私が殺した筈の女

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彼の望み

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「あ、別に脅しとかではありません。お願いはあるのですが。」

いそいそと、どこか嬉しそうな様子で目の前の男はプリシラに一枚の紙を突き付ける。プリシラはそこに書かれているな内容に眉を顰めた。

「あなた方が隠しているかもしれない事実を私に買い取らせていただきたいのです。ええと、わかりにくいですかね。あなた方が、彼女を始末したのなら、私にその栄誉を譲って欲しいのです。いかがでしょうか。」

プリシラは、男がこちらを脅して金銭を要求するのだと思っていたのだが、彼の言い分は反対のようだ。自分が彼女を殺していないものの、殺したことにしたいから、それを黙っていてほしい、と言うことらしい。

「貴方の言っていることがよくわからないのだけど。」
「わかった。いいよ。」

プリシラとローガンの声はほぼ同時に発せられた。いつのまにか近くまで来ていたローガンは、彼の話が分かったらしい。

「君は正直そこまで彼女を愛しているようには見えなかったのだが。」
「ええ、そのつもりだったのですが。彼女が誰かに殺されたかもしれない、と思ったらそれだけでいてもたってもいられなくなりまして。実は心当たりのありそうな方に声をかけておりまして……彼女恨まれていたんですね。皆笑ってお金を受け取っていただけました。好きにすればよい、と。酔狂だな、と。」

皆自分が殺していなくても金は受け取るのだ。カリーナに籠絡された者達は皆金に困っている。なりふり構っていられないのはわかる。

「どこか違和感はあったんです。皆、何か隠しているんだろうな、って。でも、今日あなた方に会って分かりました。ああ、僕はやっと本物に辿り着いたのだと。金額は言い値で払います。足りなければまた働いてお支払いしますので。いかがですか?」

「その前に、貴方もお金はないのではなかった?」

「ああ、ご心配なく。親切な方にいただけたのですよ。いやあ、善行はしておくべきですね。」

「もし、この話を断ったらどうするの?」
「勿論、これらの証拠を持って、警察に駆け込みます。証拠は不十分でもあなた方にとっては醜聞は命取りでは?ああ、あなた方が隠した彼女の埋められた場所もわかっているんですよ。因みに私が殺されたら、それらは警察に渡される準備が整っていますので悪しからず。」

プリシラとローガンは顔を見合わせて、笑ってしまった。

「酔狂ね。好きにしたらいいわ。」

ローガンがサラサラとサインをして、権利を彼に渡すと、彼は嬉しそうに笑って、礼を言った。
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