悪役令嬢を召喚したら、可愛すぎて色々無理

mios

文字の大きさ
37 / 65
第四章 二人の聖女(アラン視点 前半)

公爵家の提案

しおりを挟む
「どう思う。」
「時間を置いたらまたすぐに本来の姿を、惜しげもなく見せてくれますよ。」
「そうだな。それからでも遅くはないか。」

あれだけ問題の多かった聖女がたった数日で改心するなどあり得ない。すぐに本性を表す筈だと静観したものの、その後アリサの態度はすっかり変わってしまった。

ユミとも仲良く話していたり、マナーも少しずつではあるが、身についてきている。何より男性との距離感が適切になった。それまでは馴れ馴れしく近づいてきたのが、今では淑女として恥ずかしくない距離でしか近づいてこない。

やればできるのではないか、と思うと同時に、アリサ本人が言った「あの時はどうかしていた」説に信憑性が出てきた。

マナー講師は、今までとは別の講師だが、前の講師の教え方が悪かったのではないか?と噂されたりしている。

アリサは時折、後ろに控えている男に話しかけては、屈託のない笑顔をみせていて、その様子に今度こそどちらかの聖女との結婚話が持ち上がる。

「だから、私はアンネリーゼと言う婚約者がいるのだと、言っているだろう。」

ついつい大きい声になってしまう私に、異論を唱えたのは、次期リーフ公爵の、グレイ・リーフ。アンネリーゼの兄だ。

「お言葉ですが、殿下。私の妹はあの日、召喚魔法により、消えてしまい、未だに帰りません。彼女の身の安全の保証もない今、リーフ公爵家との婚約は、解消していただきたいのです。」

今まで、アンネリーゼの無事をずっと祈り続け、王家を批判してきたリーフ公爵家からの申し出に、言葉を無くす。

「解消していただけるのでしたら、その上で、どちらかの聖女の後ろ盾となることをお約束致します。」

「ご結婚に必要な物も、全てこちらで揃えましょう。」

王家に対してずっと、聖女との婚姻を反対していた筆頭公爵家からの提案に、陛下も、そこに居合せた大臣達も、驚きを隠せていない。

アンネリーゼとの婚約は、政略だが、自分としては、唯一無二の相手として、一緒に歩んでいく筈だった。

恋愛感情は少なくとも、自分にはあったのに、彼女を守れなかった。守れなかった自分が言うべきことではないのだが、どうしても諦めきれない。

「少し考えさせてください。」

このままでは、アンネリーゼとの婚約は、解消されてしまうだろう。

それでも、最後まで考えたいのは、自己満足でしかない。アンネリーゼがいつか戻った時に、自分は最後まで抵抗したと言う言い訳が欲しいだけだ。

「このままだと、聖女に選ばれるのはどちらになる?」

「聖女召喚の儀で、来られたのは、ユミ様ですが、あの方の証言がありますからね。何か決定的な出来事があればいいのですが。」

そうは言ったものの、何も思い浮かばず、頭を抱えていた。

部屋を出て歩きながら、何かないか、考えていると、怪しい男が目に入る。

あれは、アリサの側にいつもいる、従者だ。
よく見て観察していると、やはりどこかで見たことがあるように思う。

ふと、彼に話しかける人がいる。アリサかと思っていると、それは、ユミだった。

そこで、私はハッキリと思い出した。どうして忘れていたのだろう。

あれは、あの男だ。あの夜会の時にユミを泣かせた、ユミの兄に似てる、従者だ。

何故、こんなところに?姿まで、隠して。

王子は未だに混乱した状態のまま、男の後姿を尾けてみた。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

完全無敵メイド•ナターシャの幸せ

くま
恋愛
小さい頃から、私には前世の記憶があった。その記憶を活かして、愛する婚約者の為、国の為の発展を願っていた。 願っていたのだ。 『お前のような悪女な婚約者など、いらん!!婚約破棄だ!!!』 婚約者や家族からも、国に捨てられた私はなんとか1人で、図太く、生き延びていた時だった。 盗賊達が小さな女の子を攫っていたのを、私は助けた。 金髪で瞳が青い小さな女の子を見て、私は前世でよくやりこんでいた……… 『聖なる乙女と王子様』という乙女ゲーム。 そしてこの小さな女の子が、そう将来悪役令嬢である レイラ様だった。 彼女に懐かれて、屋敷のメイドと過ごす。 なら!メイド•ナターシャである私は完璧に悪女にさせてあげましょう!そう思っていたのに、お嬢様はとても良い子になっています。何故でしょうか。 そして攻略対象者である兄達に、何故か好かれてるいるような…… あの、近いので距離を置いてもらえませんでしょうか。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...