50 / 53
王子 裏側
変化
しおりを挟む
エミリア達には、一週間と期間を言い、そのうちに帰るつもりだった。久々に見る自国に絶句する。何だこれは……
人間などいなかったような、錯覚に陥る。果たして生きている人間はいるのか。とりあえず、聖女様に全体的に結界を張ってもらう。うちのような小さい国なら結界を張っただけで、低位の魔物は存在を維持できなくなるらしい。だから、なのか。低位の魔物が消えてなくなり、生命を維持できなくなった残骸があちらこちらにある。元は子供であったのだろう。朽ち果てたそれは、おもちゃのように捨てられていた。人間ではなく、本当におもちゃならよかったのに。魔物にこんな所業ができるわけはない。
このおぞましいものを作り上げるのが、聖教会の実態だと言うのか。ジーク王子は拳を握りしめる。弟は父は何をしているのか、王宮で踏ん反り返るしかできない父と、引っ掻き回すのが大好きな弟。
まさか、関係している訳ではあるまい。ジークが怒りをあらわにしている中、リサは張った結界の中で不自然に動く生命体を発見していた。
「行きたくないわー。」嫌な予感しかしない。リサは正直だった。いつもならリサを宥めるビルも今回に至っては、何も言わなかった。ジークがひとしきり自分を責め、落ち着いた頃には、行かざるを得なかったのだ。
たどり着いた先には、王子の体があった。触ると既に冷たくなっていて、なくなっていることがわかった。ジークは、ずっと殺したいと思っていた男なのに、見た時に、気持ち悪くなって、吐いてしまった。第二王子の体には、魔物に襲われた跡がありありと残っていた。どうやらどこかで殺されて、ここまで連れてこられたようだった。
どうして、ここに放置したのか、わからないでいると、その答えはすぐにわかることとなった。
聖女の従者であるビルが詠唱する。魔法で隠されていた扉が現れた。地下に続いているらしい。聖教会が隠し持っていると言われていた研究施設への入り口だろうか。狭いところに入り込んで殺されたら、と考えるだけで足が竦んでしまう。王子として情けない。でも、これは私が逃げ続けた結果なのだから、ちゃんと自分の手で決着をつけなきゃいけない。
聖女とビルが後から来る。イーサンは念の為、地上に残ってもらう。何かあってこちらが全滅してもイーサンならこの国を譲ることが出来る。それだけ信頼の厚い部下をみすみす殺してなるものか。
人間などいなかったような、錯覚に陥る。果たして生きている人間はいるのか。とりあえず、聖女様に全体的に結界を張ってもらう。うちのような小さい国なら結界を張っただけで、低位の魔物は存在を維持できなくなるらしい。だから、なのか。低位の魔物が消えてなくなり、生命を維持できなくなった残骸があちらこちらにある。元は子供であったのだろう。朽ち果てたそれは、おもちゃのように捨てられていた。人間ではなく、本当におもちゃならよかったのに。魔物にこんな所業ができるわけはない。
このおぞましいものを作り上げるのが、聖教会の実態だと言うのか。ジーク王子は拳を握りしめる。弟は父は何をしているのか、王宮で踏ん反り返るしかできない父と、引っ掻き回すのが大好きな弟。
まさか、関係している訳ではあるまい。ジークが怒りをあらわにしている中、リサは張った結界の中で不自然に動く生命体を発見していた。
「行きたくないわー。」嫌な予感しかしない。リサは正直だった。いつもならリサを宥めるビルも今回に至っては、何も言わなかった。ジークがひとしきり自分を責め、落ち着いた頃には、行かざるを得なかったのだ。
たどり着いた先には、王子の体があった。触ると既に冷たくなっていて、なくなっていることがわかった。ジークは、ずっと殺したいと思っていた男なのに、見た時に、気持ち悪くなって、吐いてしまった。第二王子の体には、魔物に襲われた跡がありありと残っていた。どうやらどこかで殺されて、ここまで連れてこられたようだった。
どうして、ここに放置したのか、わからないでいると、その答えはすぐにわかることとなった。
聖女の従者であるビルが詠唱する。魔法で隠されていた扉が現れた。地下に続いているらしい。聖教会が隠し持っていると言われていた研究施設への入り口だろうか。狭いところに入り込んで殺されたら、と考えるだけで足が竦んでしまう。王子として情けない。でも、これは私が逃げ続けた結果なのだから、ちゃんと自分の手で決着をつけなきゃいけない。
聖女とビルが後から来る。イーサンは念の為、地上に残ってもらう。何かあってこちらが全滅してもイーサンならこの国を譲ることが出来る。それだけ信頼の厚い部下をみすみす殺してなるものか。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します
青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。
キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。
結界が消えた王国はいかに?
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる