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「ルーナは、元は多分どこかの令嬢だったんだろうな、と。でも自分のことは自分でできるし、細かい気配りはできるし、で他の騎士とは違う小柄さも相まって、皆自分の妹のように世話を焼いていた。いや、焼かれていたって感じかな。騎士としては、弱い方だったけれど、別の方向で貢献しようとしてくれている姿を見ると、彼女を悪く言う者は誰もいなかった。」
グレイは当初を思い出す。明らかに戸惑っている彼女を見て、無性に守らなくては、という使命に燃えた時のことを。
「彼女は、自分が来てから何度か夫人に手を貸している。女騎士の一割ぐらいは、彼女と同じような被害者だと思っているが、彼女達は戦死、している。」
その上で、記憶を絞り出し考えられるのはグレイの良いところだ。
「多分、戦に見せかけた取引もあったんだろうね。いくら寒さが厳しく命をも落とす地だと言っても、短期間でこの数は死にすぎ。騎士が戦死するような戦いを終わらせて生き残った者達は崇められる。自作自演にしては、手がかかりすぎていて、中々見破られないこの手口に味を占めた、と言ったところね。」
ニコルの話は、アネットには、確かにそれはあるかも、と可能性を吟味できる話だった。つい最近、アネットを拘束したあの異国人ならそのぐらい簡単なことだ。
アネットは母親がそんなことになっていたジェシカに同情した。将軍ほどの強さを持っていても、精神面では弱いことはある。「団長がいる時でよかったですね。二人で受け止められたら、一人で受け入れるより、心強いですもの。」
アネットの言葉に首を傾げたニコルは、ああ、と納得したあと、アネットを真正面から見つめた。
「あの二人も承知済みよ。アネットがここに研修に来たい、って言った時からジェシカは自身の母親を捕える機会を窺っていたの。だからこそ母親からの支配を逃れる為に団長のプロポーズを受けたのだから。」
アネットは混乱した。
「ジェシカ嬢はね、母親の支配から抜けたがっていたの。まあ、アネットの幸せの為に私もそれに乗っかっただけ。知ってる?一応、フランク・リスキーからも調書を取っているの。彼は不本意ながら過去に一度だけ、辺境伯夫人に頼みを聞いてもらったことがあるのよ。それで脅されていた。詳しい内容は本人に聞いて。もうすぐ戻ってくるわ。」
フランクの名前を聞いて動揺した。何となく聞きたくない、と拒否していた、彼の結婚生活の辺りの話なんじゃないかと、感じた。
初恋が終わった。辛く悲しい日々。フランクは再会してからも、その前も、結婚していた時の話を全くしなかった。亡くなったことに未だに悲しんでいて、それだけ彼女を愛していたのだと勝手に落ち込んでいたけれど。
ニコルの視線の先に、フランクがいた。いつものヘラヘラした顔ではない、真面目な顔で、笑おうとして、うまく笑えないでいる彼は、アネットが好きだった頃の「先生」の顔だった。
グレイは当初を思い出す。明らかに戸惑っている彼女を見て、無性に守らなくては、という使命に燃えた時のことを。
「彼女は、自分が来てから何度か夫人に手を貸している。女騎士の一割ぐらいは、彼女と同じような被害者だと思っているが、彼女達は戦死、している。」
その上で、記憶を絞り出し考えられるのはグレイの良いところだ。
「多分、戦に見せかけた取引もあったんだろうね。いくら寒さが厳しく命をも落とす地だと言っても、短期間でこの数は死にすぎ。騎士が戦死するような戦いを終わらせて生き残った者達は崇められる。自作自演にしては、手がかかりすぎていて、中々見破られないこの手口に味を占めた、と言ったところね。」
ニコルの話は、アネットには、確かにそれはあるかも、と可能性を吟味できる話だった。つい最近、アネットを拘束したあの異国人ならそのぐらい簡単なことだ。
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アネットの言葉に首を傾げたニコルは、ああ、と納得したあと、アネットを真正面から見つめた。
「あの二人も承知済みよ。アネットがここに研修に来たい、って言った時からジェシカは自身の母親を捕える機会を窺っていたの。だからこそ母親からの支配を逃れる為に団長のプロポーズを受けたのだから。」
アネットは混乱した。
「ジェシカ嬢はね、母親の支配から抜けたがっていたの。まあ、アネットの幸せの為に私もそれに乗っかっただけ。知ってる?一応、フランク・リスキーからも調書を取っているの。彼は不本意ながら過去に一度だけ、辺境伯夫人に頼みを聞いてもらったことがあるのよ。それで脅されていた。詳しい内容は本人に聞いて。もうすぐ戻ってくるわ。」
フランクの名前を聞いて動揺した。何となく聞きたくない、と拒否していた、彼の結婚生活の辺りの話なんじゃないかと、感じた。
初恋が終わった。辛く悲しい日々。フランクは再会してからも、その前も、結婚していた時の話を全くしなかった。亡くなったことに未だに悲しんでいて、それだけ彼女を愛していたのだと勝手に落ち込んでいたけれど。
ニコルの視線の先に、フランクがいた。いつものヘラヘラした顔ではない、真面目な顔で、笑おうとして、うまく笑えないでいる彼は、アネットが好きだった頃の「先生」の顔だった。
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