私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

ゴツい人は騎士らしい

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急に目線の先に入ってきたゴツい背中に、アーリオはまたも身構える。

次から次に。彼の振る舞いから、騎士であることがわかる。だとしたら彼は王宮からの追っ手で、本来ならこんな風に堂々と割って入らずに、様子見で、混乱に乗じエミリアを攫えばよかった。第二王子の命令ならぱ、アーリオは護衛対象に入らず、むしろ積極的に倒してこいと言われているだろう。後ろに隠したエミリアがアーリオの服を掴む。震えている。アーリオは余計なことを考えるのをやめた。エミリアを守ることに集中しないと。

まずは、このゴツい男は、正義感か何かわからないが、守ってくれようとしているらしい。いまのところは。

だから、とりあえず彼に手を貸して貰ってあの化け物じみた子どもをどうにかしてもらう。それからのことはあとで考えよう。

子供は同時にたくさん現れて、混乱を誘う。「あとでお話があります。」背中越しにゴツい人に話しかけられるが、返事をせずに、向き直る。話をしている余裕はない。

騎士は、流石に強い。あっという間に虫の息になった化け物が、目を離した隙にまた大きくなる。どんなカラクリがあるのか、魔力を持っていない自分にはさっぱりだが、騎士の人は「なるほど…」と呟いており、考えるのはこの人に任せよう、と思った。自分はそんなに器用ではない。エミリアを守ること以外はどうでもよい。

そのうち、ララの力か、チロの力かはわからないが、化け物が倒れて、拘束することができた。全てを引き取ってもらう。

少年は一体何ものか、よくわからない。
まあ、俺が理解できることは最近起きてはいないのだが。

エミリアはすっかり怯えてしまった。ララの力でなんとかならないかな、と思ったが、ララは何か、用事があるらしく、本来の姿に戻ってどこかに消えてしまった。エミリアはチロをブラッシングし続けていて、毛が抜け放題になっていた。

エミリアに聞かせていいか、悩んだものの、知らないうちに聖女と呼ばれ、追いかけられる理由を知りたいだろうと思い、騎士との話し合いの件を伝えた。

エミリアは、自分も聞きたい、と言ったので、約束の場所に行くと、先ほどの騎士だけでなく、明らかに立場が上の誰かがいた。また王族か?身構えるアーリオとエミリアに向けて、その人物は口を開く。

「私が聖女様の元へ、お連れします。」
爽やかな笑顔で、言い切った言葉は、有無を言わさない雰囲気があり、威圧的に聞こえた。

彼の正体は知らない方が良い気がする。
そんな選択肢はないだろうけれど。






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