ロボット先生

ヒムネ

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大切な人はいますか?

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「はっ、はい」

「九美さんにとって大切な人はいますか?」

「ええっ!」
 彼女は恥ずかしくなり顔が赤くなる。
「え、えっと~······迷惑をかけたお母さんとお父さん、あとは秋先輩とかパール先輩、義理で高弘先輩で、不良の······いやいや最近出来た唯安と千里――あとロボット先生とか」

「そうですか」
「こんな感じでいいですか?」
「はい、ありがとう九美さん」
「はっ、はいー」
 九美は羞恥心で頭がいっぱいになり職員室からそそくさと小走りで出ると、

「く、九美さん」

「えっ?」振り向くと扉の横にひょっこりと、
「ゆ、唯安どうしたの?」
「九美さんを待ってたの」
「そ、そうなんだ、じゃあ一緒に帰ろうか」
「うん!」二人は学校を後にする――。

 帰り道、唯安は何を話せばいいか分からず無言で歩いてたら九美が、
「どうして職員室に?」
「ご、ごめんなさい」
「別に悪いって言ってないし」
「その、九美さんいつも熱心だから――気になって」
 その言葉を聞いて『えっ』と感じた。
「······もしかして~、話聞こえてた?」

「うん、私も大切な人の中に入ってて嬉しい」

 そのとたん九美は再び顔が真っ赤になってその場を耐えられず、

「もっ、もう知らないっ!」と言って走る。

「まっ、待ってよ~」と追いかける唯安はしばらく走り続けたのだった······。

 九美の答えを聞いたロボット先生、仕事をしながらもそのこと考える。

「大切な人······」

 その言葉が機械の身体に時折出てきて、

「ふーっ」初めてため息のようなことをして教師は大変なのだと感じた気がした――。

 そのあとも、ロボット先生は他の生徒に、

「大変な人はいますか?」の質問を時々するようになる。自らの答えを探すように······。

 1月28日、三年生の大変なセンター試験が終わりロボット先生は秋にも質問をしてみる。

「――大切な人ですか!」
「はい、お母さんにお父さん、パールと高弘と九美、それとロボット先生に大井先生かなぁ、あたしにとっては」
 彼女は少しも顔を赤くするもしっかりと答えた。
「でも、どうしてですか?」
「それは――気になっただけです」
 ロボット先生の笑顔に、
「ふ~ん、そうなんだ、ねぇ先生」
「はい?」

「勝手に居なくなったりしないですよね」
 秋はここ最近の勉強ずくしでスパートをかけていたためロボット先生と余り話せずちょっと不安になっていたのだ。
「どうしてですか?」
「ほら、先生ロボットだから、何か特別なのかなって、フと思って」
「そうですか」
「じゃあ、あたし帰ります。さようなら」
「はい、試験お疲れさまでした。さようなら」
 彼女が扉を閉じて帰ると大井先生が、

「どうですか?」
「大井先生、あれが女の子の勘ですか?」
「はい、そうですよ」にこやかに答える。
 そして、

「もう良いんじゃないですか、生徒に訊くのは」

「······そうですね、訊き過ぎた感じがします」
 そう言って席を立ち、向かおうとするという、
「私も行きます」
 大井先生も一緒に校長室に行くことに。
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