53 / 53
王子 裏側
残ったもの
しおりを挟む
聖教会の上にいるのは、時代錯誤甚しい老いぼればかりだった。若い人もいるにはいるが、思想が凝り固められ、良し悪しの判断すら自力ではできないものばかり。ある意味で洗脳みたいなものだ。
はじめは誰でも司祭様を敬う気があって、神の言葉を信じていたのに、どこからか、権力闘争や、富、欲に駆られていった。
一因となる王族に属している第一王子は、恥ずかしさを覚える。まさに、聖教会を間違った方向に進ませた、と思い当たることがあるからだ。教会は、貴族にいながら、爵位を継げない者達の救済施設のようになっている。司祭様を慕う者の中には、勿論平民だっているが、それを面白くない、と感じる者は当然いる。
貴族の中には、自分達だけが素晴らしく、他者を顧みないもしくは蔑む者がいる。その多くが聖教会に巣くっている。まともな神経を持つ者達は既に、魔族の贄となってしまっている。
第二王子や、王の亡骸があると言うことは、彼らもその贄の中に放り込まれたのだろう。
第一王子も、国を離れていなければ、真っ先に狙われていたと思う。恐ろしいのは魔族は勿論だが、多分いまだに自分達が何をしでかしているのかわかっていない老人達だ。
老いた体の代わりに若者を使い、魔族を使った気になっているが、贄として捧げたものは自分であるのを理解しない。
一度覚えた贅を、忘れるのは難しい。魔族に対する認識の甘さが国の崩壊を招くのだ。彼らの罪は、その責任をとる術がないことだ。
死ねるなら、まだマシだ。魔族に取り込まれ、意識を刈り取られるのも、まだ良い。最悪なのは、意識がずっとあって、魔族に生きながら食べられる、今の状態ではないのか。
人だったもの、人の形をなさなくても、人である記憶があるのに、人にもう戻れないもの。
彼らは何のために、人でなくなったのか。それをするだけの理由があるのか。もう今ではわからないことだらけだ。
そうまでして欲しがったものは、手に入ったのだろうか。ジークには、そうは見えない。司祭様の素晴らしいところは、司祭様のものだ。誰にも侵されることはなく、触れられもしない。
いつも穏やかなあの人の側にいるぐらいで満足すべきだったのだ。今になってもまだ成り代わりたいと願うのか。
司祭様は綺麗すぎる。存在が、意識が、他の汚い人間達と違いすぎて、絶望せざるを得ない。言いがかりにすぎない、と笑い飛ばすことができないのは、ジークが、司祭様の人となりを知ってしまっているからだ。
はじめは誰でも司祭様を敬う気があって、神の言葉を信じていたのに、どこからか、権力闘争や、富、欲に駆られていった。
一因となる王族に属している第一王子は、恥ずかしさを覚える。まさに、聖教会を間違った方向に進ませた、と思い当たることがあるからだ。教会は、貴族にいながら、爵位を継げない者達の救済施設のようになっている。司祭様を慕う者の中には、勿論平民だっているが、それを面白くない、と感じる者は当然いる。
貴族の中には、自分達だけが素晴らしく、他者を顧みないもしくは蔑む者がいる。その多くが聖教会に巣くっている。まともな神経を持つ者達は既に、魔族の贄となってしまっている。
第二王子や、王の亡骸があると言うことは、彼らもその贄の中に放り込まれたのだろう。
第一王子も、国を離れていなければ、真っ先に狙われていたと思う。恐ろしいのは魔族は勿論だが、多分いまだに自分達が何をしでかしているのかわかっていない老人達だ。
老いた体の代わりに若者を使い、魔族を使った気になっているが、贄として捧げたものは自分であるのを理解しない。
一度覚えた贅を、忘れるのは難しい。魔族に対する認識の甘さが国の崩壊を招くのだ。彼らの罪は、その責任をとる術がないことだ。
死ねるなら、まだマシだ。魔族に取り込まれ、意識を刈り取られるのも、まだ良い。最悪なのは、意識がずっとあって、魔族に生きながら食べられる、今の状態ではないのか。
人だったもの、人の形をなさなくても、人である記憶があるのに、人にもう戻れないもの。
彼らは何のために、人でなくなったのか。それをするだけの理由があるのか。もう今ではわからないことだらけだ。
そうまでして欲しがったものは、手に入ったのだろうか。ジークには、そうは見えない。司祭様の素晴らしいところは、司祭様のものだ。誰にも侵されることはなく、触れられもしない。
いつも穏やかなあの人の側にいるぐらいで満足すべきだったのだ。今になってもまだ成り代わりたいと願うのか。
司祭様は綺麗すぎる。存在が、意識が、他の汚い人間達と違いすぎて、絶望せざるを得ない。言いがかりにすぎない、と笑い飛ばすことができないのは、ジークが、司祭様の人となりを知ってしまっているからだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します
青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。
キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。
結界が消えた王国はいかに?
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる