それは私の仕事ではありません

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雑魚キャラの登場

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「何か最近調子が出ないんですよね。」
トーナメントには賛成していないエミリアは呑気にそんなことを言う。以前ならもう少し周りに気を遣えてたと思うが、そんな気すらなくなって、多分こちらが素なのだろう、とシノーは悟った。

「理由はわかってるんです。」
他に誰もいないからにはこれは独り言ではなく、おそらく自分に話していることだが、あえて何も言わずにおいた。

「多分、あのか弱いアピールが鼻につくからです。」
彼女の指差した先には、彼女が事あるごとに楯突く上司、アネットの姿があった。

「彼女は今傷心中だからな。」
「キャラじゃないんですよねー。」

二人の声は重なったが、ちゃんと聞こえた。

「キャラって、落ち込むのもダメなのかよ。」
「だって、あれこそか弱さアピールじゃないですか?普段凛々しい先輩が実はこんなに脆いところがあります。慰めて!って言うギャップ萌えを利用した相談女じゃないですか。あんな態度で、本命が戻ってきた時に、モブが勘違いして取り合いになるパターンですよ。面倒なことこの上ないです。」
シノーは、エミリアの言っていることを理解するまで時間を要した。

「お前、モブってもしかして、グレイのことだったりする?」

「そうですよ?だって、アネット先輩の好きな人じゃないでしょう?彼が当て馬ポジか、間男ポジかはわからないですけど本命ではないに違いないんです。だって彼が本命なら、もう少し先輩が綺麗になるはずですから。あんなボロ雑巾みたいになってる筈ないんです。」

「間男とか、ボロ雑巾とか、当て馬とか。お前、化けの皮剥がれすぎだろ。」

驚くと同時に笑い出したシノーを何故か不思議なものでも見るような目つきで見たエミリアは、困惑していた。

「論点ズレてますよ。」

それはこちらの台詞だ、とシノーは笑いながら心の中で叫んだが、エミリアはこれだからおじさんは、と呆れている。

「いや、お前の暴言はまあ、心の内に収めとくけど、お前の言いたいことはわかる。アネットが心配だよな。キャラじゃない、もわかる。グレイは良い奴だから、その認識さえ改めて貰えると嬉しいが、そういうことじゃないんだろうし。なら、どうすればいいか、何か考えがあるのか?」
「何か考えと言われても、ですが。いや、やっぱり先輩にはキャラを取り戻してもらわないと。しっくり来ないんです。ってことで、私が行きます。トーナメント、ちょっといじってください。」

エミリアは何か策があるのか、トーナメント戦に自分も出ると言う。



「良い奴ポジは、本命にはなり得ないんですよ。やっぱり当て馬ポジが一番合っていると思うんです。グレイ先輩には。

で、私は悪役キャラです。ボスにはなれない、真っ先にやられる雑魚キャラですけど。」

多分訓練としては失笑ものだが、余興だと思えば良いだろう。ニコルがここにいれば、自分もやりたい、とか言い出すだろうな、と彼女に報告できるように成り行きを眺めた。
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