私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

聖女とクズ王子の兄

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通された部屋に入ると、見たこともないほど眩い綺麗な人がいた。一目見た瞬間からこの方が聖女だとすぐにわかった。偽物ではなく本当の本物の聖女。身体の力がすっと抜ける。跪き、手を合わせると、聖女様はふふっと小さく笑った。

「お疲れ様、大変だったわね。」
肩に手を置いて労いを口にする聖女様は神々しくて、美しかった。さっきまで心の中にあった少し後ろ暗い気持ちが既に浄化しているのがわかる。

「聖女様。」名前を呼ぶだけで、心が暖かくなる。第二王子との出会いから疲弊していた体が楽になるのが、わかる。隣にいてくれたアーリオも、ほっと息をついたのが、わかる。ああ、助かった。

あの時、アーリオに聖女様に会いに行こうと言われなければ、一生辿り着けなかった。聖女様に会えなかった。

聖女様に肩を抱かれていた。「もう、大丈夫よ。だから、もう泣かないでいいのよ?」エミリアは自分が泣いているのに、気がついた。アーリオが、手を貸してくれて、立ち上がる。周りを見ると、聖女様だけでなく、まあまあの人がいることがわかり、恥ずかしくなった。聖女様の周りの人は、よくある光景なのか、特に気にしている様子はなく、それが恥ずかしさを少し和らげてくれた。

女性騎士の方は見なかった。今馬鹿にされたような顔を見たら、せっかくの癒しがなくなってしまうようで、嫌だった。

聖女の従者さんに、ソファを勧められる。温かいお茶を飲んでじんわりほっこりしていると、ようやく気持ちに余裕が生まれてきた。

見たことの無い美形が姿を現した。多分前からそこにいたと思われるが、気配を綺麗に消していたのだろう。初めてあったにも関わらず、なんとなく、似た人に会ったことがある。それもそのはず、あの元凶と血が繋がっているのか、受ける印象は正反対なのに、面影はしっかりと似ていた。

王族らしい、振る舞いの美しさで、目が釘付けになる。頭を下げるエミリアたちに、苦笑して、頭をあげるように話す。
反対に、頭を下げ、謝罪する。王子がただの平民に、だ。アーリオとともに顔色をなくすエミリアを見て聖女が助け船を出す。

「弟がすまなかった。」
それだけは、どうしても謝りたかったみたいだ。「今後は消して迷惑をかけないと誓う。」第二王子と違い、まともそうに見えるが、相手は王族だ。平民は近づかない方が良い。アーリオは何故か、エミリアを掴んだ腕を離そうとしない。エミリアはアーリオの気持ちがわかるだけに、感謝して、第一王子と距離を取った。
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