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第五章 あれ、詰んでる? (夕実視点)
カレン嬢
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久しぶりに会った蒼は意外にも元気そうだった。レオンの話を聞くのに、蒼も連れて行きたいと、ごねたアリサを言いくるめて、部屋を後にする。私達二人がいない時に、どうにかアンネちゃんと蒼の時間をとってあげたかった。蒼は、アリサの背後から、小さく謝っていたが、貸しにしておいてやろう。
せっかく伺うのだし、クリストフの祖父の好物は何だろうか。調べておいて損はないだろう。この世界の常識はよくわからないが、やっぱりお家に伺う際には手土産は必要よね。
買いに行って貰う時間があるかな、と考えて歩いていると、曲がり角で誰かとぶつかった。
「申し訳ございません。よそ見をしておりました。」
「いや、こちらこそ。大丈夫でしたか?」
相手はクリストフの婚約者のカレン嬢だった。
私を見るなり、カレン嬢は珍しく顔を輝かせた。特に嫌われているわけではないとは思うのだが、いつもならあまり私に積極的には関わろうとはしないので、不思議に思っていると、彼女は、私の手を握り、お願いをしてきた。
何やら、クリストフの祖父に会うのに、一緒に行きたいらしい。
クリストフに興味が無さそうな、カレン嬢だが、もしかしたら彼の祖父とは何か交流があるのだろうか。
「それは構わないと思います。」
私が決めることではないが、護衛としてゴリ押しすればいけそうである。それに私個人の気持ちで言うと、知らないイケメン騎士よりもカレン嬢に護衛してもらえる方が面白い。
女性同士の方が、隅々まで守りやすいのではないかな、と思うし。それに、カレン嬢なら何をお土産に持っていけば良いか、わかるに違いない。
「あの…クリストフ様のお祖父様は、何かお好きな食べ物とかあるのでしょうか?」
「初めて行かれるのよね。ユミは。それなら食べものではなくて、珍しいものの方がいいわ。例えばあちらの世界から一緒に持ってきたものとか。渡さなくても見せてあげるだけでも良いのよ。
まさしく最初の召喚の時に、聖女様の持ち物に興味をお示しになって、それから独自の文化を取り入れていらっしゃるのだもの。
もしかしたらユミなら使い方がわかるものもあるかもしれないわ。」
「なるほど。それは何でも良いのかな?」
「ええ、何でも。ユミにとっては、大したことないものでも、この世界にはないものなのよ?楽しいに決まってるわ。」
カレン嬢と話したことはあまりなかったが、こんなに無邪気な人だったろうか。
私がポカンとしているのが、わかったのか、苦笑したあと、カレン嬢が謝った。
「ごめんなさい。つい興奮してしまったわ。クリストフ様のお祖父様の名前はアダムス様よ。アダムス・アードラー様。
あと、できればお腹は空かせていった方が良いわ。驚くほど、沢山の食事がでてくるから。」
それは、王宮よりも……?
ユミは王宮のフルコース料理に辟易していた。毎日たくさんの種類の高級料理。お腹が破裂しそう。量を少なくしてもらっても毎日胃薬が必要になる。
太るのも気になるが、何より味だ。美味しくないわけではないが、濃い。日向家はどちらかと言えば薄味だ。それは、母の味というよりは兄の味で、兄が作るものは何だって素材の味を生かしたものになる。
たこ焼きは、ソースありきだから、濃いけれど、他は概ね、味噌汁だってお出汁の効いた薄味だった。
できれば、薄味だと助かるなぁ。
そう思いつつ、鞄の中に胃薬を忍ばせることにした。
せっかく伺うのだし、クリストフの祖父の好物は何だろうか。調べておいて損はないだろう。この世界の常識はよくわからないが、やっぱりお家に伺う際には手土産は必要よね。
買いに行って貰う時間があるかな、と考えて歩いていると、曲がり角で誰かとぶつかった。
「申し訳ございません。よそ見をしておりました。」
「いや、こちらこそ。大丈夫でしたか?」
相手はクリストフの婚約者のカレン嬢だった。
私を見るなり、カレン嬢は珍しく顔を輝かせた。特に嫌われているわけではないとは思うのだが、いつもならあまり私に積極的には関わろうとはしないので、不思議に思っていると、彼女は、私の手を握り、お願いをしてきた。
何やら、クリストフの祖父に会うのに、一緒に行きたいらしい。
クリストフに興味が無さそうな、カレン嬢だが、もしかしたら彼の祖父とは何か交流があるのだろうか。
「それは構わないと思います。」
私が決めることではないが、護衛としてゴリ押しすればいけそうである。それに私個人の気持ちで言うと、知らないイケメン騎士よりもカレン嬢に護衛してもらえる方が面白い。
女性同士の方が、隅々まで守りやすいのではないかな、と思うし。それに、カレン嬢なら何をお土産に持っていけば良いか、わかるに違いない。
「あの…クリストフ様のお祖父様は、何かお好きな食べ物とかあるのでしょうか?」
「初めて行かれるのよね。ユミは。それなら食べものではなくて、珍しいものの方がいいわ。例えばあちらの世界から一緒に持ってきたものとか。渡さなくても見せてあげるだけでも良いのよ。
まさしく最初の召喚の時に、聖女様の持ち物に興味をお示しになって、それから独自の文化を取り入れていらっしゃるのだもの。
もしかしたらユミなら使い方がわかるものもあるかもしれないわ。」
「なるほど。それは何でも良いのかな?」
「ええ、何でも。ユミにとっては、大したことないものでも、この世界にはないものなのよ?楽しいに決まってるわ。」
カレン嬢と話したことはあまりなかったが、こんなに無邪気な人だったろうか。
私がポカンとしているのが、わかったのか、苦笑したあと、カレン嬢が謝った。
「ごめんなさい。つい興奮してしまったわ。クリストフ様のお祖父様の名前はアダムス様よ。アダムス・アードラー様。
あと、できればお腹は空かせていった方が良いわ。驚くほど、沢山の食事がでてくるから。」
それは、王宮よりも……?
ユミは王宮のフルコース料理に辟易していた。毎日たくさんの種類の高級料理。お腹が破裂しそう。量を少なくしてもらっても毎日胃薬が必要になる。
太るのも気になるが、何より味だ。美味しくないわけではないが、濃い。日向家はどちらかと言えば薄味だ。それは、母の味というよりは兄の味で、兄が作るものは何だって素材の味を生かしたものになる。
たこ焼きは、ソースありきだから、濃いけれど、他は概ね、味噌汁だってお出汁の効いた薄味だった。
できれば、薄味だと助かるなぁ。
そう思いつつ、鞄の中に胃薬を忍ばせることにした。
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