七代目 双子の桃太郎

ヒムネ

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    牢屋の中で

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 ――鬼神の紅蓮を、引きずり降ろす。突然そんなことを言われた桃子は、
「引きずり降ろすとは、一体どういう意味何ですか?」
 夕陽は彼女を見て、

「親父を、殺す」

「ええっ、そんな、実のお父様をなんて」
 その言葉に手が口を覆う。
「いきなりこんな事を言って理解出来ないのは無理もない話だ」

 すると、

「······やっぱりあなた達は鬼です。そんな恐ろしいことを思うなんて」
 
「分かったような事言うなよ」
 静かで深く言う、

「自分の気に入らない事があったから殺るなんて、想う訳ないだろ」
 桃子は彼女の目が綺麗でとてもこんな嘘を付くような人、鬼ではないと思ってしまっていた。あの強く豪快な赤鬼とは感じられないくらいに。

「それで、何しにここへ?」

「ああ、それはあんた達を······ここから出してやる」

「え、どうして?」
「早まるな、その代わり親父を引きずり降ろすのに協力してもらう」
「脅迫ですね」
「いや······」

「――取引か」
「はい、私一人では決めるわけにはいかないと思い『考えさせてください』とい言うと『分かった』と行ってしまいました」

「赤鬼の彼女、本気かしら?」
「親を殺すか、ふんっ、イカれている」
「でも出れるチャンスじゃないか?」
 各々が話している中、
あにぃは」
「そんなこと、断るに決まっている!」
 一時的とはいえ鬼に加担してしまうことになる。なのでそう答えると思っていた妹は、

「では、皆このまま死ぬのですか?」

「桃子······」
 周りを見渡すと、大切な者達。桃太は言葉に詰まってしまう。

 その会話が聞こえていたのか隣の牢屋から、
「隣の方、つかぬ事をお訊きしますが」
 弱々しい女性の声に桃太は、
「ん、何ですか?」

「現在の桃太郎の方々なのでしょうか?」
「はい、拙者達は七代目桃太郎一味です」
「······お名前は、はっきりと聞こえなかったので」

「何なのかしら」
「敵か?」
 犬の飛竜は鼻で嗅ぎ、
「いや鬼の匂いじゃない、人間だ」
「私達以外にも人間が捕まってるなんて」

「拙者は桃太、お主は?」
 名乗ると女性が、

「ううっ~、なんという巡り合わせ、ううっ」

 焦る彼は仲間の方を向き、
「な、泣いてしまわれた」
「ちょっと兄、何を言ったのです」
「やや、拙者は」
「代わってくださいっ」
 慌てふためく兄に代わり、妹が話しかける。
「兄がすいません、大丈夫ですか?」

「なぜ拙者が」
「いじけないの桃太ちゃん」
 慰める涼。

「すいませんぬ、あなたは?」
 言葉が少しゆっくりな優しい声の人と思った。
「私は桃子です」

「ももこ、ううっ」
「え、あの、ど、どうかしましたか?」
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