異世界で嫁に捨てられそう

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金髪碧眼イケメンに迫られる嫁

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かなこは、精霊王に会ってから顔色が良くなって、美しさに磨きがかかったようだ。久しぶりに父に会えたのだから、当然か。うちの家族と違って、かなこの家はみんな仲が良かったから。

あと、物理的には、精霊王の愛娘お墨付きと言う称号を巡って、様々な商会が、かなこに貢物攻撃を仕掛けてきているせいもあるだろう。保湿成分のたくさん入った化粧水やらは、異世界でも流通しているらしい。

これ以上、かなこは綺麗にならないでほしいのだが、俺にそんなことを言う資格などないことは、自分が一番良くわかっている。

しかも、かなこを狙って近づく奴は何も、称号だけを狙ってやってくる奴らばかりではない。金髪碧眼の目の保養になるレベルのイケメンくん達が、手を変え品を変え、アプローチしてくるようになった。

俺と言うものがありながら…言ってて虚しくなるのは何故だろう。本当に、物語に出てくる王子様ってこんな感じかな?と思えるぐらいのイケメンなのだ。勝てるわけない!かなこは特に面食いではなかったはずだが、ほんのり顔を赤らめている様子から察するに、心を揺さぶられているようだ。しかも、こっそり覗いたイケメンのステータスが、騎士レベル92とかで、レベル11のただの村人よりもはるかに強いことがわかる。

あとはやっぱり顔面の圧が強い。彫刻か、美術作品か、イケメンが過ぎる。男の俺であってもドキドキするレベル。不意に話しかけられ、かなこをつれて散歩と言う名の逢引に了承してしまったのも、美形に縁がなかったためである。あの美形のお願いを断れると思うのか、ただの村人が。

散歩に行ったかなこは戻って来たとき真っ赤な顔をして、イケメンが嬉しそうに笑っていて、対して俺は蒼白な顔をしていた。多分、あのイケメンくんは俺のことを従者としか思っていないのだろうが、俺は、夫だ。かなことしては、前夫みたいな感じだろうが、まだ離婚してないもんね。しましょう、と言われただけだ。

イケメン君はその後、分裂した。三人に増えたのだ。一人でも破壊力抜群なのに、同じようなイケメンがもう二人現れた。名前とか名乗ってくれた気がするけど、忘れた。覚えにくいよ。長いし。
イケメン君達の綺麗な顔からみたら、純和風の嫁の顔は、見たこともない神秘的に見えるのだろう。男には何の夢も持ってないみたいで安心だ。この際お前でも良いとか言われなくてよかった。あのイケメン君に見つめられたら、男でもふらふら行きそうだからな。

俺は心の中で奴らを1号、2号、3号と呼ぶことにした。どうせ俺には用がないからいいよね。

かなこは、1号だけだった時は、笑顔を少しはみせていたものの、あとの二人が増えてからは愛想笑いが多くなった。よく見てるね、って?いや、俺自身こちらに来てから、今まで見ていたかなこの笑顔が作り物であったことに気づいたんだ。こちらに来てからの心底楽しそうな生き生きとした顔を見てたら、いい加減わかるよ。彼女がずっと無理をしていたことに。で、今その状況みたい。

かなこの眼中に入るように移動する。俺が呼んでることにして、奴等から離す。
「疲れた顔してる。休むか?」
少し驚いたみたいだが、くすりと笑って、「ありがとう。」と言った。

今の笑い方は、本物だったよな。
自信はないけれど、自分には本物の笑顔を見せてくれたので、ずっともやもやしていたものが、スッキリしたような気になった。

イケメン君達にとっては、多分俺はかなこの従者だから、かなこが疲れているから休ませる、と言うと、挨拶がしたかっただの、駄々をこねられた。お前らのせいだよ、と言う言葉を飲み込んだものの、俺の怒りはダダ漏れだったようで、1号君はすぐわかってくれて、二人を言い含めてくれた。あいつは、認めてやってもいいかな、最初からいたやつだしね。って、絆されてどうする。

俺の居場所がこのままだとなくなってしまうかもしれないのに、呑気だと自分でも呆れた。

かなこは、本当に疲れていたようで、寝ていた。寝室ではなく、リビングのソファーで、寝ていた。久しぶりに寝顔を見る。可愛いな。嫁の寝顔を至近距離で眺める特権を自ら手放すなんて愚かなことを、少し前の自分はしていたのだ。寝ているかなこに触れようとしてやめる。起きてしまったら、もうこの状況はなくなってしまう。もう少しだけ、見ておきたい。いつか離れる時に、思い出せるように。幸せを堪能する。

これでかなこが起きたら、気持ち悪がられるんだろうな。と、自虐ネタを思いついて、少し笑う。

できたら、まだ起きないで。もう少しだけ、見ていたい。





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