私は聖女なんかじゃありません

mios

文字の大きさ
49 / 53
王子 裏側

脱出

しおりを挟む
聖女様とその従者を連れて、ジーク第一王子はフォルシアの隠れ家を飛び出した。最初はどうやって脱出しようかと考え悩んだが、ヴェルナーのおかげで、魔法陣で一気に転移出来た。ヴェルナーは旧友の叔父なのだが、旧友同様頼りになる人だ。

ジークは、長く帰っていない自国がどのようになっているか知らない。王位継承のいざこざで、毒を盛られてから静養と称し引き篭もり、国外へと逃げていたから。元は命の危機から逃げるつもりだったが、いつからか、自国の問題を見ないようにすることで精神的にも自国から離れていった。

ある意味、国に留まって、やりたい放題していた弟の方がよっぽど自国のことを考えていたのではないかと思う。

ジーク達は、ヴェルナーの従者が行きに撒いた魔法陣を渡って、イーサンとの待ち合わせ場所にたどり着いた。こんなに早く着けるなんて、凄いと素直に感動するのと同時に、あの従者には、ヴェルナーには逆らわないようにしようと改めて思う。

ジークと聖女と、聖女の従者がどれくらい動けるかはわからないが、騎士団を率いるイーサンがいれば、弟が相手でも、聖教会の一部が相手でも不安はない。足手纏いにだけはならないようにしないと。自分の真価は、この争いを鎮めた後にある。自分が一番役に立たないのに、自分が死ねば聖女様達を危険に晒すなんてどんな爆弾だ。とりあえず倒すのは弟と王で、聖教会は一旦聖女様に任せよう。そして、最後に司祭様をお助けする。そうすれば万が一、自分が命を落としたとしても、司祭様がトップになって国は存続していける。

エミリアやアーリオのような平民を他国からの侵略などに怯えさせることのないように。やり方は違えど、司祭様をトップにすると言うのは、聖教会の一部と同じ結果を求めることになる。彼らと手は組まないが、なんとか納得してもらえないか考える。

ずっと黙っているジークをイーサンは見つめているが、特に声をかけることはない。これからの段取りを考えているのだと思っていたから。自分がジークのためにできること。まず、王と第二王子の排除。王は大したことないが、第二王子の魔法は厄介だ。魔法を封じることさえできたら、たぶん拘束ぐらいは可能だ。ジークは魔法が効かないから、安心だが、自分には効く。もしかしたら、止めは王子のお手を借りることになるかもしれない。まあ、本来はそうなることが理想的だ。自分の居場所は自分で確保してもらわなければ。それが一国の主の最初の仕事になる筈だ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

処理中です...