私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

聖女の身代わり

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話し合いが終わったら、皆散り散りになるのではなくて、徐に風呂敷みたいな布を広げたと思ったら、ジーク王子と聖女とその従者の方がその場から居なくなっていた。転移魔法と言うのを使用したらしい。

エミリア達の戸惑いを受け流して、ソファーにゆったりと座って寛いでいるのは、あの謎の多い一味で、彼らはここにいてくれるらしい、今は。

お茶を飲んで、ゆっくりしようなどと言われるも、平民が王族と一緒にいて、寛げるわけもない。部屋を移動して、はあ、と息をつくと、エミリアはアーリオと顔を見合わせて、苦笑した。

転移魔法が使えるので、移動自体に時間はかからないにしろ、言われた期間は一週間だ。一週間だけ、聖女の身代わりとして、この国に留まれば、あとは好きにして構わないらしい。

とは言っても、聖女様に無理を言っている国に住んでいるのだから、国民の義務として、やり遂げなければ。

部屋には、アーリオとエミリア、ララ、チロがいて、女性騎士が一緒にこないことが有り難かった。エミリアを守るならチロがいれば良い。変に気を遣ったり、心を抉ってくる相手にそばにいて欲しくはない。

エミリアは、自分がひどく我儘になった気がした。前は同じことがあったとしても、仕方ないと諦めていたのに。最近は余裕がなくて、傲慢な考え方になっているようだ。余裕を持つにはどうしたら良いだろう。チロを撫でて考える。不思議なことに、チロを撫でていると、それだけで、心がすっと、落ち着いてきたのがわかった。聖獣も聖女と同じ働きをすることがわかり、ほっとした。

実は身代わり以前にせっかく会えた聖女様による癒しを、手放さなきゃならないことに若干の不安を感じていたのだ。

でも、エミリアにはチロがいて、エミリアをアーリオを、ララを守ってくれる。だから身代わりだろうが何だろうがやるつもりだ、と思い直した。

部屋が違うので、全部はわからないが、王族の護衛の方達は代わる代わるどこかへ出かけているらしい。情報収集のためだろうか。他に理由があるのかは、わからないが、護衛が一人少ない今、王族の人に何かあれば、私達平民は身体を投げ捨てなければ。などと、考えてしまって、安眠妨害も甚しい、

今まで、死ぬまで一生来ないだろうと思っていたところにいまいることで、ふと怖い考えに取り込まれそうになる。

どちらを選んでも、なるようにしかならない。それは国をでてから、ずっと身に染みてきた感情だった。
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