私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

騎士の態度

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目の前に、大きな竜が現れた。踏まれたらひとたまりもないぐらいの大きな竜で、さすがにこの竜なら見つかったところで、追いつくことは困難だし、立ち向かうことすらできないだろう。

「ど、どうやって乗るんですか?」
女性の騎士は、そんなこともわからないのか、と言う態度だったが、手を引いてくれて、ベルトらしき命綱を締めてくれる。平民なら知らなくて当然だから!
アーリオも、見様見真似で、ちゃんと乗り込んだ。もう一度、緩みがないか確認して、騎士は、こちらを一瞥した。
「落ちないようにしっかり捕まっていてください。落ちたら、死にます。貴方方が死ねば、私があの方に叱られます。」
随分あけすけにものを言う人だ。護衛としては優秀なのかもしれないけれど、あまりお近づきにはなりたくない。きっと、あの方を守ると思ったのに、私達のような平民のお守りが嫌なのだろう。
ただ、私達も嫌なら良いです、と振り払えないところがある。申し訳ないけれど、もうしばらくは守って貰いたいので、思うところはあるが、なるべく逆らわないようにしようと、エミリアは思う。

竜は飛び立つ時に、大きな翼を羽ばたかせて、ゆっくり空に上っていく。訓練をうけているのか、乗り心地は良く、これなら何か無い限り、振り落とされないだろう。竜の背に乗るどころか、竜を間近でみるのは初めてなので、触りたくなる。が、急に触って振り落とされてはたまらないので、念のため騎士に聞いてみる。

「あの、竜の体、って触っても良いですか?」
騎士は聞こえなかったのか、無表情だ。
なので、もう少し大きな声で同じ質問をすると、「聞こえてます。」と言う。
返事がなかったので、待っていると、はあと、ため息をついた後、心底嫌そうな顔をして返事する。「ご自由にどうぞ。私はただの護衛なので、あなたの行動を制限する権利などありません。」

エミリアは何故彼女がこんな態度かわかりかねたが、竜に何の影響もないなら良いか、と「はい、わかりました。」と言うのみにして、すべすべの竜の肌触りを楽しんだ。

騎士はそれから振り返らず、こちらとの交流は望んでいないようだったので、こちらだってそれはありがたい、とアーリオと苦笑いを返しあい、肩を竦めた。

竜に乗って飛んだら馬車よりも当然早く、聖女様の隠れ家の近くに着いた。さすがに竜で飛び降りると隠れ家の意味がないので、少し歩く必要がある。竜から降りる時に、お礼を言って竜を撫でると、気持ちよさそうな顔をしてくれたので、さっき感じた護衛の騎士に対するモヤモヤが少しマシになった。


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