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天使に助けられました

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「サラ様、どう言うことですか?私公爵家に借金をしたことになっているのですが。あと、子爵家から脅されているのです。どうしてこんな事……」

ドレスでドタドタと音をさせて近づくなり、早口で責め立てる様はご令嬢とは思えない。尚も続けて話そうとするのを、手で遮る。

「あ、ちょっとお待ち下さい。魔道具を起動させますね。はい、どうぞ。」

カトリーヌ嬢はお得意のカトリーヌ劇場に持ち込むつもりだっただろうが、私は冷静に魔道具を起動させた。カトリーヌは魔道具を見たことがないのだろうか。キョトンとした顔で固まっている。

「あら。お話にならないの?父から言われておりますの。裁判になったら、これも証拠になるから、貴女とお話しする時はこれを起動させなさい、と。ごめんなさいね。では、どうぞ?」

「裁判って何?」

「あら、ご存じないの?裁判とは、」
裁判について説明しようとした私に、忌々しい表情で、遮るのも、ご令嬢らしくはない。

「いえ、裁判は判りますわ。どうして、私達の間で裁判なんて言葉が出るのかがわからないのだけど。」

「ああ、そちらですの。まず、借金の件は取立ての権利をユリアーナ様が買われたのです。おかげで漸くお金が返って来ましたわ。あと、カート子爵家との婚約解消に伴って、不貞の証拠がありましたので、子爵家と貴女のお家に慰謝料を請求致しましたの。私は正直どうでも良かったのですが、お父様が怒ってしまわれて、ああなると、誰が止めても駄目なものですから。けれど、愛してらっしゃるのだから、良いですわよね?裁判になったところで、お互い思いあっていらっしゃるのですから。」

「あの、サラ様。何か勘違いをされていますわ。私はダニエル様とは何の関係もありません。」

ダニエルと言い、カトリーヌと言い、私を馬鹿にしすぎですわ。

「先程、証拠があると言いましたでしょう?話を聞いていないのね。貴女が何を言っても私にはもう響かないの。ごめんなさいね。」

裁判になるのでしたら、長々と話しているのは、あまり良くありませんので離れようとします。

「酷いわ。私達お友達でしょう?」

「お友達なら、借りたお金は返すのではなくって?」

金蔓と思ってた癖によく言うわ。愛していないとはいえ婚約者も奪ったと言うのに。

「いつから、そんなお金お金と。貴女はそればかり。」

「そりゃ、四年も返さなければね。言いたくもなりますわ。」

元はと言えば、お金がない、と言い続けたのはそちらでしょう。


途端に涙をツツと、流されます。あら、まだ劇場を続けるおつもりね。ある意味感心するわ。鈍感力って言うのかしら。貴女の周りには、味方はいないと言うのに。

案の定、誰も近づいては来ません。チラチラと見られてはいるのですが、巻き込まれたくないようです。

代わりに現れたのは氷姫の異名を持つエリー・ライム様とリーゼ・クロワ様です。あの日のお茶会からよく誘われているのです。

「サラ様、こんな所にいらっしゃったのね。探しておりましたのよ?」

所作の綺麗なお二人に皆様釘付けで、カトリーヌ嬢に注目されている方は誰もいらっしゃいません。

やっぱり人は誰でも、綺麗なものを見たいのです。

お二人に連れられて、私はカトリーヌ嬢から離れます。少ししてから、大きくため息をついた私にお二人は笑いかけてくださいました。


「来るのが遅くなってごめんなさい。」
「大変でしたわね。」

貴女達は天使ですか?
ええ、確かにお二人の背中に翼が見えましたとも!
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