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四人目の証言 給仕担当 ダニエル
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はい。給仕担当 ダニエルと申します。当日、王子殿下がいらっしゃった辺りの給仕をしておりました。
あちらは、王妃様のお茶会が初めてご参加の方々がいらっしゃって、緊張されているだろうということで、比較的人相の良い私が選ばれたとのことです。
……初めて、と言うと、実は私もなのですが、その初々しさが良かったのかもしれません。
貴方も聞いていらっしゃると思うのですが、王子殿下と、お連れの方は今回、お呼びしておりません。ですから、あれは予定外でした。
王妃様主催のお茶会でしたが、今回は王妃様だけでなく、第一王子殿下の婚約者であるリリア・アーレン公爵令嬢のために開催されたものです。
時期王妃として、社交界を牽引する方々を招く、と言う趣旨でした。ですから、今回初めての方々、私の担当の方々は、リリア様直々に縁を繋ごうとされた方々で、身分の垣根を越え、そう言う意味では、実力のある方達といえます。
今回、気の毒にも巻き込まれてしまったハリス男爵令嬢は、かのエスター商会を経営されておりますし、パーニー子爵家も医療分野で目覚ましい功績をあげています。ご令嬢も聡明な方で、リリア様が目をつけられたとのことでした。
実は、私普段は別の仕事をしておりまして、本日は人手が足りないと言うことで、お手伝いに来たんですよ。はい、私は元々の給仕担当ではございません。
勿論、教育は受けましたよ。研修期間を設けて下さいましたので、それはもう、厳しい研修を。
普段の仕事ですか?芋を剥いています。芋です。芋の皮をひたすらに剥くと言う仕事です。まあ、芋だけでなく、野菜全般は扱ってますが。
厨房の隅で芋を剥いているだけの、卑小な存在の私に、リリア・アーレン公爵令嬢はお優しく……え?勿論です。何度か声をかけていただいて。
いえ、あの、そんな大した内容ではありません。野菜の知られていない豆知識とかですかね。私、実家は農業を営んでおりまして、その話とか、どんな話でも、興味深く聞いてくださるのでついつい話し過ぎてしまうのです。
王子殿下ですか……お見かけしたことはあります。勿論、王宮内では。ただ、接触したことはありません。リリア様の場合、あちらから声をかけていただいたので、ようやく話せたのです。私からなんて、とてもとても。
あ、あの日の話でしたね。王子殿下の様子ですか。申し訳ありません。全く覚えておりません。あの、お連れの方でしたら、少しはわかるのですが。王子殿下につきましては、全く。
お連れの方ですが、身につけていらっしゃった宝石に、見覚えがありまして、いや、これは言わない方が良いことかもしれません。
見間違いの可能性もありますし……でも、リリア様の為ですものね。
あの宝石は、以前リリア様から見せていただいたことのある、まだ市場には出回っていない希少なものです。
宝石の違いなど、私にはわかりませんが、そんな素人でもわかるぐらい価値のある宝石を、どうして、彼女が持っているのか。
邪推にはなりますが、王子殿下がリリア様から奪ったか、盗んだとしか思えなくて……あ、これ不敬罪になりますか?
大丈夫?あ、良かった。
あの、疑問なのですが、第一王子だから王太子と言うわけではありませんよね。
良かった……あの方が王になられると大変ですものね。流石に今のは不敬罪ですか?
いや、だって思うのですよ。私みたいな存在でも親の背中って嫌でも見えるじゃないですか。あんなに立派な背中が身近にあって、支えてくれる完璧な婚約者がいて、王子殿下がああなっているのが、全く意味が分からなくて。
誰もが思っているんじゃないですか?皆リリア様の為なら、一緒に国を盛り上げていきたいけれど、あの王子の為には働きたくない、って。
これは……不敬ではなく、真実ですか。貴方も言いますねぇ。
貴方は、どちらの……ああ、そうでしたか。貴方は、言っていいんじゃないですか。寧ろ、こんな調査など、早く切り上げて、さっさと罪に問いたいのでは?
まあ、でもそうですね。あの方が無罪を主張するなんて、思いませんでしたものね。あれだけたくさんの人間の前で、愚行を何度も見せつけておいて。無罪ですって。
あはははは。
貴方、実は死ぬほどキレてるんじゃないですか。怖いですよ。
けれど、すみません。今ので凄く安心しました。リリア様の側に、ダグラス様や貴方のような方が、ちゃんと寄り添っていらっしゃるのですから。
リリア様は幸せにならないと。素敵な方ですからね。
え?嫌だなぁ。私は彼女をどうこうできる立場にありませんよ。貴方ならわかるでしょう?
その目、怖いのでやめて下さい。こう見えて、私は貴方を応援しているのですよ。
そうですね。私は元々この国の人間ではありませんから、この国がどうなろうと、関係はないのです。
ただ、念の為、最後を見届けたい気持ちはありますよ。任務?何のことですか。
貴方、腹芸苦手でしょう。思っていることが、全て顔に出ていますよ。
まあ、そこが、好かれる決め手ですかねぇ。
あちらは、王妃様のお茶会が初めてご参加の方々がいらっしゃって、緊張されているだろうということで、比較的人相の良い私が選ばれたとのことです。
……初めて、と言うと、実は私もなのですが、その初々しさが良かったのかもしれません。
貴方も聞いていらっしゃると思うのですが、王子殿下と、お連れの方は今回、お呼びしておりません。ですから、あれは予定外でした。
王妃様主催のお茶会でしたが、今回は王妃様だけでなく、第一王子殿下の婚約者であるリリア・アーレン公爵令嬢のために開催されたものです。
時期王妃として、社交界を牽引する方々を招く、と言う趣旨でした。ですから、今回初めての方々、私の担当の方々は、リリア様直々に縁を繋ごうとされた方々で、身分の垣根を越え、そう言う意味では、実力のある方達といえます。
今回、気の毒にも巻き込まれてしまったハリス男爵令嬢は、かのエスター商会を経営されておりますし、パーニー子爵家も医療分野で目覚ましい功績をあげています。ご令嬢も聡明な方で、リリア様が目をつけられたとのことでした。
実は、私普段は別の仕事をしておりまして、本日は人手が足りないと言うことで、お手伝いに来たんですよ。はい、私は元々の給仕担当ではございません。
勿論、教育は受けましたよ。研修期間を設けて下さいましたので、それはもう、厳しい研修を。
普段の仕事ですか?芋を剥いています。芋です。芋の皮をひたすらに剥くと言う仕事です。まあ、芋だけでなく、野菜全般は扱ってますが。
厨房の隅で芋を剥いているだけの、卑小な存在の私に、リリア・アーレン公爵令嬢はお優しく……え?勿論です。何度か声をかけていただいて。
いえ、あの、そんな大した内容ではありません。野菜の知られていない豆知識とかですかね。私、実家は農業を営んでおりまして、その話とか、どんな話でも、興味深く聞いてくださるのでついつい話し過ぎてしまうのです。
王子殿下ですか……お見かけしたことはあります。勿論、王宮内では。ただ、接触したことはありません。リリア様の場合、あちらから声をかけていただいたので、ようやく話せたのです。私からなんて、とてもとても。
あ、あの日の話でしたね。王子殿下の様子ですか。申し訳ありません。全く覚えておりません。あの、お連れの方でしたら、少しはわかるのですが。王子殿下につきましては、全く。
お連れの方ですが、身につけていらっしゃった宝石に、見覚えがありまして、いや、これは言わない方が良いことかもしれません。
見間違いの可能性もありますし……でも、リリア様の為ですものね。
あの宝石は、以前リリア様から見せていただいたことのある、まだ市場には出回っていない希少なものです。
宝石の違いなど、私にはわかりませんが、そんな素人でもわかるぐらい価値のある宝石を、どうして、彼女が持っているのか。
邪推にはなりますが、王子殿下がリリア様から奪ったか、盗んだとしか思えなくて……あ、これ不敬罪になりますか?
大丈夫?あ、良かった。
あの、疑問なのですが、第一王子だから王太子と言うわけではありませんよね。
良かった……あの方が王になられると大変ですものね。流石に今のは不敬罪ですか?
いや、だって思うのですよ。私みたいな存在でも親の背中って嫌でも見えるじゃないですか。あんなに立派な背中が身近にあって、支えてくれる完璧な婚約者がいて、王子殿下がああなっているのが、全く意味が分からなくて。
誰もが思っているんじゃないですか?皆リリア様の為なら、一緒に国を盛り上げていきたいけれど、あの王子の為には働きたくない、って。
これは……不敬ではなく、真実ですか。貴方も言いますねぇ。
貴方は、どちらの……ああ、そうでしたか。貴方は、言っていいんじゃないですか。寧ろ、こんな調査など、早く切り上げて、さっさと罪に問いたいのでは?
まあ、でもそうですね。あの方が無罪を主張するなんて、思いませんでしたものね。あれだけたくさんの人間の前で、愚行を何度も見せつけておいて。無罪ですって。
あはははは。
貴方、実は死ぬほどキレてるんじゃないですか。怖いですよ。
けれど、すみません。今ので凄く安心しました。リリア様の側に、ダグラス様や貴方のような方が、ちゃんと寄り添っていらっしゃるのですから。
リリア様は幸せにならないと。素敵な方ですからね。
え?嫌だなぁ。私は彼女をどうこうできる立場にありませんよ。貴方ならわかるでしょう?
その目、怖いのでやめて下さい。こう見えて、私は貴方を応援しているのですよ。
そうですね。私は元々この国の人間ではありませんから、この国がどうなろうと、関係はないのです。
ただ、念の為、最後を見届けたい気持ちはありますよ。任務?何のことですか。
貴方、腹芸苦手でしょう。思っていることが、全て顔に出ていますよ。
まあ、そこが、好かれる決め手ですかねぇ。
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