それは私の仕事ではありません

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マルク夫人

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潜入は二箇所から分かれて行うことになった。灯祭りで護衛と逸れたフリで釣るパターンと、マルク夫人を通して、エミリアを捕まえる体で潜入するパターン。マルク夫人とは、過去にアネットに絡んできたお見合い斡旋に命をかけている世話焼きの方で、今回のことに直接関わっているかは不明だが、一応協力して貰うことになる。彼女は豪快な女性で、騎士の妻を絵に描いたようなすっきりハッキリした女性なだけに今回のことは知らないでいて欲しかった。

彼女は詳細は知らないとしながらも、有益な情報を与えてくれた。

灯祭りに出没する夫人は、予想通りサバン侯爵家の末の娘で女騎士に恨みがある。そして、今回の件は侯爵家が主導ではなく、その夫人の単独の犯行だという。他にも貴族家は関わっているようだが、侯爵家を隠れ蓑として行われているということを、マルク夫人ははっきり宣言した。

「理由としては、サバン侯爵家はそういう家風だから、としか言えないわ。

ルートス伯爵家にも騎士団があるけれど彼方はお金を出しているだけでほぼ中身は人任せになっているのに、サバン侯爵家の騎士団は、団員一人一人が素晴らしいの。これぞ騎士、って言うのかしら。南部には珍しいストイックさよね。サバン侯爵家の騎士団に入るには近衛騎士団に入るより厳しい試験を受けないといけないらしいわ。

今起きていることに末娘が関わっているとわかってからは、騎士を身近に付けて監視しているらしいし、多分男爵令嬢を助けてくれる騎士なんて、この辺りだとサバン侯爵家ぐらいじゃないかしら。

うちのは、ほら、大層な騎士ではないから。でも、エリートなら一度は憧れるのがサバン侯爵家の私設騎士みたいよ。」

「どうしてそこまで詳しいのに、教えてくださらなかったんですか?」

「だって身内の恥だもの。ただでさえ北と南の辺境伯領は比較されやすいのに、問題があるのはいつも南。私達だってどうにか人を呼んで、活性化させようと思ってるのよ。女騎士さんがいてくれたら、場は華やかになるし、安心して暮らせるようになるし、皆幸せじゃない?ま、私が持ち込んだお見合い話は騎士さんには不評だったけれどね。」

そうなのだ。マルク夫人はあくまでも、南の辺境伯領の為に最善と思って、話を持ってくる。方向が違っても、拒否されても善意でしかない。

だけど、元サバン侯爵家の末娘は、それに悪意が混じる。女騎士に恨みを持つのは仕方なくとも、だからって犯罪をしてもいいなんてことはない。

マルク夫人は、助けてくれたであろう騎士に心当たりがあると言う。

「女の子に目がない以外はいい人よ。要は彼に会わせてあげれば良いのね?」

マルク夫人の方のご令嬢はリオン・フルーゲと、女騎士サリナ・リンゼットの組み合わせ。

対して灯祭りの方はグリド・ビースと、エリー・ローマンの組み合わせ。灯祭りの方が危険な為、アネットは主に此方に回る。

マルク夫人は不安そうな二人の新人騎士を安心させるようになのか、完全に普段通りに、見合い話をここでも持ち込み、周りを苦笑させていた。
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