お花畑聖女は願う

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召喚後

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聖女マユは、聖女の力は強くもなく、弱くもない。平均的な聖女だった。ロジーナやオーロラの半分にも満たない力しかないのに、彼女が聖女として機能しているのは、彼女の側にエレナを配置したからだ。

エレナはオーロラやロジーナに次ぐ聖女の資質がある女性で、オーロラは自分が聖女を引退したら、彼女に継いで貰いたいと思っていた。

王太子妃となって、おいそれと彼女に会えなくなっても、毎月必ず手紙で近況を知らせてくれる。とても頼りになる女性だ。

彼女の手紙には聖女マユの近況などが記されており、それによってイーサン達の手の内を知ることが出来、助かった。

「聖女マユは、第二王子イーサンが王位に就くのを望んでいるようです。」

「聖女の戯言は耳に入っている。その事を願わせる為に彼女をチヤホヤして、祭り上げた彼らの苦労は報われるわけだ。」

クリスは楽しそうに鼻で笑った後、オーロラを安心させるように頷いた。

「やはりあいつも兄と同じだな。折角の願い事を己の欲の為に消費しようとするのだから。」

エレナからの手紙は聖女マユを取り囲んでいる男達の目的を色濃く示唆する。イーサンは確かに王位を求めているが、他の男達も同じ願いを支持しているのかと問われれば、多分違う、とオーロラは察する。

問題は願い事が一度だけ、と言うことから、聖女マユを巡って、苛烈な争奪戦が起きることになる。

ならば放っておいても、自滅する事になるが、それでも争奪戦に勝利した者の愚かな願いを女神様に聞かせるわけにもいかない。

それに一番の問題点として、聖女マユの性質が浮かび上がる。

「聖女マユは、とても流されやすく、考えることが苦手のようです。」

甘言に弱く、難しいことを考えられないのは彼らと同じ。

「うまく誘導すれば、害のない願いを口にさせることが出来るのでは?」

エレナはそう手紙に書いていた。彼らよりも一番近くにいる彼女が言うのだから、荒唐無稽な話でもないのだろう。

「人を疑うことすらされていない方のようですので、多分できると思います。」

聖女マユは、召喚される前の世界で、特殊な状況下にいたようだった。彼女にとって愛されることは何より大切なことで、その他のことには無頓着を貫いていた。

彼女をチヤホヤしている男達の中に彼女のことを心から愛している者はいるだろうか。彼らの面々を思い出して、首を振るのはオーロラだけではない。ならば彼女が残して来た者達はどうだろう。聖女マユには束縛系の恋人がいたようだから、その彼のところに帰すことが出来れば全てはうまくいく。

エレナは聖女マユを嫌ってはいなかったものの、彼女が厄介な存在であるとは思っていた。彼女を監視するつもりで世話役を引き受けたものの、彼女を取り巻く男達の浅ましさに辟易していた。何より聖女オーロラが国母になり、ロジーナがいない今、聖女となるのは順番からすれば自分だったのだ。

聖女の仕事に誇りを持つ彼女だからこそ、私利私欲に塗れた彼らを早く排除したかった。

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