私が殺した筈の女

mios

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やり直し

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「お嬢様、あの、あんたの婚約者様も、一応この計画に乗っている方なんだぜ。」

埒が明かない様子に痺れを切らして、遂に男はローガンの名前を出してみるが、プリシラは殺意をしまうことはない。

「あの男は、お嬢様があの女を殺したことだって既に知ってるし、何なら先を越されて悔しがっていた。」

プリシラが困った時に頼る相手として、自分が選ばれたことにも、鬱陶しすぎる嫉妬のような感情を露わにしていた。

また殺された女に関しても、プリシラの初めてを奪われた、とか気持ちの悪いことを言っていたような気がする。

バカップル同士、好きにしてくれれば良いが、それはこちらに害のない範囲でなければならない。

男は、伯爵家ひいては王家の意向で今死ぬわけにはいかず、場合によってはお嬢様を傷つけてでも、生き延びなければならなかった。

よってローガンの名前を出したのだが。

「あの女をローガン様が殺したがっていたと言うこと?」

「いや、そうではなくて……」


ローガンの気持ちの悪い思考について、男はほんの少しも共感できない。だから、誰かにそう聞かれてもうまく説明できない自信はあった。

どう答えようか考えあぐねていると、まさかの本人が現れた。ローガンは愛するプリシラが自分のことについて話す貴重な瞬間に、不純物が混じっていることに耐えられなくて姿を現したのだが、実のところ、彼女が彼を始末しようとした最初からずっとプリシラをストーカーしていたのだった。

「プリシラ、僕以外の男と二人きりなんて妬けるから今度からはしてはいけないよ。」

ローガンは常日頃から、プリシラを自分以外の男の目に触れないようにどこかに閉じ込めたい、と思っていた。


プリシラは、プリシラでローガン以外の男は男という認識すらしていない為、そう言われたところで、よくわからない、という現象に陥っている。


「安心してください。私はローガン様以外には価値のない女ですわ?」

男は矛先がこちらに来ないうちに逃げたいが、それが許されるかはわからない。二人にとって二人以外はゴミと同義なのだから、二人は二人だけで過ごしてくれればいいのに、と男は思っていた。


「彼女を殺したいなら次は僕と一緒にしようよ。前はプリシラだけで成し遂げてしまった訳でしょう?この一連が片付いたら、いくらでも彼女を殺せるんだから。君の罪の一部でも僕にも負担させて欲しいんだ。」

彼らの言っていることは全くわからないけれど、ローガンの意見に特に反対しなかったことから、男は延命が成功したことを知った。

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