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新しい駒は白ける
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愛が何だと言いながら、最後まで守ってもやらない、自分の命を投げ打ってでも彼女を助けてほしいと言う気概もない男をルシアは白けた様子で見ていた。婚約者を簡単に裏切っておいて、それだけ愛した女性にも執着せずにいる。彼は結局のところ、誰かに反抗したかっただけの甘えた子供でしかなかったのだろう。
ルシアだって、昔からそういう男達を散々見て来た。没落した貴族である彼女を下に見て浮気相手にと誘ってきた男は山ほどいたし、その男の婚約者は何故か本人ではなく、此方に憎しみをぶつけてくるし。
ルシアが国を捨てようと思い至った原因の一つも、こんな男だった。ルシアの叔母がしたことを、自分の婚約者に行い、その罪をルシアに被せようとした。理由は婚約者有責で婚約破棄をして慰謝料をせしめたいから。叔母がしたことの責任は没落したことでほぼ償っている、というのに、奴らは何もしていないルシアを見せしめに殺そうと画策した。
貴族に生まれておきながら家の取り決めすら守れないなら貴族でなくなれば良い。男の婚約者はそう言って、婚約破棄の後、男を訴え、逆に慰謝料をふんだくったらしいけれど。
薬でどうにかしようとしても、最後には日頃の行いが物を言う。その男の破滅と同様に、ルシアがあの国では自由に生きられなかったことも、嵌められる要因だったのは間違いない。
いつもルシアを庇ってくれていた友人も、あの時何故か信じてくれなかったがその理由がまさか、今回やり返した女性だったなんて。
いつもルシアの味方になってくれた友人をルシアは知らないうちに好きになっていた。だけど、彼の本命は別にいて、彼女を害したのがルシアだと言われた時に、彼はルシアを信じなかった。
後で誤解が判明して、その時には謝ってくれたけど、それでルシアの恋は終わった。恋が終わったと同時に友人でもなくなったのはそういう理由だ。
ルシアは自分がこの国にいる限りずっと今のようなことが繰り返されるのだと感じた。キリがない。
貴族をやめて、平民になったところでこの待遇は変わるまい。ならば、と切り捨てられる覚悟で無謀にもこの国に渡ってみれば、世界が開けた。
アナスタシアはよくいるタイプのバカな女だった。これが叔母がやらかした成れの果てだと理解して、彼女の思うように動いてあげた。
彼女は誰にも見られていないところで贅沢をするよりも、「高貴な人に自分が選ばれた人間」であることを誰かに悔しがられながら見せつけたい、人間だった。
ルシアは第三王子に恋焦がれながらアナスタシアを羨ましいと思う身の程知らずな侍女でなくてはならなかった。現実にはあんな変な男は絶対にお断りだけど。
アナスタシアを愛している男なら彼女と共に死ぬことを願うと思っていたのに。残念ながらそこまでの思いはなかったようだ。
とはいえ、アナスタシアだって、アランに頼ることはすでに選択肢から抜け落ちていたようだけれど。
彼女が助けを求めたのは、何と第一王子と、第二王子。絡みなど皆無だったと思うのに。第三王子を止められるのが二人しかいないと思ったのだろうか。
手紙は届くことはなかった。
同じ頃、アナスタシアの父親である男爵は別の場所で囚われていた。彼と一緒にいるのは同盟国でルシアを監視していた男の一人。彼はついこの前に婚約をしたばかり。その後、ルシアが国を出たので、婚約者を置いて、後を追って来たのだ。
彼はルシアが何を考えているのかいまだにわからずにいた。彼はルシアのそばに居ながら、彼女が祖国を恨んでいることに気がついていなかった。
ルシアを受け入れて大切にしている自分が嫌われている、なんて思いもしなかった、ご都合主義の男だった。
彼らは男爵と協力するより男爵を捕らえて人質にした方が早いのでは?と思い始めていた。男爵は自分で思うより遥かに無能だったので、それは全くの見当違いということでもなかった。
ルシアだって、昔からそういう男達を散々見て来た。没落した貴族である彼女を下に見て浮気相手にと誘ってきた男は山ほどいたし、その男の婚約者は何故か本人ではなく、此方に憎しみをぶつけてくるし。
ルシアが国を捨てようと思い至った原因の一つも、こんな男だった。ルシアの叔母がしたことを、自分の婚約者に行い、その罪をルシアに被せようとした。理由は婚約者有責で婚約破棄をして慰謝料をせしめたいから。叔母がしたことの責任は没落したことでほぼ償っている、というのに、奴らは何もしていないルシアを見せしめに殺そうと画策した。
貴族に生まれておきながら家の取り決めすら守れないなら貴族でなくなれば良い。男の婚約者はそう言って、婚約破棄の後、男を訴え、逆に慰謝料をふんだくったらしいけれど。
薬でどうにかしようとしても、最後には日頃の行いが物を言う。その男の破滅と同様に、ルシアがあの国では自由に生きられなかったことも、嵌められる要因だったのは間違いない。
いつもルシアを庇ってくれていた友人も、あの時何故か信じてくれなかったがその理由がまさか、今回やり返した女性だったなんて。
いつもルシアの味方になってくれた友人をルシアは知らないうちに好きになっていた。だけど、彼の本命は別にいて、彼女を害したのがルシアだと言われた時に、彼はルシアを信じなかった。
後で誤解が判明して、その時には謝ってくれたけど、それでルシアの恋は終わった。恋が終わったと同時に友人でもなくなったのはそういう理由だ。
ルシアは自分がこの国にいる限りずっと今のようなことが繰り返されるのだと感じた。キリがない。
貴族をやめて、平民になったところでこの待遇は変わるまい。ならば、と切り捨てられる覚悟で無謀にもこの国に渡ってみれば、世界が開けた。
アナスタシアはよくいるタイプのバカな女だった。これが叔母がやらかした成れの果てだと理解して、彼女の思うように動いてあげた。
彼女は誰にも見られていないところで贅沢をするよりも、「高貴な人に自分が選ばれた人間」であることを誰かに悔しがられながら見せつけたい、人間だった。
ルシアは第三王子に恋焦がれながらアナスタシアを羨ましいと思う身の程知らずな侍女でなくてはならなかった。現実にはあんな変な男は絶対にお断りだけど。
アナスタシアを愛している男なら彼女と共に死ぬことを願うと思っていたのに。残念ながらそこまでの思いはなかったようだ。
とはいえ、アナスタシアだって、アランに頼ることはすでに選択肢から抜け落ちていたようだけれど。
彼女が助けを求めたのは、何と第一王子と、第二王子。絡みなど皆無だったと思うのに。第三王子を止められるのが二人しかいないと思ったのだろうか。
手紙は届くことはなかった。
同じ頃、アナスタシアの父親である男爵は別の場所で囚われていた。彼と一緒にいるのは同盟国でルシアを監視していた男の一人。彼はついこの前に婚約をしたばかり。その後、ルシアが国を出たので、婚約者を置いて、後を追って来たのだ。
彼はルシアが何を考えているのかいまだにわからずにいた。彼はルシアのそばに居ながら、彼女が祖国を恨んでいることに気がついていなかった。
ルシアを受け入れて大切にしている自分が嫌われている、なんて思いもしなかった、ご都合主義の男だった。
彼らは男爵と協力するより男爵を捕らえて人質にした方が早いのでは?と思い始めていた。男爵は自分で思うより遥かに無能だったので、それは全くの見当違いということでもなかった。
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