私は聖女なんかじゃありません

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王子 裏側

脳筋

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「そうは言っても、聖女様は人間に効く魔法持ってませんよね?」
「私じゃないわ。彼がいれば大丈夫よ!」
「僭越ながら、尽力致します。」
そう言うと、聖女様の真後ろにいた従者の彼がこちらの指示を待つことなく、いきなりドカンと、魔法を繰り出した。

驚いたのは、神官ばかりではない。その場にいたジークも、あまりの展開にのけぞった。作戦とか立てましたよね、さっき。全然違いますよね?

非難めいた眼差しに、動じることなく、笑顔で返す従者は、さすが脳筋の聖女の護衛でもある。

「さっきの打ち合わせの意味!」
聖女はうーん、と考えるような仕草をして、「まあ、それはそれ、これはこれよ。」と変なことを言いだしている。

「敵を見過ごすわけにはいかないでしょう?」そう言いながらも、ドカンドカンと魔法を放つ。

聖教会の神官は主に貴族だが、魔法を使える者は一握りだ。集まっている神官には魔法が使えない者がほとんどだったらしく、従者の勢いに驚き派手に転んで動かなくなった。呆れてものが言えない。隣国のお騒がせ姫は、とてつもない。これだけ強いなら、司祭様をお守りすることぐらい簡単だろう。

「あ、ジーク、止まって。」神官達が倒れている部屋に向かうジークを聖女が止める。「何か、いる。」

何か、とは何。答えはすぐわかる。姿はただの神官だが、あれは人間ではない。不自然に首が回りきっている。呻き声が聞こえる。聖女が手をかざす。魔物が相手なら聖女の魔法が有効だが、ジークは嫌な予感がした。聖女を止める。今圧倒的に役に立っていないのは自分であり、聖女様にも従者にも戦闘力は及ばないのだから、何か仕掛けがあるなら、一番弱い者がかからなければいけない。

神官らしきものは、ジークに目を向けると、「この出来損ないめが!」と宣った。どうやら、魔力を吸い取ろうとしていたようだ。「すまない。」咄嗟に普通に謝ってしまった。謝罪ついでに、剣を使って、倒すと、呻き声しか聞こえなくなった。魔力を持たないと言うことは他を強くすれば良い。

そのことに気づいたら、弟も、怖くはなくなった。ジークは第二王子より魔法は使えなかったが、その分他のことを頑張った。王はそれでも渋ってはいたが、周りは既に第一王子を認めていた。
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