ロボット先生

ヒムネ

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アリガトウ

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 花火大会の時間が近づくにつれ少しずつ人も多くなってきた。秋と九美はクレープ屋に着くと人の蛇列に、
「あ~、仕方ない少し並ぶか~」
「うん」

 二人は大人しく後ろに立ち並ぶ。一方の唐揚げ屋は、
「へへっ、うめ~うめ~」
「オイシイデースッ!」
 高弘とパールはの方は人並びも問題なかったので食べながら秋達と合流しに戻った。

 待つこと5分、10分ようやく出番がきた二人にお店のお姉さんが、
「いらっしゃい」
「九美は何にするの?」
「え~っと、あたしイチゴ」
「じゃあ、あたしはバナナクレープで」
「あいよ」
 手渡されたクレープ、二人はクレープ屋から少し離れた場所で食べることに。

「う~ん、おいし」
 生地の歯応えのあとのクリームがたまらない、バナナにはチョコシロップがかけられていて甘すぎるはずの味にチョコの味がミックスして絶妙な味、美味しそうと九美も食べると、
「あっ、おいしい!」
 クリームの甘さとイチゴの酸っぱさが彼女の口の中でハマらせ、また欲しくなるほどにすぐ食してしまった。
「······秋先輩、ありがとう」
「えっ?」
 賑やかな中、下を向き不思議そうな顔で九美は言う、
「あたし、ついこの間まで花火大会で誰かとクレープ食べるなんて思ったことなかったから」

「ふ~ん、そうなんだ~」
 少しクールに言葉を返してみるが、やっぱり嬉しくて笑顔を隠せない秋。

「食べ終わったし、戻ろう九美」
「うん、先輩」
 二人は気分良く元の場所へと戻っていった。

「お~いっ!」
「あ、高弘」
 何やら慌ただしい彼、
「ワリィ」
「あれ、パールは?」

「後ろに付いていて来てたんだけど、気付いたらいなくて」

「え~っ! どうしよう~」
 こんな人がたくさん居る中ではぐれるなんて、秋が慌てていると九美は、

「先輩落ち着いて、スマホで連絡は?」

「あっ、そうか、え~っと」
 掛けてみるが電話に出ない、
「やっぱり周りの音で聞こえないか~」
 責任を感じていた高弘が、
「オレっ、探してくるよ」
 そう言い向かおうとしたら、

「待って、高弘······先輩!」

「何で?」
「高弘先輩一人で行かせて、はぐれたら大変ですよ。皆で一緒に探そう」
「それもそうか」
 彼女の言葉で落ち着き三人でパールを探すことにした。

 まず寄った唐揚げ屋まで向かいながら探す。
「人けっこう多いわね」
 花火の時間までもうすぐなのだろう。
「はぐれないように気を付けよう、先輩達」
「うん」
 この調子で人が増え続ければ道を歩くのでさえ困難になると思い始めていた。

 その時、

「先輩っ、あそこにいる人!」
 唐揚げ屋から右三番目の屋台にパールの姿。    
後ろから肩を軽く叩き、
「パールさん、探したよ」
 彼女は振り向き、

「高弘!」

「『高弘!』じゃねえよ」
「心配したのよ」
 何事もなく彼女が無事でほっとする三人、
「皆ナ、ゴメンナサイ」
「九美も心配してたのよ」
「えっ」
 秋は九美を前に押す。

「ソウ、ナンデスカ?」
 パールはおどおどして、
「······あたしは」
 もじもじするパールと九美は言い出せずにいると、まずいと思い秋は、

「そんなウジウジしなくてもいいじゃない二人とも、九美は一緒に探してくれたのは事実だし、でしょっ」

「秋先輩」

「······アリガトウ、九美サン」

「えっ!」

 秋の話と探してくれた事実、迷惑をかけてしまったのは自分、パールは九美に感謝した。その言葉に目頭が熱くなる九美だが、

「ところでさ~」
 高弘が話しに入って、
「どうしてはぐれたんだ?」
「あっそういえば、何で? パール」
 すると笑顔で皆に見せたのは、

「コレデス!」お面だった。

「皆ノ分デス」そう言って皆に渡す、
「げっ、これ、着けんの······」

 高弘はヒーローのお面、女子三人はアニメキャラのお面を着ける。

「ありがとう、ははっ······」
 秋もさすがに恥ずかしかったが、
「あ、ありがとう」
 九美は嬉しかった。

 そのとき空からドンと音がして、

「うわ、花火だっ、もう始まったね」

「もう少し先に行ってみようぜ!」
「イコーイコー!」
「うん!」

 四人はバラバラにならないように袖を掴み注意しながら歩いていく。
 その間にも空には、菊の花火、ハート型や土星の形をした花火が、赤や緑など様々に彩っている。
「もうこれ以上は無理ね」
 移動と言っても唐揚げ屋から六軒目位、そこで観ることにする。

 夜の花火を観ながら食べて、飲んで、楽しくお喋りする。花火の音がすれば皆で上を観上げ一瞬で消えてしまうその光をまだかまだかと夢中になりながら今を楽しむ四人だった······。
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