46 / 67
第二章
45 ステキ大作戦
しおりを挟む「おいカート。この法案が現行法に触れないかチェックしてくれ。問題があれば、改正せねばならん。見落としの無いようにな」
「はーい任せて。俺、最新の通達まで全て頭に入っているから」
カートがガインの執務室を出ていくと、難しい顔で眺めていたグランドルが口を開いた。
「狼は一夫一妻じゃなかったのか? なんだあいつは?」
「俺にはクリスしかいない。何を言っているんだ?」
何事もなかった様に仕事を続けるガインを眺めながら、グランドルは、頭を抱えた。
カートは法律に精通している。
自国のみならず、他国の法律にも詳しく、法改正を進める今、一番必要な人材だと云うことは分かる……
だが……
「お前の為じゃなくクリスの為に言わせてもらうが、もし俺のハーレムにカートが入ったら、間違いなく、ひと悶着起きるぜ」
「オメガは皆、あんなもんだろう? 少なくとも俺の周りはそうだった。いちいち、目くじらを立てていてはキリがない」
「正気か? まさかクリスの前でもあんなにイチャイチャしているのか?」
冗談のつもりで言ったグランドルだったが、ガインは目を見開き、仕事の手を止めた。
「……イチャイチャしているように見えるのか?」
「マジか!? クリスは何も言わないのか!? 落ち込んだり……」
「………いや、むしろ元気だ」
その頃クリスは……
「おかあたまー、今日もつやつやでちゅねー」
「ふふっ、ありがとうサミアン」
ふっふっふっ。俺の艶々はエッチのおかげじゃないんだぜ!
モデル仕込みのフェイスケアで、隈も無くなって完全復活だ!
ついでに伸びっぱなしの髪は、揃えてひっつめて、地味顔を全開にしてみたよ!
「おかあたま!タミアンもおとろいにちてくだたい」
獣人の髪は、個人によって一定の長さが保たれるので、切る必要はない。
獣化する時邪魔になるから、ノイみたいに滅多に獣化しない人以外は、伸ばしっぱなしなのだ。
サミアンは、ずっとふんわりボブだから、お揃いにしてあげたいけど長さが足りない……
「サミアンは、その髪型が一番可愛いいよ。その代わりリボンでお揃いのコサージュ作ったよ。一緒に付けようね」
「ふぁぁ、可愛いでちゅー!」
俺流、服のアレンジは狼族で流行ったけど、城には色んな種族が居るから、国中に広められる筈だ。
名付けて「狼ステキ大作戦」
まずは、民衆の心を掴むのだ!
「よし!サミアン。大きい庭に行こう!」
「はい!おかあたまっ!」
大きい庭と云うのは、俺たちが暮らす旧後宮の庭ではなく、城に隣接する庭だ。城で働く人々に解放されているので、昼時は、サラリーマンが集う日比谷公園のように、色々な種族が集まるのだ。
「クリス様、サミアン様お散歩ですか?」
「ダグラスさんこんにちは! 今日は天気が良くて気持ちいいね」
いつも散歩していたら、みんなと仲良しになっちゃった。
サミアンとノインの可愛さで、仲の悪かったヒグマ族の人も、気さくに話し掛けてくれるようになったし、先輩ママの貴重な話も聞ける。
「ステキ大作戦」の一環として始めた散歩だけど、思わぬ収穫がたくさんあった。サミアンとノインにとっても、小さい頃から他の種族と交流を持つのはいい事だと思う。
ガレニアは一つの国なのだから……
ガインとグランドルは、その様子を執務室の窓から眺めていた。
「おいおい……クリス達、ヒグマと話してるけど、大丈夫なのか?」
「ああ……いつも楽しそうに話している。お陰で、ヒグマ達の俺に対する態度も軟化した……」
「……クリスは、こんな朴念仁には勿体ないな……」
「……もっともだ。俺達も庭にでてみるか?」
二人が庭に出ると、クリス達の周りには人だかりが出来ていた。全ての種族が笑顔で楽しそうに話している……
狼族の時も驚かされたが、クリスの人を惹き付ける魅力は、種族間の壁を越える。
その美しさで魅了するだけでなく、気が付いたら心を開かれてしまうような、不思議な力を持っているのだ。
「ガイン!外出るなら僕も誘ってよー」
しかし、間が悪くカートがやって来てガインの腕に絡み付いたところで、クリス達もこちらに気が付き顔を上げた……
美しい微笑みを浮かべるクリスだが、その前に一瞬だけ悲しそうな顔をしたのを、ガインは見逃さなかった。
~~~~~
「ガイン達もお散歩?」
(カートも一緒に?)
ガインに悪意が無いのは分かってるけど、やっぱりベタベタされるのは見たくない……
でもそれより許せないのは「ガインの伴侶、大したことない」って思われる事だ!!
「カートもお疲れ様、お仕事大変だね」
だから敢えて余裕たっぷりに振る舞ってやる!
モデル歴20年の人心掌握術をなめんなよ!
しかし意気込む俺は、思わぬ肩すかしをくらった。
「えっ?クリス? この前と全然違う! 超キレイ!」
(えっ?)
カートは、ガインの腕をポイッと放して、俺の腕に絡み付いた。
「そのコサージュも可愛いね!どこで買ったの?」
「おかあたまの手作りでちゅ」
「どうやって作るの?後で教えて!」
「……うん。いいけど……」
(「ステキ大作戦」こんな奴にまで効果を発揮??)
「ありがとう、クリス!」
カートは俺の頬にチュッとキスをした。
「なっ!?」
ガインの顔色が変わり、思わず声が出た。
(隣のグランドルは、めっちゃ笑ってるし……)
慌てて俺に駆け寄ったガインは、俺に絡み付くカートを押し退けると、俺をギュッと抱き締めた。
「……俺は、またお前に嫌な思いをさせていたか?」
「……ちょっとね。でもガインを信じているから」
「お前は辛い顔を見せないのだったな……何でもプラスに換えてしまう…… だがそれで俺の態度が許されるとは思っていない。すまなかった。お前だけを愛しているぞ、クリス」
ガインは抱擁を少し緩めると、俺の唇にチュッと口づけた。
「クリス様、ラブラブだな!」
ヒグマ族のダグラスさんから声が上がり、周りからもヒューヒューと冷やかされる。
(うわっ! 恥ずっ!!)
でも庭にいるみんなが、笑顔で俺達を見守っていた……
目の前でラブラブぶりを見せられて、ムスッとしたカート以外は……
みんな、今まで遠巻きに見るだけだった新元首ガインにも、親近感が湧いたようだ。
「狼ステキ大作戦」は予想外の大成功を収めた。
狼族の好感度は城で働く人達から徐々に上がっていき、ガインを支持する声も増えていった……
89
あなたにおすすめの小説
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる