私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

心臓が持たない

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エミリアは起きた時の状況を理解できないでいた。アーリオに抱きしめられていた。心臓がドキドキして、アーリオに気付かれるのが怖い。アーリオはどうかわからないけれど、エミリアは彼に幼馴染以外の感情を持っている。

こんなあり得ない状況で、正気を保っていられたのも彼が一緒にいてくれたからだと思っている。

でも、これは何?何で私抱きしめられているの?

「イチャイチャ してるところ、悪いんだけど、ちょっと来てもらえる?」
護衛の人が現れたのを、こんなに感謝したことはない。アーリオは漸くエミリアを離してくれて、でもしっかりと手は繋いで、移動した。エミリアは恥ずかしさに顔を真っ赤にして、見上げると、アーリオの優しい瞳とぶつかった。

アーリオは幼馴染をただ守ろうとしてくれるだけだ、と思い直す。こちらが勝手に盛り上がってしまっただけ。少し残念ではあるものの、慣れているので、大丈夫。エミリアはそう思った。

呼ばれて、王族の所に顔を出すと、白い犬が人間になっていた。スーツを着ている。目が合うと、謝罪された。

「先ほどは、みっともないところをお見せしまして…」
ひたすら恐縮している。王族の方が認めているのに、ただの平民が許すも許さないもない。本人としても、本意ではないようで、終始恥ずかしそうにしている。

聖女様と会うための段取りを教えてくれるが、今向かっている国に足を踏み入れたことがないため、よくわからない。
不安そうな様子に、王族の方が任せてください、と言う。頷いて、素直に従うしかない。

聖女様は亡命中の為、居場所は隠されている。まっすぐに向かうと、色々危ない為、何人かに分かれて、それぞれに寄り道を挟み、向かうとのこと。私たちは平民だから変装は必要ないのでは?と思うのだが、有無を言わさない圧があり、従うしかなかった。

いつからいたのか、女性が現れた。騎士兼侍女と言われたが、しっくりこない。逆らったら殺されたりします?

エミリアとアーリオは内心怯えながら、あまり彼女を刺激しないようにしようとここに決めた。王族の方たちとは別行動になるため、ほっとしたが、護衛の一番強い人はこちらにつけてくれるらしい。
でも、一緒に行動するわけではなく、何処かから監視、となるらしい。
ララと、チロは勿論このまま一緒に居てくれる。長い旅だと思ったが、色んなことがあって、あっという間に、着いてしまった。ここからは、また陸上で移動する。無事に聖女に会うために気を引き締めていこう、と決意したのだが、護衛の人の一言により、冷や汗を流すのだった。

「では、皆さん、これに乗っていきましょう。」

え、それって、乗れるんでしょうか?
死にませんか?振り落とされませんか?

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