公爵令嬢は被害者です

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三人目の証言 ハリス男爵令嬢

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信じてください。私、私本当に紅茶をかけたりしていません!本当の本当の本当にです。

だって、あんな場所、私がかけるには、遠すぎます。それに、あの方の足にまでたっぷりと紅茶ポットの中身をぶちまけないと、あんな染みはできません。

ドレスの染み、ご覧になりました?見ていただいたなら、私の言っている意味がわかると思います。

私、最近珍しい布地などに触れる機会がありまして、赤いドレスの布地とは少し違うのですが、あの染みは昨日今日付いたものではないように思います。年季の入った染みと言いましょうか。

あのドレスだって、今の流行りのスタイルとは異なっておりましたもの。大方、私達の親の世代の、中古品ではないでしょうか。きっと中古と言えど、一度しか着ていない、高位貴族の寄付されたドレスではないでしょうか。

ああ、私の商会でしたら、今の時代風にリメイクしますのに……




こんなことになるなら、父の言う通り、お断りすれば良かったのですわ。王妃様主催のお茶会など、地方の男爵令嬢は参加できませんし、物珍しさに訪れてみたら、巻き込まれてしまって。

夢なんて見るものではありませんでした。

あの、完璧と謳われるリリア・アーレン公爵令嬢を一目見たかったのですわ。精霊王に愛されたご令嬢として幼少期から有名でしたもの。王都周辺にお住まいの方々と違い、地方に住んでいる者は、王都の夜会に出るのも泊まりがけで、時間もお金もかかります。しかも、その間、命までかけなければならない状況もあって、大変なのです。

そして、ようやく着いたお茶会で冤罪をかけられるなんて、私が何をしたと言うのですか。

あの、第一王子殿下の隣にピッタリと張り付いていらした女性は、どなたなんでしょう。
ご挨拶はなく、目下の者から挨拶するわけにもいかず、未だにお名前もわからないのです。

え?王子殿下の、恋人ですか?ごめんなさい。意味が、わからないのですが、王子殿下には、リリア様が婚約者としていらっしゃるのでは、ありませんでしたか?

いや、あれは第二王子殿下でしたっけ?リリア様と親しい様子なのは、第二王子殿下でしたわね。そうでしたわ。私、地方に住んでいますからその辺りが有耶無耶で、申し訳ありません。

それにしても、謎ですわね。第二王子殿下にはリリア様。第一王子殿下には、あの方でしょう?立太子もまだですのに、これは勝負有りですわね。どちらが、王太子に選ばれるかは一目瞭然ですもの。

え?やはり、第一王子殿下がリリア様の婚約者ですって?

私の頭の理解できる範疇を超えています。第一王子殿下は、何か弱みでも握られているのですか?駄目だわ、私混乱してしまって。ああ、あの日見たことでしたわね。

私は、その、あの女性に言いがかりをつけられて震えていましたら、リリア様に助けていただきました。

その後は、彼女がリリア様の用意された替えのドレスに着替えるまで、別室にて休んでいました。彼女もそうですが、王子殿下に睨まれてしまって震えが止まらなくなりまして、気を使っていただきました。

リリア様は私に謝ってくださいました。リリア様のせいではないのに。

「こちらは私に任せて、ゆっくりしてくださいね。巻き込んでしまい、申し訳ないわ。」


リリア様に会えただけでも、有難いのに、謝って下さるなんて。近くでみるリリア様の髪の毛は、本当にツヤツヤしていて美しく、何のシャンプーを使っているのかしら。お辞儀をする角度も完璧で、とても芳しい香りがしたのですわ。あの香りは控えめで高貴で、リリア様にピッタリでしたわ。その点、先程の言いがかり女とは、雲泥の差ですわ。

あの方は……何というか、香水の匂いが強すぎて、鼻がひん曲がりそうになるのです。だから、せっかくの紅茶の香りが、よくわからなくなってしまって、楽しみにしていただけに、とても残念でした。

後で、別室でいただいた紅茶は、種類が少し違うのか、香りが強めで、美味しかったですわ。やはり、王宮ですから、地方ではお目にかかれない、最高級の紅茶なのですわ。

おいしかったから買って帰りたくとも、高くて手が出ないでしょうね。今回のお茶会で覚えているのは、あの方と、王子殿下とリリア様だけですので、嫌な思い出は記憶から消してしまって、リリア様だけを思い出すことにしますわ。

王子殿下を見た最後ですか?ええと、私随分と長い間睨まれておりまして、ずっと下を向いておりましたので、正直覚えておりません。

同じテーブルには、パーニー子爵家のカレン様がいらっしゃいました。ええ、前にも何度か話したことがあります。他に知り合いは……先程も話しました通り、地方から来ておりまして、私自身、王都の貴族子女の通う学園にも入っていませんので、知り合いといわれましても……まあ、何人か、仕事の関係で話したことのある方はいたのではないかな、と思います。

ただ緊張していたのと、絡まれてしまったことで、頭が真っ白になりまして、全く思い出せないのです。

お名前を教えていただければ、少し確認をして、リストをお渡しすることは可能です。





うちの商会をご存知なんですか?嬉しいです。そちらの商品はうちのエスター商会の目玉商品ですわ。

王都に一軒だけありますの。うちの商会の支店が。そちらでは、その商品だけを扱っておりますが、他にもまだまだいい商品はございますのよ。

こちら、商品のカタログになりますので、お渡ししておきますわね。
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