私は聖女なんかじゃありません

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王子 裏側

実態

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地下にはいくつか部屋があって、ジーク自身そのことに驚いていた。自国でありながら、知らないことが多い。聖教会の幹部は貴族で、神官として毎回入ってくるのも大多数は貴族だ。聖教会は大きな組織で、規模が大きくなればなるほど、統制が難しくなる。貴族の中には、正しく生きているものと、崖っぷちにいつまでも必死に縋り付くものと、様々な仮面をかぶることで、自分から目を背けやりたい放題するものがいる。

聖教会にもその風潮は根付いているらしい。幹部に居座るのが、貴族にうまれても爵位を継げない者達ばかりなのだから、当然のことだ。爵位を継ごうと思えば躊躇うことも聖教会に居座る者達は、関係ないとばかり、踏みにじっていく。

何かを隠そうと思えば、隠せてしまう。王族に生まれたジークにはそれが痛いほどわかる。自分達がいかに不都合なことを隠してきたか。

部屋には棺があったが中は空っぽだった。「うっ…」棺の中の匂いで、吐きそうになる。さっきまで死体が入っていたのかもしれない。普段なら、誰かはいるはずだが、生きている人の気配はない。

奥へ更に続く階段を降りると、更に異様な光景が目に入ってくる。

棺の中身であろう人型の何かが蠢いている。人間としての動きではない。操り人形のように、見えない糸によって、行動を支配された人形のように。

皆こちらを見ない。気づいていないのかもしれない。気づかれた方がよいのか、咄嗟には答えが出ない。一気に襲ってくるなら厄介だな、と考えていると、隣で聖女が何か唱えた。狭い建物内だが、一気に浄化していく様子を見て、凄いな、と改めて感心した。

「あ、やっつけてしまって、良かったのよね?」
呑気な声を聞くと、怒りで沸騰しそうだった頭がすっと冷めたようだった。

「勿論。」
「良かった。よけいなことをしたかと思ったわ。」
聖女がいるのだ。焦ることも慌てることもない。少し気負いすぎていた。自分にできることしか、できないのだから。

「助かりました。ありがとうございます。」
素直にお礼を言うと、聖女が得意げに笑った。

先を進むと、今度は人がいるのがわかった。神官が何人かいるが、何かをたくらんでいるのか、話し合っている。もう少し大きな声で話してくれさえしたら聞こえるのに、全く聞こえない。
どうやら、あれが諸悪の根源のようだ。

もう少し近づこうとするが、ここが限界のようだ。

「やっつけちゃえば良いんじゃない?」
呑気な声がまた聞こえる。

なんで、聖女様が脳筋なんですか?




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