなければならないので、俺とサミアンは荷馬車に乗せてもらい、毎日同行している。ガインの許可はライヒアが取ってくれたようだ。
俺はレパーダに寄りかかり、頭の中で会話する。声が聞こえないサミアンは、俺が寝ていると思っているようで、いつも膝の上でお昼寝だ。
「レパーダ、退屈していない?」
(ふふ、大丈夫よクリス、私、ここからでも館の様子が分かるのよ)
「へぇ、凄いね!ドラゴンって色んな力が有るんだね!」
(だから、あなたが大事な人と喧嘩中なのも知ってるわ!)
「えっ!そうなんだ……俺が悪いのも知ってるの……?」
(そうね……でもクリスだけのせいじゃないわ。あの狼さんも、あなたの事を理解していないもの……)
「…………レパーダは『運命の番』って知ってる?」
(勿論よ。とても素敵だわ!生まれた時から、愛し合う運命なんて!!)
俺は顔を反らし、レパーダを見つめた……
「愛し合う?」
レパーダは、綺麗な赤い瞳を薄く開いて、俺の顔を覗き込んだ。
(ふふっ、そうよ……『運命の番』は『愛し合う運命の番』なのよ)
恋とか愛とか拘っている俺を気遣ってくれただけかもしれないが、俺は少しだけ気持ちが軽くなって、微笑んだ。
「ガインは許してくれるかな?」
(ふふっ、クリスが本気で仲直りしたいなら許してくれるわ。愛し合う運命ですもの…… そこの小さな坊やの為にも仲良くしないとね)
小さな坊やと呼ばれたサミアンは、俺の膝でスヤスヤ眠っている……
「ありがとう、レパーダ。君ってとっても素敵だね」
(あなたも素敵よ、クリス)
「ふふ、ありがとう……」
最後の一言は、声に出てしまった。
俺の声で、サミアンも目を覚ます。
サミアンを撫でながら「館に戻ったら、ガインに謝ろう」と思った。
近頃ガインは、ヒグマ族がちょっかい掛けて来るとかで、狼ヘッドの人型で出掛けている。戦闘の時はその方が、全体の士気が高まるそうだ。
今日も狼ヘッドのまま帰って来たガインは、俺の姿を確認すると、顔を反らして横を通過しようとした……
あからさまに避けられると、ちょっと傷つく……
(あれ? こういう時ってどうすればいいんだっけ?)
そういえば、俺には36にもなって、マトモな恋愛経験がないんだよなー。
(あぁ、ガインが行っちゃう!!)
とにかくガインを引き止めようと思った俺は、後ろからギュッと抱き付いた。
歩みを止めたガインに「何の真似だ?」と聞かれたけど、何を言うか全く考えていなかった……
(とにかく謝らなきゃ!!)
「ごめんなさい……」
そのまま30秒は沈黙していた……
ガインは俺の方に向き直ると、ギュッと抱き締め返してくれた。
……許してもらえたのかな?
尻尾も揺れてるし……
ガインは俺が考えているより10倍くらい、不器用なのかもしれない。
たったそれだけのやり取りなのに、俺の心臓は、かつてない程ドキドキしていた。
これって、もしかして恋ですか?
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