8 / 18
彼女はいなくなった
役目が終わったのか、カリーナの姿の男は居なくなった。だけど、だからといって悩みの種がなくなったとはいえない。
彼がいなくなる間際に、カリーナに籠絡され、人生を変えた男が一人、ローガンではなく、プリシラに会いに来た。
彼はカリーナに婚約を潰され、婚約破棄の慰謝料にて退学を余儀なくされた伯爵家の元嫡男だ。彼は平民となり、今は借金返済の為働いているらしいが、プリシラとは正直話したことはないし、何の用事があるのか分からなかった。
久しぶりに二人きりのデートの予定だったのに、とローガンは席を立とうとはせずに、恨めしそうにこちらを見ている。
男は、カリーナがローガンの屋敷で働いていたことを聞きつけ、彼女がどうしているか聞きに来たようだ。
「もう、ローガンの屋敷にはいないけれど。」
「ああ、そうなんですね。今更何の用か聞かれても困るのですけど、実は彼女に返さなければならない物がありまして。」
彼の取り出したものは、プリシラが以前無くした髪留めだった。
「これはどこで?」
「学園に居た時に一度しか訪れなかった場所なんですが、西階段の奥に小さな庭があったでしょう?
あの入り口の扉の前に落ちていたんです。僕はずっと彼女の動向を振られても尚諦めなくてただ見ていたんですよ。
まあまあ遠目だったので、そこにご令嬢が二人向かうところしか見ていないんですけどね。
結構あの頃は、寝ても覚めても彼女のことばかり考えていたもので、彼女が出て来るのを待っていた訳です。ところが、待っても待っても出てこない。
あの場所は出入り口が一箇所しかありませんからあそこで張っている限り見失うことは無いわけです。」
プリシラは話の方向がわからなくて、首を傾げる。
「いつまで待っても出てこないから会いに行くと、不思議なことに彼女はいませんでした。あったのは、この髪留めだけ。それも落ちていたという感じではなく、置いて行ったようなそんな感じです。」
「一介の男爵令嬢が買える代物ではないことは見てわかります。僕はあの頃これを身につけていた彼女をよく見ているのですが、これは貴女が与えたのですか。」
「いえ、盗まれたのよ。いつのまにか、知らないうちに。」
ローガンに貰った大切な大切な髪飾り。まさか持っていたのが、カリーナだったなんて。
「まさかカリーナが。」
「いえ、それでですね。ローガン様のプリシラ様に対する溺愛加減は、あの頃学園に居た者は皆知っています。どういう状況にあろうと、あのローガン様がプリシラ様にあげたアクセサリーを、プリシラ様以外につけられるのは耐えられないわけです。そうなると、どうなると思います?」
「彼なら何とか取り返そうとするでしょうね。」
ええ。ローガンはそういう人です。だから、何だと言うのか。話の方向が尚わからなくて、プリシラは混乱する。
「僕、わかってしまったんです。」
彼は目をキラキラと輝かせて、プリシラに衝撃の一言を発した。
「カリーナ嬢は、一度殺されています。今のカリーナ嬢は偽物です。」
だから、何。プリシラはそう言いたいのを我慢して、彼に続きを促した。
彼がいなくなる間際に、カリーナに籠絡され、人生を変えた男が一人、ローガンではなく、プリシラに会いに来た。
彼はカリーナに婚約を潰され、婚約破棄の慰謝料にて退学を余儀なくされた伯爵家の元嫡男だ。彼は平民となり、今は借金返済の為働いているらしいが、プリシラとは正直話したことはないし、何の用事があるのか分からなかった。
久しぶりに二人きりのデートの予定だったのに、とローガンは席を立とうとはせずに、恨めしそうにこちらを見ている。
男は、カリーナがローガンの屋敷で働いていたことを聞きつけ、彼女がどうしているか聞きに来たようだ。
「もう、ローガンの屋敷にはいないけれど。」
「ああ、そうなんですね。今更何の用か聞かれても困るのですけど、実は彼女に返さなければならない物がありまして。」
彼の取り出したものは、プリシラが以前無くした髪留めだった。
「これはどこで?」
「学園に居た時に一度しか訪れなかった場所なんですが、西階段の奥に小さな庭があったでしょう?
あの入り口の扉の前に落ちていたんです。僕はずっと彼女の動向を振られても尚諦めなくてただ見ていたんですよ。
まあまあ遠目だったので、そこにご令嬢が二人向かうところしか見ていないんですけどね。
結構あの頃は、寝ても覚めても彼女のことばかり考えていたもので、彼女が出て来るのを待っていた訳です。ところが、待っても待っても出てこない。
あの場所は出入り口が一箇所しかありませんからあそこで張っている限り見失うことは無いわけです。」
プリシラは話の方向がわからなくて、首を傾げる。
「いつまで待っても出てこないから会いに行くと、不思議なことに彼女はいませんでした。あったのは、この髪留めだけ。それも落ちていたという感じではなく、置いて行ったようなそんな感じです。」
「一介の男爵令嬢が買える代物ではないことは見てわかります。僕はあの頃これを身につけていた彼女をよく見ているのですが、これは貴女が与えたのですか。」
「いえ、盗まれたのよ。いつのまにか、知らないうちに。」
ローガンに貰った大切な大切な髪飾り。まさか持っていたのが、カリーナだったなんて。
「まさかカリーナが。」
「いえ、それでですね。ローガン様のプリシラ様に対する溺愛加減は、あの頃学園に居た者は皆知っています。どういう状況にあろうと、あのローガン様がプリシラ様にあげたアクセサリーを、プリシラ様以外につけられるのは耐えられないわけです。そうなると、どうなると思います?」
「彼なら何とか取り返そうとするでしょうね。」
ええ。ローガンはそういう人です。だから、何だと言うのか。話の方向が尚わからなくて、プリシラは混乱する。
「僕、わかってしまったんです。」
彼は目をキラキラと輝かせて、プリシラに衝撃の一言を発した。
「カリーナ嬢は、一度殺されています。今のカリーナ嬢は偽物です。」
だから、何。プリシラはそう言いたいのを我慢して、彼に続きを促した。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
必要とされなくても、私はここにいます
あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。
口出ししない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
ただ静かに、そこにいるだけ。
そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。
張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。
何かを勝ち取る物語ではない。
誰かを打ち負かす物語でもない。
それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。
これは、
声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、
何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら
雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」
「え?」
伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。
しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。
その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。
機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。
そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。
しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。
*他サイトでも公開しております。
出会ってはいけなかった恋
しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。
毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。
お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。
だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。
彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。
幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」