私は聖女なんかじゃありません

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王子 裏側

信者の暴走 

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*若干気持ち悪い表現があります。

聖教会で、信者の暴走があったと言う報告が城まで上がってきた。聖女が国外に逃げたことが知らされてしまい、信者が不安になっていた所で、どこからともなく現れた魔物により、収拾がつかなくなっている。

どこからともなく現れた魔物は、十中八九量産したものだろうに、よく言う。国王陛下は、聖教会での出来事に動きたくなさそうだったが、恩を売っておけば有事の際に使える駒になるかも、との下心で、暇そうな兵士に、命令している。

イーサンはいなくても、王に仕える屈強な兵士共なら、十分戦えるだろうと、私は指揮を買って出た。単純に聖教会が生んだ魔物を見てみたかった。今司祭様は国を離れていると聞く。ただの神官相手なら、最高権力者は私だ。少し脅してやれば、すぐに話すだろう。司祭の悪どい行いも、神官の腐れきった生活も、実験の内容も、何人殺したのかも。


第二王子は自分は強いと思っていた。魔法は使えるし、普段は兵士を鍛えるために自分の力は隠しているものの、剣だって器用に使いこなしていた。一通り、王になれる教育を受けている。王子の場合、元々の加虐的な性質も相まって、戦場にて、最も近づきたくない男と、称賛を受けている。勿論、背中を預けられない、とも同じ意味で。

兵士の訓練として高みの見物でもよい、と思っていた。今の今までは。たどり着いた王子を待っていたのは静寂。

生きているものが見当たらない。逃げ延びた人間が一人でもいたら、良かったのだが、そうでないことは倒れている人間の数や、血痕を見ればわかる。

短時間で、聖教会の中はもぬけの殻。信者らしき人間がちらほら落ちているものの、人間の一部に見える物も、点々と転がっている。

凄惨な現場に出くわし、声が出ない兵士達。王子は顔を顰めながら、考えていた。化け物を放してここらを一掃したのか、神官のローブさえ見つからないと言うのは、神官が不在だったのか。

魔物の気配すらしないことに、いくつか疑問が押し寄せる。さっき、道すがら聞いた話は果たして本当のことだったのか。本当に信者の暴走なるものは、あったのか。死体を捨てたいがために、聖教会が企てたフェイクなのではないか、と。

倒れているものの中には幼い子供もいる。本来なら、子供は魔物に全て喰らわれるため、骨ぐらいしか残らないはずだ。この子らは実験で、失敗した被害者なのではないか?

実験の内容を知らないことには、滅多なことは言えないが、この村にいた者は、とばっちりだ。

今まで感じなかった大きな気配が近づいてくるのがわかる。血の匂いに釣られてきたようだ。兵士達に緊張が走る。

ただ、あまりにも大きな魔物の登場に時間がとまる。誰かが唾をゴクリと飲み込んだ。



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