私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

船は快適

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平民なのに、王族の本気の護衛がついてからは、逆にリラックスしづらいけれど、寝るときに周囲を気にする必要はなくなった。

国をたくさん超えた先の聖女様に会う為、船旅は長くなる。チロを檻から出してブラッシングしてやると、気持ち良さそうに目を閉じた。

アーリオもエミリアも自分では感じることができないが、確かにチロから結界が出てるらしい。深くは聞かないことにするが、マークさんの従者によると、「痛いぐらい、結界の効果は感じる。」らしいので、本当なのだろう。

あの魔族が弾かれた結界を見た目人間のあの従者が感じ取れるのは流石に、嫌な仮説を立ててしまいそうだ。

あの人も魔族ではないよな、と。

彼の佇まいと言い、振る舞いと言い、仮説を答え合わせする勇気はない。きっと瞬殺だろう。

得体の知れない存在を短期間で大量に目にしてると、変に慣れてしまって、こちらに危害がないならいいか、ぐらいに思うのは、危機感がなさすぎるのかな。

魔族に関しては、さっき目の当たりにしたことで、恐れはあるのだが、エミリアにとっては、わかりやすい分、人の目よりは恐ろしくなかった。

期待に満ちた、聖女を見る憧れの目は、本当に怖かったのだ。今でも、聖教会の儀式の場で神官に跪かれた時のことを思い出し、体が震える。

しばらく、その場を離れていたララが帰ってきた。マークさんの国は魔力もほとんどの人がないし、魔法を使うこともないだろうに、妖精や聖女を受け入れることは可能らしい。

マークさんの様子を見ていると、どちらかと言えば、そういう不思議な事象に対して離れる気もなければ、むしろ喜んでいるような気さえする。好きなのだろうか?今も、かえってきたララにお菓子をあげて、甘やかしている。

先ほどのあらぬ疑いをかけてしまった護衛だけが、ララには何も興味を示さなかったことが、余計に目立ち、護衛が外の出身だったことをふまえて歪さを隠し通せずにいた。

先ほどから、マークさんの周りが忙しくなったようだ。エミリアには何の力もないから、たぶん思い込みでしかないのだろうけれど、護衛の人が出て行くたびに、船の中からどんどん人が居なくなっているようだ。どうしてわかるのか、と聞かれてもただなんとなく、と返すしかないが。

エミリアに聖女の才はないが。

なんとなく、当たっているような気がした。
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