私は聖女なんかじゃありません

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王子 裏側

残ったもの

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聖教会の上にいるのは、時代錯誤甚しい老いぼればかりだった。若い人もいるにはいるが、思想が凝り固められ、良し悪しの判断すら自力ではできないものばかり。ある意味で洗脳みたいなものだ。

はじめは誰でも司祭様を敬う気があって、神の言葉を信じていたのに、どこからか、権力闘争や、富、欲に駆られていった。

一因となる王族に属している第一王子は、恥ずかしさを覚える。まさに、聖教会を間違った方向に進ませた、と思い当たることがあるからだ。教会は、貴族にいながら、爵位を継げない者達の救済施設のようになっている。司祭様を慕う者の中には、勿論平民だっているが、それを面白くない、と感じる者は当然いる。

貴族の中には、自分達だけが素晴らしく、他者を顧みないもしくは蔑む者がいる。その多くが聖教会に巣くっている。まともな神経を持つ者達は既に、魔族の贄となってしまっている。

第二王子や、王の亡骸があると言うことは、彼らもその贄の中に放り込まれたのだろう。

第一王子も、国を離れていなければ、真っ先に狙われていたと思う。恐ろしいのは魔族は勿論だが、多分いまだに自分達が何をしでかしているのかわかっていない老人達だ。

老いた体の代わりに若者を使い、魔族を使った気になっているが、贄として捧げたものは自分であるのを理解しない。

一度覚えた贅を、忘れるのは難しい。魔族に対する認識の甘さが国の崩壊を招くのだ。彼らの罪は、その責任をとる術がないことだ。

死ねるなら、まだマシだ。魔族に取り込まれ、意識を刈り取られるのも、まだ良い。最悪なのは、意識がずっとあって、魔族に生きながら食べられる、今の状態ではないのか。

人だったもの、人の形をなさなくても、人である記憶があるのに、人にもう戻れないもの。

彼らは何のために、人でなくなったのか。それをするだけの理由があるのか。もう今ではわからないことだらけだ。

そうまでして欲しがったものは、手に入ったのだろうか。ジークには、そうは見えない。司祭様の素晴らしいところは、司祭様のものだ。誰にも侵されることはなく、触れられもしない。

いつも穏やかなあの人の側にいるぐらいで満足すべきだったのだ。今になってもまだ成り代わりたいと願うのか。

司祭様は綺麗すぎる。存在が、意識が、他の汚い人間達と違いすぎて、絶望せざるを得ない。言いがかりにすぎない、と笑い飛ばすことができないのは、ジークが、司祭様の人となりを知ってしまっているからだ。


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