私は聖女なんかじゃありません

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懺悔編

ある巫女

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ええ、聖女様が入られる前に私が水晶をあの場所に置きました。何か、変なことですか?なかったと思いますよ。

え?音ですか?何かを落としたような?
誰が言ったのですか?聖女様ですか?
聞いたと、仰ったのですか?

……


あの、司祭様には内緒にしていただきたいのですが。よろしいでしょうか。


はい、確かに私が水晶を落としてしまいました。それによって多少割れ易くはなっていたかもしれません。

でも、触らずに、割ると言うのはやっぱり聖女様なのでは?


ヒビですか?あまりに慌てていたので、わかりません。入っていたかもしれないし…まあ、入っていたのでしょうね。
照明が強く当たっていたこともあって、肉眼では見えなかったと思います。

いえいえ、故意ではありません。ヒビが見えないよう照明を強くするなど、できませんよ。まあ、友人が照明の担当でしたが、そんな不正はしません。


あの…あの水晶っておいくらぐらいするのですか?私は貴族出身ではありますが、本当にお金はないのです。お金がないからこそ働いているわけでして。弁償なんて、とても。

実家に迷惑はかけられません。あの方が聖女で良いじゃありませんか?だって水晶が割れたのですよ。触らずに、手をかざしただけで。聖女の判定の為、割れたのでしたら、弁償する必要はありませんよね。強いて言うならば、聖女様ご自身が、弁償されるべきでは?


あの方は聖女だと困るのですか?名誉あることじゃないですか。王子にプロポーズしてもらえるのですよ。女癖の悪い第二王子であっても、普通の平民ならお会いできるだけで、ありがたいです。


私は聖女様を信じます。それしか術がないのです。私が信じなければ、水晶の謎が残ってしまいます。今頃本当のことを言ってしまえば、私は終わりです。

家も取り潰され、幼い弟妹はどうして生き延びろ、と?私もこの仕事を逃したら、路頭に迷うばかりです。

よろしいじゃ、ありませんか。
新たな聖女が誕生したのです。

喜び合いましょう。




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