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いざ隣国へ
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カトリーヌは生まれて初めて王宮に足を踏み入れた。思ったよりも広くはないと落胆したが、居心地は良かった。カトリーヌは、自分が王宮にふさわしい人間だと思っていた。
国王陛下には会えないが、第一王子と第二王子が現れた。
「カトリーヌ嬢、貴女の協力に感謝する。」
第一王子が、カトリーヌに近づいて感謝の意を伝えると、何を考えたのか、不敬にも顔を上げてにっこり笑い、話し始める。
「いえ、こちらこそ。感謝いたします。本当の親に会えるのですから。」
本来なら王太子が許さない限り顔をあげてはならないし、話してはならないのだが、カトリーヌはマナーを知らないし、知ったとしても、その無礼が自分には許されるとすら思っていた。
第一王子は苦笑いを浮かべ、第二王子を見遣ると、第二王子のエトワールはその後の会話を引き継いだ。
「カトリーヌ嬢にはこれから、隣国へ立っていただく。そして、身元の確認をわが国の使者立会の元、行い、確認が終われば、貴女の母方の祖父母である侯爵夫妻に会っていただきます。
そしてその後、向こうの準備が出来次第、ご両親に会うことになります。
使者の同行は、侯爵夫妻に会うまでになりますので、質問などがあれば、それまでにするように。
他に何か聞きたいことは、ありますか?」
カトリーヌは何も思いつかないのか、考えるような仕草をしたあと、沈黙した。
「何もなければ、」と話そうとした瞬間、カトリーヌがようやく絞り出した質問を浴びせた。
「身元をどうやって証明するのですか?」
エトワールは静かに、ある物を懐から取り出して、カトリーヌに渡した。
カトリーヌの顔色が見る見るうちに悪くなる。
「これを。先日、貴女が換金しているのを確認しましてね。貴女のですよね。まさか、ご自身のではない物を換金したりはしませんよね?」
エトワールの笑顔に不穏な雰囲気を読み取ったようで、慌てて肯定する。
「ええ、そうですわ。これは私のです。」
それは、ダニエルに貰った伯爵家の家宝だと聞いた古くて地味な指輪だった。
サラにぴったりだと、言った指輪をどうして、王子が持っているのか頭が回らない。
カトリーヌは焦った。これが、もし自分のではないと言えば、自分が今いる地位が偽物であることが、バレてしまう。せっかく、自分の指輪であると、勘違いしているのだから、騙しきろう。
指に嵌めると、サイズはぴったりだった。
もしかすると、本当にこの権利を受け取るべきだったのは、伯爵令嬢ではなかったのか。
ダニエルに感謝する。彼女が受ける恩恵を自分の物にできるなんて。幸いにも、これが伯爵家に代々伝わる物だと、王子は知らないようだ。
私はまんまと、彼女になり変わり、楽な人生を送るのだと決意した。
仲良くしてあげた私を裏切るなんて大それたことをするからだ。
カトリーヌの頭の中には地味で、取り柄のないサラの悔しがる顔が浮かんでいた。
やはりサラと自分では、受ける幸運の規模が違う。カトリーヌは思う存分笑いたいのを我慢するのに必死で、辺りにひっそりと積み重なる不穏な空気に気がつくことはなかった。
国王陛下には会えないが、第一王子と第二王子が現れた。
「カトリーヌ嬢、貴女の協力に感謝する。」
第一王子が、カトリーヌに近づいて感謝の意を伝えると、何を考えたのか、不敬にも顔を上げてにっこり笑い、話し始める。
「いえ、こちらこそ。感謝いたします。本当の親に会えるのですから。」
本来なら王太子が許さない限り顔をあげてはならないし、話してはならないのだが、カトリーヌはマナーを知らないし、知ったとしても、その無礼が自分には許されるとすら思っていた。
第一王子は苦笑いを浮かべ、第二王子を見遣ると、第二王子のエトワールはその後の会話を引き継いだ。
「カトリーヌ嬢にはこれから、隣国へ立っていただく。そして、身元の確認をわが国の使者立会の元、行い、確認が終われば、貴女の母方の祖父母である侯爵夫妻に会っていただきます。
そしてその後、向こうの準備が出来次第、ご両親に会うことになります。
使者の同行は、侯爵夫妻に会うまでになりますので、質問などがあれば、それまでにするように。
他に何か聞きたいことは、ありますか?」
カトリーヌは何も思いつかないのか、考えるような仕草をしたあと、沈黙した。
「何もなければ、」と話そうとした瞬間、カトリーヌがようやく絞り出した質問を浴びせた。
「身元をどうやって証明するのですか?」
エトワールは静かに、ある物を懐から取り出して、カトリーヌに渡した。
カトリーヌの顔色が見る見るうちに悪くなる。
「これを。先日、貴女が換金しているのを確認しましてね。貴女のですよね。まさか、ご自身のではない物を換金したりはしませんよね?」
エトワールの笑顔に不穏な雰囲気を読み取ったようで、慌てて肯定する。
「ええ、そうですわ。これは私のです。」
それは、ダニエルに貰った伯爵家の家宝だと聞いた古くて地味な指輪だった。
サラにぴったりだと、言った指輪をどうして、王子が持っているのか頭が回らない。
カトリーヌは焦った。これが、もし自分のではないと言えば、自分が今いる地位が偽物であることが、バレてしまう。せっかく、自分の指輪であると、勘違いしているのだから、騙しきろう。
指に嵌めると、サイズはぴったりだった。
もしかすると、本当にこの権利を受け取るべきだったのは、伯爵令嬢ではなかったのか。
ダニエルに感謝する。彼女が受ける恩恵を自分の物にできるなんて。幸いにも、これが伯爵家に代々伝わる物だと、王子は知らないようだ。
私はまんまと、彼女になり変わり、楽な人生を送るのだと決意した。
仲良くしてあげた私を裏切るなんて大それたことをするからだ。
カトリーヌの頭の中には地味で、取り柄のないサラの悔しがる顔が浮かんでいた。
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