私は聖女なんかじゃありません

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休息

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アーリオは、エミリアを連れて、しばしの休息をとることにした。

あんなに強い人がいるのだから、ずっと緊張していたのを少しばかり楽にしておかないと、どこかで倒れてしまう。それが、ピンチの時であったなら、悔やんでも悔みきれない。

エミリアの肩を抱き寄せる。エミリアは俯いている。周りに結界を張って貰っているので、彼らからあまりに離れるのは危険だが、結界内だったらどこで過ごしてもよい。

元々人見知りはあまりしない方である二人でも、普段会うことさえないタイプの人間と獣が目白押しで、正直脳が正常に働くのを拒否している。

「疲れた…」エミリアが顔を上げた。
おでこに唇をつけると、目を細めて、力なく笑う。

聖女と間違えられてから、エミリアはこの力ない笑顔を浮かべることが増えた。
アーリオよりも、エミリアが疲れ切っていることは充分分かっている。

「おやすみ。」
そう言うと、少し間があって、すぐに静かな寝息が聞こえて来て、アーリオ自身も、そのうち寝てしまった。

普段アーリオは夢を見ない。だから、最初これが夢だとはわからなかった。
真っ白な部屋にふわふわの何かがあって、その上にエミリアとアーリオは乗っていたが疲れた体が徐々に癒されて力がみなぎるような感覚があった。

これは、結界の力か、聖獣の力か、それ以外か。何にしてもありがたい。アーリオは自分はそれほどで構わないので、エミリアを癒して貰えるように祈る。

エミリアの苦しげな顔が、すっきりとした顔に変わる。安心したところで、目が覚める。夢の通り、疲れは取れていた。エミリアを見ると、まだすやすや眠っていたが、健やかな顔をしている。

エミリアの心からの笑顔は、全てが終わったら見られるのだろうか。肉体的には守って貰えているものの、心を守ってあげられるのはアーリオだけだと思う。

このおかしな状況は聖女に会えたら変わるのだろうか。アーリオとしては、聖教会と第二王子さえなんとかしてもらえたらあとは何でもよかった。欲を言えば、早く家に帰って、日常を取り戻したい。
些細な夢だが、それを叶えるにはもう少し時間がかかることは理解している。

ため息をついて、もう一度、エミリアを抱き寄せる。アーリオ自身も経験が足りない。自分ではしっかりしているつもりだった。けれど、自分では何の力もなく、ただ側にいることしかできないのは、歯痒い。

エミリアを守りたい。エミリアに対する気持ちがだんだん膨らんでいくのを、止められないでいた。




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