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第七章 レオンの魔法陣
査定③
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「ああ、そうだ。忘れてた。」
レオンに会ったら渡そうと思っていたものを取り出す。
「これ、俺が昔見様見真似で書いたものなんだけど、この形に見覚えある?こちらの世界からアンネちゃんを呼んでしまった元凶の魔法陣なんだけど。」
俺が渡した魔法陣は、アンネちゃんを召喚した時の魔法陣をうろ覚えでこちらに来てから書き留めたものだ。ちなみに、ばあちゃんの使用した魔法陣とは形が違っていて、ばあちゃんからはあまり詳しいことは聞き出せなかった。
レオンに見せても、実際に使われたものを、思いつく限りで書いたものなので、わかるとは思っていなかった。駄目元ってやつだ。
「あ、それなら……」
アンネちゃんも同じように魔法陣の書いた紙を見せる。
「私も二人に召喚された時に、足元に浮かぶ魔法陣を見ているので記憶を頼りに書いてみたんです。魔法陣は素人なので、ちゃんと書けているかわかりませんが。」
蒼とアンネリーゼに渡されたそれをレオンは興味深く見比べると、魔法陣を重ね合わせてみる。
一瞬、合わさった魔法陣から光が溢れて、すぐに静まった。
「面白いな。二枚揃うことで効果を発揮する。しかも、片道しか用意されていない。これは、もしかすると、もしかするぞ。」
レオンは魔王のような顔で悪そうな笑みを浮かべて、一人で納得している。
「あの、こっちにもわかるように喋ってくれない?」
「いや、まあ、まだ良いだろう。そのうち、何故こうなったかわかるだろうから、それまでゆっくり待てば良い。多分これは偶然が重なり合って、そこに少しの悪意が混ざった結果だ。ちなみに、この魔法陣は術者の魔力の多さが成功の決め手となる。この紙自体にもう効力はないが、今まで通り別々に保管するか信頼できる者に預けておくことを薦める。」
「なら、預かっててくれない?俺たちも実は持っておくことが怖かったんだ。レオンなら専門家だし、へんな悪戯もしないだろう?」
実際、こちらに来てから魔法陣について考える度にまたどこかにアンネちゃんが飛ばされたらどうしようとか、自分がこの場から離れてしまったら、とかたくさん考えるようになった。
何も知らない異世界で、この場所を離れて生きていける保証はない。むしろ、ユミやアリサ、アンネちゃんとは違いこの世界で役割を持っていない自分はいつ、この場から切り離されるか気が気でなかった。
もし、自分だけが日本に帰れたとしたら、パラレルワールドとして、あっちはあっち、こっちはこっちで進んでいって、もう会えなくなってしまう。
魔法陣とはそう言う未来も作ってしまう。
レオンは、簡単に彼を信用した俺に言いたいことはあるようだが、魔法陣に単純に興味があったのか、二つ返事で引き受けてくれた。
「先程少し光が反応したことからもわかるように、この二つの魔法陣は合わせただけでは大して効果は期待できない。もしかしたら、魔術師でない素人が作ったものかもな。」
「一枚は俺が書いたものだからあながち間違ってないよ。」
「いや、お前が書くきっかけになった魔法陣はこれに似ているのだろう。多分それがそもそも悪さをしている可能性がある。」
この魔法陣を書くきっかけは、所謂厨二病の、ただのアニメとか、そんなようなものだったと思う。
はっきりとは覚えていないがある日、突然書いてみたいと思ったんだよな。綺麗に清書までして……ん?あれ、何でばあちゃん家にあったんだっけ。ああ、親に見つかったら捨てられるから、だったような気がする。
レオンの話を聞きながらあの頃の家の殺伐とした空気を思い出し、勝手に落ち込んでいると、レオンから重大な事実が告げられる。
子供の落書きを利用して、アンネちゃんを排除しようとした動きがあると言う。
「多分相手は、この魔法陣が何によって作られたものかを勘違いしたようだ。悪意を辿れば案外犯人はすぐにわかるかもしれないぞ。」
レオンは楽しそうだが、笑ってる場合ではない。何もないから良かったものの、アンネちゃんに危険が及ぶなら、冷静では居られなくなる自信がある。
レオンに会ったら渡そうと思っていたものを取り出す。
「これ、俺が昔見様見真似で書いたものなんだけど、この形に見覚えある?こちらの世界からアンネちゃんを呼んでしまった元凶の魔法陣なんだけど。」
俺が渡した魔法陣は、アンネちゃんを召喚した時の魔法陣をうろ覚えでこちらに来てから書き留めたものだ。ちなみに、ばあちゃんの使用した魔法陣とは形が違っていて、ばあちゃんからはあまり詳しいことは聞き出せなかった。
レオンに見せても、実際に使われたものを、思いつく限りで書いたものなので、わかるとは思っていなかった。駄目元ってやつだ。
「あ、それなら……」
アンネちゃんも同じように魔法陣の書いた紙を見せる。
「私も二人に召喚された時に、足元に浮かぶ魔法陣を見ているので記憶を頼りに書いてみたんです。魔法陣は素人なので、ちゃんと書けているかわかりませんが。」
蒼とアンネリーゼに渡されたそれをレオンは興味深く見比べると、魔法陣を重ね合わせてみる。
一瞬、合わさった魔法陣から光が溢れて、すぐに静まった。
「面白いな。二枚揃うことで効果を発揮する。しかも、片道しか用意されていない。これは、もしかすると、もしかするぞ。」
レオンは魔王のような顔で悪そうな笑みを浮かべて、一人で納得している。
「あの、こっちにもわかるように喋ってくれない?」
「いや、まあ、まだ良いだろう。そのうち、何故こうなったかわかるだろうから、それまでゆっくり待てば良い。多分これは偶然が重なり合って、そこに少しの悪意が混ざった結果だ。ちなみに、この魔法陣は術者の魔力の多さが成功の決め手となる。この紙自体にもう効力はないが、今まで通り別々に保管するか信頼できる者に預けておくことを薦める。」
「なら、預かっててくれない?俺たちも実は持っておくことが怖かったんだ。レオンなら専門家だし、へんな悪戯もしないだろう?」
実際、こちらに来てから魔法陣について考える度にまたどこかにアンネちゃんが飛ばされたらどうしようとか、自分がこの場から離れてしまったら、とかたくさん考えるようになった。
何も知らない異世界で、この場所を離れて生きていける保証はない。むしろ、ユミやアリサ、アンネちゃんとは違いこの世界で役割を持っていない自分はいつ、この場から切り離されるか気が気でなかった。
もし、自分だけが日本に帰れたとしたら、パラレルワールドとして、あっちはあっち、こっちはこっちで進んでいって、もう会えなくなってしまう。
魔法陣とはそう言う未来も作ってしまう。
レオンは、簡単に彼を信用した俺に言いたいことはあるようだが、魔法陣に単純に興味があったのか、二つ返事で引き受けてくれた。
「先程少し光が反応したことからもわかるように、この二つの魔法陣は合わせただけでは大して効果は期待できない。もしかしたら、魔術師でない素人が作ったものかもな。」
「一枚は俺が書いたものだからあながち間違ってないよ。」
「いや、お前が書くきっかけになった魔法陣はこれに似ているのだろう。多分それがそもそも悪さをしている可能性がある。」
この魔法陣を書くきっかけは、所謂厨二病の、ただのアニメとか、そんなようなものだったと思う。
はっきりとは覚えていないがある日、突然書いてみたいと思ったんだよな。綺麗に清書までして……ん?あれ、何でばあちゃん家にあったんだっけ。ああ、親に見つかったら捨てられるから、だったような気がする。
レオンの話を聞きながらあの頃の家の殺伐とした空気を思い出し、勝手に落ち込んでいると、レオンから重大な事実が告げられる。
子供の落書きを利用して、アンネちゃんを排除しようとした動きがあると言う。
「多分相手は、この魔法陣が何によって作られたものかを勘違いしたようだ。悪意を辿れば案外犯人はすぐにわかるかもしれないぞ。」
レオンは楽しそうだが、笑ってる場合ではない。何もないから良かったものの、アンネちゃんに危険が及ぶなら、冷静では居られなくなる自信がある。
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本日、最新話を拝読しました。
本当に。更新してくださり、ありがとうございます……っ。
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いつもありがとうございます!春先は少ししんどいですよね。私は主に眠気と闘う毎日ですが。
そろそろ更新を続けていきたいな、と思いつつ……アンネリーゼを早く幸せにしたいです。
更新ありがとうございます!
お待たせしております。やっと方向性が決まりまして、またちょこちょこ書いていこうと思います。
本日、最新話を拝読しました。
新年早々にこちらの世界をのぞくことができて、本当に。幸せに感じております……っ。
mios様。
これからますます、寒くなってゆくとのことですので。
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お待たせしております。いつもありがとうございます。またちょこちょこ更新していこうと思います。お付き合いくださると嬉しいです。