公爵令嬢は被害者です

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二人目の証言 パーニー子爵令嬢

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パーニー子爵家が娘、カレンと申します。
王妃様主催のお茶会など一生縁が無いと思っておりました。それもこれも第一王子のクレイグ様の恋人が、元平民の子爵令嬢だったからです。同じ子爵令嬢と言いましても、一緒にされたくはない、と言うのが、正直なところです。

私も、貴族とは名ばかりのほぼ平民のような生活を送っておりますので、わかるのですが、彼女は、平民と言うよりは、言い方は悪いですが、娼婦のような方です。

今日のドレス、ご覧になられました?真っ赤なイブニングドレスですわ。胸のあたりがぱっくり開いて、足元には深すぎる切り込みの入った。清楚さのかけらもないあの方にお似合いのドレスでしたわ。

夜会でも目を引きますよね、悪い意味で。それを、昼間のお茶会で。度胸ありますよね。本当に感心します。そもそもあのリリア・アーレン公爵令嬢の婚約者を誑かすのですから度胸は人一倍でしょうね。

彼女の振る舞いのおかげで、子爵令嬢は、軒並み肩身の狭い思いをしていることでしょうね。あら、ごめんなさい。愚痴っぽくなってしまって。

私は職業柄、赤と見ると別のことを連想してしまって、具合が悪くなってしまいます。赤を見ると、どうしても体が危険を察知してしまいまして。疲れてる?そうですわね。今日ですっかり疲れてしまいました。

でも、彼女のおかげで、私はまだマシな方だと思えるようにもなりました。今まで上ばかり見ていて、下を見る余裕はなかったのですわ。

ああ、そうでした。あの、紅茶事件のことでしたね。突然現れたお二人が、私達のテーブルにつくことになって、貧乏くじを、引かされたと、一気にナーバスになりました。

隣には、以前少し話したことのあるハリス男爵令嬢が座っていて、彼女と話して緊張をほぐそうとしていたのに、まさか巻き込まれてしまうだなんて思っても見ませんでした。

皆様、優雅にお茶を楽しむ中、お一人だけガシャガシャと、音を立てていて、もう恥ずかしいったら!

王子殿下はさすが優雅にお茶を飲まれていましたが、彼女の作法には何も言わず、お二人にしかわからない話題で盛り上がっていました。

私達とは元からお話しする気などないのです。王子殿下が話されているのに、別の話題をするわけにもいかず、随分居心地は悪かったです。

お茶の味も、あまり覚えていません。お二人が来られるまでは、どれも美味しくいただいていたのに、香水の匂いが物凄くて、味がわからなかったのです。残念でなりません。

紅茶をかけられた、と急にあの方が喚きはじめて、横にはオロオロしているハリス男爵令嬢が、いて。王子殿下の目が、視線で人を殺せるのでは?と思うほど、鋭く、背筋が凍りました。

でも、おかしな話なんです。紅茶の染みがハリス男爵令嬢の座っている位置から、少し離れているのです。寧ろ、そんなことはあり得ませんが、王子殿下の側から紅茶をかけなければつかない場所なんです。

もしかしたら、そのシミは前からあるもので、彼女は利用されただけでは?と。

紅茶の染みが前からあるものか、今ついたものかよく見たらわかりますもの。そんな筈ありませんわよね。

その後の険悪なムードを、リリア様は一掃してくださりました。可哀想なハリス男爵令嬢は、保護され、紅茶を被った方はドレスを用意され、後には王子殿下と、リリア様です。

私はほっとしてしまって、少し視線を外してしまったのですわ。

だから、バンと音がして、頬を抑え王子殿下を眺めるリリア様を見て、驚いたのです。

まさか、王子殿下が、婚約者を蔑ろにしたばかりか、暴力をふるうなんて、考えられませんでした。

王子殿下は一度では足りなかったのか、もう一度手を振り上げたところで、リリア様の護衛に取り押さえられたのですわ。

その騎士は、確か、ダグラス卿でしたか。リリア様のアーレン公爵家の騎士ですわね。

王妃教育に来られる際にも、ダグラス卿が護衛をされていると、聞きましたわ。王子殿下と一緒にいる際にはにこりともされないリリア様ですが、ダグラス卿とは気を許されているようで、兄のように慕っていらっしゃると聞いたことがあります。

そんな方が護衛など、頼もしいですわね。

え、王子殿下の振り上げた手ですか?左か、右か?

……リリア様が押さえていたのは、左頬ですわね、だから、右手かしら?

……でも自信がないわ。左手だった気もするの。何故かと言うと、マントの紋章が見えた気がして。

王子殿下、マントをお召しになっていたの。珍しいですよね。お茶会でマントだなんて。

で、マントなら、左側に座っていた私達には、左手をあげないと、マントの紋章は見えないでしょう?

だから、一回目はわからないけれど、二回目にあげた手は左手だったと思います。リリア様の押さえていたのは確かに左頬でしたから、一度目は右手だと思います。

え。マントに紋章はついていない?では見間違いですわね。何と見間違えたのかしら。

これで、貴方の疑問は晴れたかしら。お役に立てたなら嬉しいのだけれど。

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