私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

会談

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第一王子は、それ以上何も話さなかった。そうしているうちに、船で一緒だった、もう一方の王族ご一行が現れた。エミリア達と異なり、馬車での移動だったので、あと何日かはかかると思っていたから驚いた。きっと他国には知られてはならない移動方法があって、別れたあとに使用したとか、そんなのだろう。どこの王族かはわからないけれど、秘密の魔法とかたくさんあるに違いない。

フォルシア国から聖女を連れて、ジーク王子が元の国へ帰り、司祭様と合流し、最後は、またフォルシアに聖女様が帰ってくることが一つ。エミリア一行が国へ帰るのは、聖女様が戻ってから、と言うのが一つ。そして、聖女様が動くのは極秘なので、その間、聖女様の身代わりとして、エミリアがこの国にいることが一つ。と、どんどん話が進められていく。知らない間に、エミリアが聖女の真似事をしなくてはならないらしいが、隠れているだけで、特に何もないから大丈夫よ、と言う聖女様の言葉で、どうやらやることは確定らしいと気付く。

自国の混乱を鎮めるのに、隣国の聖女が大変な時にわざわざ手伝って貰うのだから、自分だって協力はしたい。でもまた変なことが起きたら?巻き込まれたら?
震えてしまう。アーリオも不安そうにしているが、エミリアの手をギュッと握ってくれた。

メンバー編成としては、聖女様、聖女様の従者の方、ジーク王子、イーサンが先に出る。と、ここで、肝心のイーサンがいないことに気づく。「あれ、そのイーサンさんは?」顔を上げたジーク王子に、ニッコリと圧をかけた笑みを向けられ恐怖に口を噤むと、聖女様が助けてくれた。「ジーク様、エミリアが怖がっているからその気味の悪い笑顔やめて。」
気味の悪いと言われて、王子は圧をかけたものではなくて、苦笑い気味の笑顔をエミリアに向けて、「いや、そんなつもりはなかったけど、すまない。」と言って、謝ってくれた。イーサンとは、理由があって待ち合わせにしていると言う。
またあの笑顔を向けられるのは、嫌なので、それ以上聞くのは諦めた。聞いたところで、理解できないのだし。

「あの、ご存知かどうか、わからないですけど、俺からも質問いいですか?」おずおずと、アーリオが問い掛ける。聖女様が頷いて、話を促す。「司祭様はどちらにいらっしゃるのでしょうか。無事…なのですか?」

アーリオの勘の良さに驚きつつ、頷いて「司祭様は大丈夫よ。」と力強く返す。今一番の危機に晒されているのは、聖女である自分ではなく、司祭様ご本人だ。

聖女達、およびヴェルナー様の当初の目的は、ジークを助けることではなかった。それも間接的にはするつもりだったのだが、急を要したのは、聖教会の中で起きていた暗い実験の解明と、鎮圧だった。聖教会の中に一部過激に正義を謳う者達が現れた。それは司祭様にとっても、ジーク王子にとっても、歓迎できないことだった。

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