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男爵家の侍女ナディア
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愛する人が王子から男爵になった。自分の身分を考えると、それは決して悲しいことではなかった。あのまま彼が王子のままならば没落貴族の娘でしかなかった自分がお側に居られるはずもない。
伯爵令嬢の姉の方は、頭が弱くて有名だった。彼女は自分にとても自信があって、周りの男性を次々と攻略していったが、実は違う。彼女が王子を籠絡して彼の地位を剥奪させるように此方が仕掛けたのである。
第一王子には公爵家のご令嬢が絶対的な婚約者としてあてがわれていて、その婚約をなくすためにも伯爵令嬢には頑張ってもらう必要があった。
案の定、彼は一代限りの男爵に収まった。妻となった女がその地位に満足しないことはわかっている。此方が何かを仕掛けなくとも勝手に身を滅ぼしてくれるだろうとは思っていた。
一応彼の娘となっているモニカは彼の血を引いていない。あの女の数いた愛人の一人に似過ぎている。娘はずっと社交界に出たがっていたけれど、あの顔を見せられると、周りは皆すぐに真相に気づくだろう。
ただでさえ、評判が地に落ちた男爵家が再起不能になるのは忍びない。
公爵家と事を構え、選んだ妻と結婚する頃には二人の間の愛は消えかかっていた。働きもしない男爵夫人の代わりに彼に寄り添って夫人のお詫びにと執務を手伝っていれば此方を覚えてもいない彼は素直にお礼を言い、心を開いてくれた。
彼は夫人を選んだ事を後悔していた。そして娘を愛することができないことを吐露した。自分の子ではないと言う気持ちが強過ぎてどうにも愛しいと思えないのだと。
夫人が愛人と逢瀬を重ねていることも彼は知った上で放置していた。結婚してからも夫人は実家の伯爵家からお金を融通してもらっては散財していたが、それも代替わりしてからは自由に出来ない。男爵家には信用がない為、ツケ払いなどは出来ない。ならば買い物を自由に行うことも出来ない。夫人が家に寄りつかないのは必然であった。
ナディアは学園時代からの夫人の友人である。ただし、あちらは伯爵令嬢。友人という名のサンドバッグに近い扱いだった。彼女は性格が悪く、プライドが高い。ナディアは彼女に下に見られていたので、何とかその立場を利用して、夫人の侍女になることが出来たのだ。もう一人の侍女は男爵家に来るのも嫌がっていたけれど、ナディアはやっと手の届く範囲に降りて来た彼を思って嬉しくて堪らなかった。
まずはモニカをそして次は夫人を唆して男爵家から追い出した。
二人が向かった国は、ハーレムがある特殊な国だ。モニカが嫁入りする第四王子とやらは見目が良い分悪名高く、「乙女を食い物にする悪魔」だの「生き血を啜ることで若返っている」だのと恐れられている。第四王子の妃は彼が成人してから実に十八人ほどが謎の死を遂げている。
国中の貴族家が嫌がったために他国の女性を誑かして妃としている。モニカはまんまとその立場に自ら飛び込んでいった。
彼らは他国の女性ならば誰でも良い訳ではなかった。第四王子ならば平民などではなく、高位貴族を嫁に取りたい。だから最初にこの縁談は公爵令嬢エリザベスにもたらされたものだった。だが、それに待ったをかけたのは、モニカである。
常識知らずの、身の程知らず。彼女はエリザベス嬢を死の淵から掬い上げて、代わりに深い沼に落ちる事を選んだ果敢な命知らずだった。
きっと男爵家にはモニカも夫人も戻ってこない。ならば一代しかない男爵家を盛り上げるのは娘と夫人に捨てられた夫だけ。彼は最後に真実の愛を見つけて幸せに暮らすのだ。それがナディアなら尚良い。
伯爵家の次女の方は地味だった。姉に比べて質素で大人しい。だけど決めたことはどうにかやり切る力があった。
一か八かの賭けだったけれど、ナディアの企みは果たされた。やっぱりあの時モニカに話をしたのは間違いではなかった。
「物語では、こういう時、隣国の叔母を頼ったりしますよ?」
公爵夫人と私は共犯だ。でもこれぐらいは許されると思うの。互いに花畑に振り回された身としては。
終わり
読んで頂きありがとうございました。
mios
伯爵令嬢の姉の方は、頭が弱くて有名だった。彼女は自分にとても自信があって、周りの男性を次々と攻略していったが、実は違う。彼女が王子を籠絡して彼の地位を剥奪させるように此方が仕掛けたのである。
第一王子には公爵家のご令嬢が絶対的な婚約者としてあてがわれていて、その婚約をなくすためにも伯爵令嬢には頑張ってもらう必要があった。
案の定、彼は一代限りの男爵に収まった。妻となった女がその地位に満足しないことはわかっている。此方が何かを仕掛けなくとも勝手に身を滅ぼしてくれるだろうとは思っていた。
一応彼の娘となっているモニカは彼の血を引いていない。あの女の数いた愛人の一人に似過ぎている。娘はずっと社交界に出たがっていたけれど、あの顔を見せられると、周りは皆すぐに真相に気づくだろう。
ただでさえ、評判が地に落ちた男爵家が再起不能になるのは忍びない。
公爵家と事を構え、選んだ妻と結婚する頃には二人の間の愛は消えかかっていた。働きもしない男爵夫人の代わりに彼に寄り添って夫人のお詫びにと執務を手伝っていれば此方を覚えてもいない彼は素直にお礼を言い、心を開いてくれた。
彼は夫人を選んだ事を後悔していた。そして娘を愛することができないことを吐露した。自分の子ではないと言う気持ちが強過ぎてどうにも愛しいと思えないのだと。
夫人が愛人と逢瀬を重ねていることも彼は知った上で放置していた。結婚してからも夫人は実家の伯爵家からお金を融通してもらっては散財していたが、それも代替わりしてからは自由に出来ない。男爵家には信用がない為、ツケ払いなどは出来ない。ならば買い物を自由に行うことも出来ない。夫人が家に寄りつかないのは必然であった。
ナディアは学園時代からの夫人の友人である。ただし、あちらは伯爵令嬢。友人という名のサンドバッグに近い扱いだった。彼女は性格が悪く、プライドが高い。ナディアは彼女に下に見られていたので、何とかその立場を利用して、夫人の侍女になることが出来たのだ。もう一人の侍女は男爵家に来るのも嫌がっていたけれど、ナディアはやっと手の届く範囲に降りて来た彼を思って嬉しくて堪らなかった。
まずはモニカをそして次は夫人を唆して男爵家から追い出した。
二人が向かった国は、ハーレムがある特殊な国だ。モニカが嫁入りする第四王子とやらは見目が良い分悪名高く、「乙女を食い物にする悪魔」だの「生き血を啜ることで若返っている」だのと恐れられている。第四王子の妃は彼が成人してから実に十八人ほどが謎の死を遂げている。
国中の貴族家が嫌がったために他国の女性を誑かして妃としている。モニカはまんまとその立場に自ら飛び込んでいった。
彼らは他国の女性ならば誰でも良い訳ではなかった。第四王子ならば平民などではなく、高位貴族を嫁に取りたい。だから最初にこの縁談は公爵令嬢エリザベスにもたらされたものだった。だが、それに待ったをかけたのは、モニカである。
常識知らずの、身の程知らず。彼女はエリザベス嬢を死の淵から掬い上げて、代わりに深い沼に落ちる事を選んだ果敢な命知らずだった。
きっと男爵家にはモニカも夫人も戻ってこない。ならば一代しかない男爵家を盛り上げるのは娘と夫人に捨てられた夫だけ。彼は最後に真実の愛を見つけて幸せに暮らすのだ。それがナディアなら尚良い。
伯爵家の次女の方は地味だった。姉に比べて質素で大人しい。だけど決めたことはどうにかやり切る力があった。
一か八かの賭けだったけれど、ナディアの企みは果たされた。やっぱりあの時モニカに話をしたのは間違いではなかった。
「物語では、こういう時、隣国の叔母を頼ったりしますよ?」
公爵夫人と私は共犯だ。でもこれぐらいは許されると思うの。互いに花畑に振り回された身としては。
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