私は聖女なんかじゃありません

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懺悔編

ある聖女

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「ええ~!いいな、いいな。素敵。これ。愛の逃避行ってやつ?」
「少しお静かに。今隠れてる自覚ございますか?」
「いいじゃない、ケチねー。久しぶりの司祭様からのお手紙なのよ?しかも、頼み事なのよ?興奮しないわけないじゃない?」
「いえ、だから、あのもう少しだけ、声を小さく…」



騒いでいるのは、ダール国の聖女であるリサ様と従者のビル。ダール国は国が今不安定なので、二つ程国を渡ったフォルシア国に来ているのだが、ダールの隣国の司祭様から久しぶりに手紙が来たのが、何より嬉しくて騒いでいた。

「聖女に限りなく近い平民の女性が、王子と教会の一部から追われてるんですって。助けてあげてほしいって。彼女の近くには精霊と聖獣…本当に聖女に近い存在ね。これ、ほぼ聖女でいいと思うのだけど、まだ覚醒してないみたい。なりたくないのかな。」

「聖女ってなりたくないと拒否できるものなのですか?」
「うーん、知らないけど、強く願うなら、可能らしいわ。お父様によると。」
リサ様は聖女でありながら、ダール国の第三王女。その父なら、国王陛下。

陛下が言うことなら、と国王陛下の性格を知っているビルは納得する。陛下が王女を聖女である以前に溺愛しているのも知っているが、ただの親バカではないと思うからだ。

「それにしても、貴方の弟、相当ヤバいわね。」

そう言われて、柔らかい笑顔で答えたのは、第一王子ジーク本人だった。
弟に毒を盛られ、静養中の彼は、リサとビルを国から逃し、フォルシア国での滞在中護衛をしている。

「あいつは、根っからのクズなんだ。私に彼の考えがわかるわけはないよ。弟は、父に良く似ているし。」

暗に自国の王をクズだと言ってしまっているのだが、彼のそばには彼を諫める者はいない。暗黙の了解だ。

父と弟を倒して、王位に就こうとしているのだから、ある意味反乱分子は彼の方かもしれなかった。

リサはジークのことを気に入っていた。リサも王女なので、腹の探り合いは慣れているが、自分の父以外話が通じないと言う家庭環境は、精神を少しずつ削られていくものだった。

疲れ切っていた頃に、国が不安定になった。父の無事を祈りながら、聖女として王女として生き抜かなければならない。司祭様とジークは削られ続け傷ついた精神を癒してくれた。


私は十分助けて貰ってる。

司祭様の頼みなら聞きましょう。まだ見ぬ彼女にも興味はあるし。ジークの力にもなってあげたい。恩を返す方法はそれしか思いつかないから。



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